医療一般|page:1

医療従事者におけるベンゾジアゼピン使用が仕事のパフォーマンスに及ぼす影響

 不眠症や不安症の治療によく用いられるベンゾジアゼピン(BZD)は、スペインでの使用が増加しており、濫用や依存のリスクに対する懸念が高まっている。スペイン・Miguel de Cervantes European UniversityのCarlos Roncero氏らは、医療従事者におけるBZDおよびその他の向精神薬の使用状況を調査し、その使用率、関連因子、そしてCOVID-19パンデミック後のメンタルヘルス問題との関連性を評価した。Journal of Clinical Medicine誌オンライン版2025年6月16日号の報告。  Salamanca University Healthcare Complex(CAUSA)の医療従事者1,121人を対象に、2023年3月〜2024年1月に匿名オンライン調査を実施した。完全解答が得られた685人のデータを分析した。不眠症、不安症、うつ病の評価には、不眠症重症度質問票(ISI)および患者健康アンケート(PHQ-4)を用いた。

HR+/HER2-進行再発乳がん、CDK4/6i直後のS-1の有用性は?/日本乳癌学会

 HR+/HER2-の進行・再発乳がんに対して、CDK4/6阻害薬による治療直後の経口フッ化ピリミジン系薬剤(以下「経口5-FU」)は有望な選択肢になり得ることを、九州がんセンターの厚井 裕三子氏が第33回日本乳癌学会学術総会で発表した。  HR+/HER2-の進行・再発乳がんの標準療法は、CDK4/6阻害薬と内分泌療法の併用療法である。乳癌診療ガイドラインにおいて、S-1やカペシタビンなどの経口5-FUは、HR+/HER2-の転移・再発乳がんの1次・2次化学療法として弱く推奨されているが、これらの推奨の根拠となる臨床試験はCDK4/6阻害薬が臨床導入される以前の試験であるため、CDK4/6阻害薬の前治療歴がない患者が対象となっている。そこで研究グループは、HR+/HER2-の進行・再発乳がんに対するCDK4/6阻害薬治療後の経口5-FUの治療効果を調査した。

小児期ビタミンD不足で、将来のCVDリスク増

 ビタミンD不足は心血管イベントと関連するという既報があるが、小児期におけるビタミンD値低下も成人後のアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)リスク増と関連している可能性があることが、新たな研究で示唆された。フィンランド・トゥルク大学のJussi Niemela氏らによる研究はEuropean Journal of Preventive Cardiology誌オンライン版2025年4月29日号に掲載された。  研究者らは、「若年フィンランド人における心血管リスクの前向き研究」(Young Finns study)の参加者を対象に、25-OHビタミンD濃度と従来の小児期のリスク因子(BMI、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪、収縮期血圧、果物・野菜・魚の摂取量、身体活動、社会経済的地位、喫煙歴)を調査し、フィンランド国民全員をカバーする全国登録データベースを用いてASCVDアウトカムを追跡調査した。これらのデータから小児期のビタミンDレベルと成人発症のASCVDイベントとの関係を評価した。

日本人の肥満基準、BMI 25以上は適切?

 現在の日本における肥満の定義はBMI 25kg/m2以上とされているが、これは約30年前の横断研究の結果に基づくものである。そのため、現在における妥当性については議論の余地がある。そこで、京都府立医科大学大学院の笠原 健矢氏らの研究グループは、大規模な長期コホート研究のデータを用いて、現在の日本人における最適な肥満の基準値を検討した。その結果、BMI 22kg/m2を対照とした場合、2型糖尿病や慢性腎臓病(CKD)はBMI 25kg/m2付近でハザード比(HR)が2を超える一方で、冠動脈疾患(CAD)や脳卒中などのHRが2を超えるのは、BMI 30kg/m2超であった。本研究結果は、Metabolism誌オンライン版2025年7月15日号に掲載された。

胃がんはピロリ菌が主原因、米国の若年で罹患率が増加

 胃がん症例の4分の3(76%)はヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori、以下、ピロリ菌)感染が原因であることが、新たな研究で明らかになった。国際がん研究機関(フランス)のJin Young Park氏らによるこの研究結果は、「Nature Medicine」に7月7日掲載された。Park氏らは、「胃がんのほとんどはピロリ菌への慢性感染によって引き起こされていることから、抗菌薬とプロトンポンプ阻害薬(PPI)の組み合わせによる治療により予防できるはずだ」と述べている。  米メイヨー・クリニックによると、世界人口の半数以上が、生涯、どこかの時点でピロリ菌に感染する可能性があるという。ピロリ菌は、嘔吐物、便、唾液などの体液との接触により広がると考えられており、感染すると、胃痛、お腹の張り(膨満感)、頻回なげっぷなどの症状や、胃や小腸の消化性潰瘍などが引き起こされる。米国がん協会(ACS)によると、米国では2025年に胃がんの新規症例が約3万300件発生し、約1万780人が胃がんにより死亡すると予想されている。胃がん症例のほとんどは、高齢者であるという。

糖尿病患者では血清脂質レベルと黄斑体積が相関か

 糖尿病(DM)の深刻な合併症として、糖尿病網膜症(DR)が挙げられるが、今回、糖尿病患者で血清中の脂質レベルと網膜黄斑体積が関連するという研究結果が報告された。DMがあるとDRがなくても網膜黄斑体積が減少し、また、DMがなくても血清脂質が高いと体積は減少することが示された。さらに、DRがあり、かつ血清脂質が高いと網膜黄斑体積が病的に増加する可能性が示唆されたという。研究は慶應義塾大学医学部眼科の虫賀庸朗氏、永井紀博博士、および同眼科にも籍を置く藤田医科大学東京先端医療研究センターの小沢洋子教授らによるもので、詳細は「PLOS One」に6月4日掲載された。

ゴルフ場の近くに住む人はパーキンソン病リスクが高い?

 パーキンソン病(PD)は、環境要因と遺伝的要因の複雑な相互作用によって引き起こされる神経変性疾患である。環境要因の中でも、農薬への曝露はPDのリスク増加に関連するとされる。米国・Barrow Neurological InstituteのBrittany Krzyzanowski氏らの研究によると、ゴルフ場の近くに住むことがPD発症リスクの2倍以上の増加と関連している可能性が示された。JAMA Network Open誌2025年5月8日号に掲載。  本研究では、1991~2015年のロチェスター疫学プロジェクト(REP)のデータを用いて、ミネソタ州南部とウィスコンシン州西部にまたがる1万6,119平方マイルの地域内における139のゴルフ場への距離とPD発症との関連性を症例対象研究で評価した。さらに、水道環境として、水道サービス区域内のゴルフ場の有無、地下水域の脆弱性(荒い土壌、浅い岩盤、カルスト地形)、市営井戸の深さでなどの条件でリスクを比較した。

抗うつ薬中止後の離脱症状発生率とうつ病再発への影響

 抗うつ薬中止後にみられる離脱症状の発生率やその性質は依然としてよくわかっていない。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのMichail Kalfas氏らは、抗うつ薬の服用を中止した患者において、標準化された尺度(Discontinuation-Emergent Signs and Symptoms[DESS]など)を用いた離脱症状の有無およびそれぞれの離脱症状の発生率を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年7月9日号の報告。  2023年11月7日までに公表された研究をEmbase、PsycINFO、Ovid MEDLINE、Cochrane Libraryの各データベースよりシステマティックに検索した。対象研究は、抗うつ薬中止後に、標準化された尺度を用いて離脱症状を報告したランダム化臨床試験(RCT)、それぞれの離脱症状(有害事象など)を報告したRCTとした。抽出したデータは、2人のレビューアーによるクロスチェックを行った。11件のRCTより未発表のデータも追加で対象に含めた。抗うつ薬中止患者、抗うつ薬継続患者、プラセボ中止患者との標準化平均差(SMD)を算出するために、ランダム効果メタ解析を実施した。プラセボと比較したそれぞれの離脱症状の発生率を評価するため、割合およびオッズ比(OR)のメタ解析を行った。異なる抗うつ薬の比較は、サブグループ解析として実施した。データ解析は、2024年9〜12月に行った。主要アウトカムは、標準化された尺度または標準化されていない尺度を用いて測定した抗うつ薬中止に伴う離脱症状の発生率とその性質とした。

血糖値のわずかな上昇が男性の精力に影響

 血糖値のわずかな上昇が、男性の精力に悪影響を与える可能性があるようだ。たとえ糖尿病の基準値を下回る値であっても、血糖値のわずかな上昇は精子の運動能力や勃起機能の低下と関連することが、新たな研究で明らかにされた。ミュンスター大学病院(ドイツ)のMichael Zitzmann氏らによるこの研究結果は、米国内分泌学会議(ENDO 2025、7月12〜14日、米サンフランシスコ)で発表された。Zitzmann氏らは、「この研究結果は、加齢に伴うホルモンレベルの低下よりも、男性の健康状態の小さな変化の方が、男性の生殖能力に影響を及ぼす可能性があることを示している」と話している。

MRDモニタリングは新規発症AML患者の一部で生存率を改善

 新たに急性骨髄性白血病(AML)と診断された患者において、測定可能な残存病変(MRD)の分子モニタリングと、その結果に連動した治療は、NPM1遺伝子変異およびFLT3遺伝子変異を有する患者の生存率改善に寄与するが、AML患者集団全体の全生存率を改善するわけではないという研究結果が、「The Lancet Haematology」5月号に掲載された。  英キングス・カレッジ・ロンドンのNicola Potter氏らは、2件の臨床試験に登録された16〜60歳の新規発症AML患者において、MRDの結果に基づく治療の変更が生存率を改善するかどうかを検討した。患者は、NPM1変異および融合遺伝子を含む、疾患モニタリングに適した分子マーカーについてスクリーニングされた。

乳がんT-DXd直後の抗HER2療法、効果が期待できる患者は?(EN-SEMBLE)/ESMO Open

 再発または転移を有するHER2陽性乳がん患者を対象に、日本の実臨床下においてトラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)の中止直後に実施した治療レジメンの分布、有効性、間質性肺疾患(ILD)の発現率を検討したEN-SEMBLE試験の結果を、名古屋市立大学の能澤 一樹氏がESMO Open誌2025年8月号で報告した。その結果、患者の73%がT-DXd中止直後の治療として別の抗HER2療法をベースとした治療を受けており、有害事象(AE)のためにT-DXdを中止した患者や奏効を得られた患者では抗HER2療法を逐次的に行うことで利益を得られる可能性があることを明らかにした。

うつ病の維持期治療:患者さんの視点から/日本うつ病学会

 2025年、うつ病診療ガイドラインが改訂され、うつ病の維持期治療について新しく取り上げられることになった。寛解の後、どのように治療を継続するか、あるいは治療を終了するのかは非常に重要である。  2025年7月11日、第22回日本うつ病学会総会共催シンポジウムにて「うつ病の維持期治療~患者さんの声とともにリカバリーの課題について考える~」と題したセッションが開催され、うつ病の経験を持つ林 晋吾氏が患者さん本人の視点から講演を行った。  林氏は2010年にまずパニック障害を発症し、その後うつ病を発症した。現在は寛解状態にあり、うつ病などの精神疾患を持つ患者さんの家族向けのコミュニティサイトの運営を行っている。当事者としての経験と家族支援を通して見えた維持期における課題として、残遺症状とEmotional Blunting、そして患者家族を含めた環境整備を挙げた。

子供の自殺念慮に至る2つの経路が明らかに

 自殺念慮は、若者の間で大きな問題となっている。発達過程における軌跡と関連するメンタルヘルス症状については、これまで十分に解明されていなかった。カナダ・McGill UniversityのMarie-Claude Geoffroy氏らは、思春期初期から若年成人期における自殺念慮の軌跡を調査し、最適な予防策を検討するため、先行または併発するメンタルヘルス症状の特定を試みた。JAMA Psychiatry誌オンライン版2025年7月2日号の報告。  参加者、保護者、教師を含む最新の縦断的コホート研究であるカナダ・ケベック州児童発達縦断研究(QLSCD)のデータを用いて検討を行った。QLSCDは、同州で1997〜98年に生まれた2,120人の単胎児を対象とした人口ベースの出生コホート研究で、2023年(25歳)までフォローアップ調査が行われている。データ分析は、2024年9月〜2025年2月に実施した。主要アウトカムは、過去12ヵ月間の重篤な自殺念慮の有無とし、参加者への質問票により評価した(13、15、17、20、23、25歳時)。調査対象は、親および教師によるメンタルヘルス症状の報告(内向性、外交性など)、検証済み質問票を用いた自己報告とし、5つの発達段階(就学前:3〜5歳、児童期:6〜12歳、思春期前期:13歳、思春期中〜後期:15〜17歳、若年成人:20〜25歳)で標準化した。

揚げ物はやはり糖尿病や高血圧リスクに~兄弟比較の前向き試験

 揚げ物は健康に悪影響を与える可能性があるが、腸内細菌叢との関連や、それが心代謝性疾患に及ぼす影響は十分に明らかになっていない。中国・浙江大学のYiting Duan氏らは、2つの大規模前向きコホートを用いた解析により、揚げ物の摂取に関連する腸内細菌叢は糖尿病や高血圧リスクの増大と関連し、その関連は遺伝的・環境的背景を共有する兄弟姉妹間の比較においても同様の関連性が確認されたことを報告した。American Journal of Clinical Nutrition誌2025年7月2日号掲載の報告。  研究グループは、WELL-Chinaコホート(ベースライン:2016~19年、6,637人)と蘭渓コホート(ベースライン:2017~19年、3,466人)を分析し、揚げ物の摂取と腸内細菌叢の組成に関係があるかどうか、揚げ物に関連する腸内細菌叢は肥満や体脂肪の分布および心代謝性疾患の発症率と関連しているかどうかを調査した。

無害と考えられていたウイルスがパーキンソン病に関与か

 かつては人間には無害だと考えられていた一般的なウイルスが、パーキンソン病(PD)に関連している可能性のあることが新たな研究で明らかになった。PD患者の剖検脳の半数から、C型肝炎と同じフラビウイルス科に属する血液媒介性ウイルスであるヒトペギウイルス(HPgV)が見つかったのに対し、PDではない人の脳からは検出されなかったという。米ノースウェスタン・メディシンで神経感染症およびグローバル神経学部門長を務めるIgor Koralnik氏らによるこの研究結果は、「JCI Insight」に7月8日掲載された。  Koralnik氏は、「HPgV感染症は珍しいものではなく、症状も現れないが、脳への感染が頻繁に起こることはこれまで知られていなかった。PD患者の脳でこれほど高頻度にHPgVが認められたのに対し、PDではない人では認められなかったことには驚かされた」と話している。

加熱式タバコの使用が職場における転倒発生と関連か

 運動習慣や長時間座っていること、睡眠の質などの生活習慣は、職場での転倒リスクに関係するとされているが、今回、新たに「加熱式タバコ」の使用が職場における転倒発生と関連しているとする研究結果が報告された。研究は産業医科大学高年齢労働者産業保健センターの津島沙輝氏、渡辺一彦氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に6月6日掲載された。  転倒は世界的に重大な公衆衛生上の懸念事項である。労働力の高齢化の進む日本では、高齢労働者における職場での転倒の増加が深刻な安全上の問題となっている。この喫緊の課題に対し、政府は転倒防止のための環境整備や、労働者への安全研修の実施などの対策を講じてきた。しかし、労働者一人ひとりの生活習慣の改善といった行動リスクに着目した戦略は、これまで十分に実施されてこなかった。また、運動習慣や睡眠などの生活習慣が職場での転倒リスクと関連することは、複数の報告から示されている。一方で、紙巻タバコや加熱式タバコなどの喫煙習慣と転倒リスクとの関連については、全年齢層を対象とした十分な検討がなされていないのが現状である。このような背景を踏まえ、著者らは加熱式タバコの使用と職業上の転倒との関連を明らかにすることを目的として、大規模データを用いた全国規模の横断研究を実施した。

SGLT2阻害薬がCKD患者の入院リスクを総合的に低減

 SGLT2阻害薬が慢性腎臓病(CKD)の進行や心血管イベントを抑える効果はこれまでに報告されているが、あらゆる原因による予定外の入院リスクの低減効果については体系的に評価されていない。今回、大島 恵氏(オーストラリア・シドニー大学/金沢大学)らの研究により、SGLT2阻害薬は糖尿病の有無、腎機能やアルブミン尿の程度にかかわらず、CKD患者の予定外の入院リスクを低減したことが明らかになった。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年7月14日号掲載の報告。

血液病理認定医が直面している難渋するリンパ腫診断/日本リンパ腫学会

 2025年7月3~5日に第65回日本リンパ腫学会学術集会・総会/第28回日本血液病理研究会が愛知県にて開催された。  7月5日、竹内 賢吾(公益財団法人がん研究会 がん研究所)を座長に行われた学術・企画委員会セミナーでは、「How I diagnose lymphoma」と題して、5名の病理認定医より、日常診療で直面している具体的な診断の揺らぎや分類の曖昧さに対する自身の対応や見解について共有および議論がなされた。  診断の揺らぎは、解析データの不足、診断者の力量に起因することもあるが、WHO分類におけるさまざまな病型定義や診断基準の曖昧さによる影響が大きいと考えられる。

統合失調症患者の認知機能改善に対するメトホルミンのメカニズム

 認知機能低下は、統合失調症の長期予後に悪影響を及ぼす病態であるが、効果的な臨床治療戦略は依然として限られている。トリカルボン酸(TCA)回路の破綻と海馬における脳機能異常が認知機能低下の根底にある可能性が示唆されているが、これらの本質的な因果関係は十分に解明されていない。とくに、ビグアナイド系糖尿病薬であるメトホルミンは、統合失調症患者のさまざまな認知機能領域を改善することが示されており、TCA回路を調節する可能性がある。中国・The Second Xiangya Hospital of Central South UniversityのJingda Cai氏らは、以前、研究において、メトホルミン追加投与が統合失調症患者の認知機能を改善することを報告した。本研究では、認知機能改善とTCA回路代謝物および脳機能との関連を調査した。BMC Medicine誌2025年7月1日号の報告。