医療一般|page:1

アルツハイマー病における興奮の診断・評価・治療に関するエキスパートの推奨事項

 アルツハイマー型認知症のアジテーションは、患者、介護者、家族、医療制度に大きな影響を及ぼす。アジテーション治療に関する新たなエビデンスが明らかになるにつれて、多専門分野の専門家によるラウンドテーブルが開催され、発表された文献(2024年10月1日現在のPubMed検索結果)をレビューし、米国のプライマリケア提供者のためのコンセンサス推奨事項が作成された。米国・セントルイス大学のGeorge T. Grossberg氏らは、プライマリケア提供者向けのアルツハイマー型認知症のアジテーションの診断とマネジメントに関するエビデンスに基づく臨床実践のコンセンサス推奨事項を報告した。Postgraduate Medicine誌オンライン版2025年6月17日号の報告。

死亡リスクの予測、BMI vs.体脂肪率

 体組成の評価指標としてBMIが広く用いられているが、筋肉質な人を過体重や肥満に分類したり、BMIは正常でも体脂肪率が高い「正常体重肥満」のリスクを見逃したりする可能性が指摘されている。そこで、米国・フロリダ大学のArch G. Mainous氏らの研究グループは、20~49歳の成人を対象に、死亡リスクの予測においてBMIと体脂肪率のいずれが優れているか検討した。その結果、体脂肪率のほうが15年間の全死亡および心疾患死亡のリスク予測において優れている可能性が示された。本研究結果は、Annals of Family Medicine誌オンライン版2025年6月24日号に掲載された。

VR活用リハビリは脳卒中患者の腕の機能回復に有用

 脳卒中患者のリハビリテーション(以下、リハビリ)におけるVR(仮想現実、バーチャルリアリティ)の活用は、代替療法に比べて腕の動きの改善にわずかに役立つ可能性があることが、新たな研究により明らかになった。英フリンダース大学看護・健康科学部のKate Laver氏らによるこの研究の詳細は、「Cochrane Database of Systematic reviews」に6月20日掲載された。  研究グループは、「VRは、患者が受けるリハビリの量を増やすことでその効果を高める手段として有望である可能性が示された」と話す。またLaver氏は、「治療に費やす時間を増やすと、脳卒中後の転帰が改善することは知られている。VRを活用すれば、臨床医が監督をしなくても治療の量が増えるため、比較的安価で魅力的な方法となり得る」と述べている。

糞便移植、C. difficile感染症の一次治療になり得る効果を示す

 死に至る可能性もある細菌感染症、クロストリジオイデス・ディフィシル(Clostridioides difficile、以下C. difficile)感染症(CDI)の治療に関する臨床試験で、糞便移植(FMT)に抗菌薬と同程度の効果のあることが示された。同試験について報告したオスロ大学(ノルウェー)のFrederik Emil Juul氏らによると、経口抗菌薬を1日4回、10日間服用した患者と比べて、FMTを1回受けた患者で治癒率がわずかに高いことが確認されたという。詳細は、「Annals of Internal Medicine」に6月17日掲載された。  FMTは、健康な人から採取した便サンプルを処理して、便に含まれている有益な腸内細菌を患者の消化管に移植することで健康的な腸内細菌叢を回復させる治療法である。

産婦人科医が授業に、中学生の性知識が向上か

 インターネットは、性に関する知識を求める若者にとって主要な情報源となっているが、オンライン上には誤情報や有害なコンテンツが存在することも否定できない。このような背景から、学校で行われる性教育の重要性が高まっている。今回、婦人科医による性教育が、日本の中学生の性に関する知識と意識の大幅な向上につながる、とする研究結果が報告された。ほとんどの学生が産婦人科医による講義を肯定的に評価していたという。研究は、日本医科大学付属病院女性診療科・産科の豊島将文氏らによるもので、詳細は「BMC Public Health」に5月28日掲載された。

腹腔鏡下手術vs.ロボット支援下手術、直腸がんの術後転帰に差

 直腸がんの手術では、狭い骨盤内での作業が必要となる。そのため、多関節アームやモーションスケーリング機能を備えたロボット支援下手術(RALS)を採用するメリットは大きい。今回、直腸がんにおけるRALSは、従来の腹腔鏡下手術(CLS)と比較して術後転帰が改善されるとする研究結果が報告された。出血量、術後C反応性蛋白(CRP)値、入院期間の点でCLSよりも有意な転帰の改善を示したという。研究は神戸大学大学院医学研究科外科学講座食道胃腸外科学分野の安藤正恭氏、松田武氏らによるもので、詳細は「Langenbeck's archives of surgery」に5月21日掲載された。

双極症とうつ病における白質変化の共通点と相違点

 双極症とうつ病の鑑別診断は、症状の重複のため依然として困難である。  米国・ピッツバーグ大学のAnna Manelis氏らは、双極症とうつ病における線維特異的な白質の差異を、fixel-based analysis(FBA)を用いて解析し、FBA指標が将来のスペクトラム気分症状を予測するかを調査した。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2025年6月4日号の報告。  18〜45歳の双極症、うつ病、健康対照者163例を対象に、拡散強調MRIを実施した。主要な白質線維束における線維密度(FD)、線維断面積(FC)、線維密度断面積(FDC)を、FBAを用いて評価した。縦断的フォローアップ調査により、FBA指標が6ヵ月間のスペクトラムうつ病および軽躁病の症状軌跡を予測できるかを評価した。

日本人の妊娠関連VTEの臨床的特徴と転帰が明らかに

 妊娠中の女性は静脈血栓塞栓症(VTE)リスクが高く、これは妊産婦死亡の重要な原因の 1 つである。妊婦ではVTEの発症リスク因子として有名なVirchowの3徴(血流うっ滞、血管内皮障害、血液凝固能の亢進)を来たしやすく、妊婦でのVTE発生率は同年齢の非妊娠女性の6〜7倍に相当するとも報告されている。そこで今回、京都大学の馬場 大輔氏らが日本人の妊婦のVTEの実態を調査し、妊娠関連VTEの重要な臨床的特徴と結果を明らかにした。  馬場氏らは、メディカル・データ・ビジョンのデータベースを用いて、2008年4月~2023年9月までにVTEで入院した可能性のある妊婦1万5,470例を特定。さらに、抗凝固療法が実施されていない患者や画像診断検査が施行されていない患者などを除外し、最終的に妊婦でVTEと確定診断され抗凝固療法を含めた介入が行われた410例の臨床転帰(6ヵ月時のVTE再発、6ヵ月時の出血イベント、院内全死因死亡)などを評価した。

尿路感染症への抗菌薬、フロモキセフvs.セフメタゾール/徳島大ほか

 薬剤耐性菌による尿路感染症は世界的に増加しており、とくに基質特異性拡張型β-ラクタマーゼ(ESBL)産生菌は多くの抗菌薬に耐性を示す。ESBL産生菌による感染症には、カルバペネム系抗菌薬が推奨されるが、耐性菌の増加などの懸念から、カルバペネム系抗菌薬以外の治療選択肢が求められている。フロモキセフとセフメタゾールは、ESBL産生菌への有効性が期待される抗菌薬であるが、両剤の比較データは乏しい。そこで、新村 貴博氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部)らの研究グループは、厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)のデータと日本全国の診療データベースを用いて、両剤の比較を行った。その結果、フロモキセフはセフメタゾールと同等の有効性を示し、入院期間の短縮や一部の有害事象のリスク低下をもたらす可能性が示された。本研究結果は、BMC Medicine誌2025年7月1日号に掲載された。

薬に頼らず膝の痛みを軽減するには装具がベスト

 ズキズキとした膝の痛みに悩まされている高齢者は少なくないが、薬を使わずに変形性膝関節症(KOA)を治療する確実な方法は数多くあることが、新たなエビデンスレビューで示された。膝装具、水治療法、運動のいずれもがKOAの痛みを効果的に緩和することが示されたという。内江第一人民病院(中国)のYuan Luo氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS One」に6月18日掲載された。  Luo氏らは、「これらの治療選択肢は、一般的な鎮痛薬で生じ得る胃腸や心血管などのリスクを伴うことなく痛みを軽減し、関節の可動性を向上させる。患者と臨床医は、これらのエビデンスに基づいた選択肢を優先すべきだ」と述べている。

トーキングセラピーが脳卒中後の抑うつや不安を改善

 脳卒中後の抑うつや不安に苦しむ患者に対し、会話を中心にした心理療法であるトーキングセラピーが有効であることが、新たな研究で示された。英国で国民保健サービス(NHS)が無料で提供している不安と抑うつのためのトーキングセラピー(Talking Therapies for anxiety and depression;TTad)を受けた脳卒中経験者の71.3%が抑うつや不安の症状の大幅な改善を経験し、約半数は脳卒中後の気分障害から完全に回復したことが示された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)精神保健リサーチフェローのJae Won Suh氏らによるこの研究の詳細は、「Nature Mental Health」に6月5日掲載された。

大腸がんスクリーニング、CT検査が便中DNA検査よりも有用か

 大腸がんのスクリーニングにおいては、マルチターゲット便中DNA検査(mt-sDNA検査)よりも大腸CT検査(CT Colonography;CTC)の方が、臨床的有効性と費用対効果の点で優れていることが、新たな研究で示された。米ウィスコンシン大学医学部・公衆衛生学部放射線医学・医学物理学分野のPerry Pickhardt氏らによるこの研究結果は、「Radiology」に6月10日掲載された。  大腸がんのスクリーニングでは、現在も大腸内視鏡検査が主流であるとPickhardt氏は説明する。大腸内視鏡検査は侵襲性が高いものの、検査中に前がん状態のポリープを切除できるため、依然として検診のゴールドスタンダードであるという。しかし、鎮静薬を使い、細くて柔軟なチューブを肛門から結腸に挿入するこの検査に不安を感じ、mt-sDNA検査かCTCを選択する患者は少なくない。mt-sDNA検査は、患者から採取した便サンプルに含まれるDNAを解析して腫瘍細胞に由来する変異遺伝子や異常なメチル化パターンなどを検出する。一方、CTCでは、肛門から炭酸ガスなどを注入して大腸を膨らませた状態でCT撮影を行い、ポリープなどの病変の有無を調べる。

オンデキサの周術期投与に関する提言、4団体が発出

 日本心臓血管麻酔学会、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会、日本体外循環技術医学会の4学会は、直接作用型第Xa因子阻害薬の中和剤であるアンデキサネット アルファ(商品名:オンデキサ)が高度なヘパリン抵抗性を惹起する可能性について、医療現場への一層の周知が必要と判断し、「アンデキサネット アルファの周術期投与に関する提言」を6月30日に発出した。  ヘパリンを用いる心臓血管外科手術の術前または術中にアンデキサネット アルファを投与した後、著明なヘパリン抵抗性を呈し、手術遂行に重大な支障を来した症例が複数報告されている。これを受け、2023年9月に日本心臓血管麻酔学会が注意喚起を出していたが、その後も類似の症例が継続して報告されていた。

自殺リスクに相反する影響を及ぼすコーヒーとエナジードリンク

 コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、世界で最も多く消費されている精神活性物質であり、世界人口の約80%は毎日摂取している。近年の研究では、カフェイン摂取後に生じる可能性のあるメンタルヘルスのアウトカムへの影響に関して、より複雑な関係性が示唆されている。シンガポール国立大学のChen Ee Low氏らは、カフェイン摂取が自殺企図、自殺念慮、自傷行為リスクに及ぼす影響を調査するため、初のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Nutrients誌2025年6月2日号の報告。  PRISMAに準拠し、カフェイン摂取が自殺企図、自殺念慮、自傷行為リスクに及ぼす影響を評価したすべての研究を、PubMed、Embase、Cochrane、PsycINFOよりシステマティックに検索した。主要解析には、ランダム効果メタ解析およびメタ回帰分析を用いた。

再発/難治性多発性骨髄腫へのベネトクラクス+ボルテゾミブ+デキサメタゾン、BELLINI試験最終OS解析

 再発/難治多発性骨髄腫におけるボルテゾミブ+デキサメタゾンへのベネトクラクス上乗せの効果を検討した第III相BELLINI試験では、すでに主要評価項目である独立評価委員会による無増悪生存期間(PFS)は達成したが早期死亡率の増加を示したことが報告されている。今回、米国・Mayo ClinicのShaji K. Kumar氏らが、本試験の全生存期間(OS)の最終解析結果をLancet Haematology誌オンライン版2025年6月27日号で報告した。Kumar氏らは「OSはプラセボがベネトクラクスを上回り、PFSはベネトクラクスがプラセボを上回っていたことから、一般的な再発/難治性の多発性骨髄腫患者ではベネトクラクスの使用を避けるべきであることが示唆された」としている。

ピロリ除菌後の胃がんリスク~日本の大規模コホート

 Helicobacter pylori(H. pylori)感染は胃がんの主要なリスク因子である。わが国では2013年からH. pylori関連胃炎に対する除菌治療が保険適用に追加されたものの、2023年のがん死亡原因で胃がんが第4位であり、胃がん罹患率は依然として高い。今回、自治医科大学の菅野 健太郎氏らは、H. pylori関連胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃潰瘍および十二指腸潰瘍の患者におけるH. pylori除菌後の胃がんリスクの違いを大規模後ろ向きコホートで調査した。その結果、H. pylori関連胃炎と胃潰瘍の患者は十二指腸潰瘍患者よりも胃がんリスクが高く、H. pylori除菌後も胃萎縮が胃がんリスク因子として残ることが示唆された。BMC Gastroenterology誌2025年7月1日号に掲載。

ウェイトベストは減量に伴う骨密度低下の抑制に効果なし

 ウェイトベストは、減量に伴う骨密度の低下を予防する手段として期待が寄せられている。これは、ウェイトベストを着用してウォーキングやジョギングを行うことで、体にかかる負荷を維持しながら骨組織に機械的ストレスを与えることができ、減量に伴う骨量の喪失を最小限に抑えられると考えられているからだ。しかし、新たな臨床試験により、この考え方は科学的に裏付けられないことが明らかになった。ウェイトベストを着用しても、減量に伴う骨密度の低下を有意に抑制する効果は確認されなかったのである。この研究の詳細は、「JAMA Network Open」に6月20日掲載された。

AIが皮膚疾患に対する医師の診断精度を向上させる

 実験的なAIツールが、メラノーマ(悪性黒色腫)やその他の皮膚疾患の検出を迅速化するのに役立つ可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。この「PanDerm」と呼ばれるツールを医師が使用した場合、皮膚がんの診断精度が11%向上したことが示されたという。モナシュ大学(オーストラリア)情報技術学部AIM for Health研究室のZongyuan Ge氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に6月6日掲載された。  皮膚疾患の診断と治療には、領域横断的な高度な視覚的能力と、複数の画像診断法(モダリティ)からの情報を統合する能力を要する。しかし、現在の深層学習モデルは、ダーモスコピー画像からの皮膚がんの診断など特定のタスクでは優れているものの、臨床現場の複雑でマルチモーダルな情報の処理は得意ではない。こうした弱点を克服するために国際的な研究者チームによって開発されたPanDermは、11の医療機関から集められた4種類の画像モダリティにまたがる200万枚以上の皮膚画像でトレーニングされた、皮膚科領域のAIモデルである。

認知症患者の介護者は認知症関連因子の保有率が高い傾向

 認知症患者の介護者(以下、認知症介護者)は、健康的ではない脳の老化に関連するライフスタイル因子を持っている傾向が強く、そのため自身の認知症リスクも高まる可能性のあることが、新たな研究で明らかにされた。米アルツハイマー病協会のPublic Health Center of Excellence on Dementia Risk Reduction(認知症リスク低減のための公衆衛生卓越センター)および米ミネソタ大学を拠点とするPublic Health Center of Excellence on Dementia Caregiving(認知症の介護に関する公衆衛生卓越センター)によるこの研究は、「Risk Factors For Cognitive Decline Among Dementia Caregivers(認知症介護者における認知機能低下のリスク因子)」のタイトルで6月12日に公表された。

「日本版敗血症診療ガイドライン2024」改訂のポイント、適切な抗菌薬選択の重要性

 2024年12月、日本集中治療医学会と日本救急医学会は合同で『日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG 2024)』を公開した。今回の改訂では、前版の2020年版から重要臨床課題(CQ)の数が118個から78個に絞り込まれ、より臨床現場での活用を意識した構成となっている。5月8~10日に開催された第99回日本感染症学会総会・学術講演会/第73回日本化学療法学会総会 合同学会にて、本ガイドライン特別委員会委員長を務めた志馬 伸朗氏(広島大学大学院 救急集中治療医学 教授)が、とくに感染症診療領域で臨床上重要と考えられる変更点および主要なポイントを解説した。