ジャーナル四天王(NEJM ・ Lancet ・ JAMA ・ BMJ )最新ニュース|page:293

新規第Xa因子阻害薬otamixaban、非ST上昇急性冠症候群の虚血イベントを抑制

新規の直接作用型選択的第Xa因子阻害薬otamixabanの静注投与は、従来法に比べ非ST上昇急性冠症候群(ACS)における虚血イベントを抑制することが、アメリカHarvard大学医学部循環器内科TIMI studyグループのMarc S Sabatine氏らが実施した第II相試験(SEPIA-ACS1 TIMI 42試験)で明らかとなった。これまで、非ST上昇ACS患者の抗凝固療法には未分画ヘパリンが使用されてきたが、その作用は非直接的で非選択的であり、血栓結合トロンビンを抑制できない、血小板減少の誘導、PK活性が予測不能などの問題点があった。Lancet誌2009年9月5日号(オンライン版2009年8月30日号)掲載の報告。

周術期スタチン療法は血管手術患者の術後心血管系イベントを有意に減少

非心臓血管手術を受けるアテローム動脈硬化症患者は、心血管系に起因する心筋梗塞や死亡といった術後の心イベントリスクが高い。一方、術後30日のアウトカムにおけるスタチンの効果を評価するプラセボ対照試験は公表されていなかった。DECREASE IIIは、オランダ・エラスムス医療センターのOlaf Schouten氏らの研究グループによる、周術期スタチン療法が待機的血管手術患者で有害な心イベントの術後出現率を低下させるとの仮説を立証することを目的に行われたプラセボ対照試験。その結果が、NEJM誌2009年9月3日号に掲載された。

コラゲナーゼ注射はデュプイトラン病関節拘縮を有意に改善

デュプイトラン病は、手指機能が制限されQOL低下を招くばかりか、最終的には手の機能を失う可能性がある疾患である。標準治療は外科的手術とハンドセラピーとされるが、重い合併症を伴う可能性が捨てきれない。同疾患の新しい治療薬として開発されたヒストリチクム菌由来のコラゲナーゼ注射薬は、デュプイトラン病による関節拘縮を改善する、診察室で施行可能な非外科的治療選択肢としての可能性が期待されている。本論は、同剤に関するニューヨーク州立大学のLawrence C. Hurst氏らによるphase 3の臨床試験CODE1からの報告で、NEJM誌2009年9月3日号にて掲載された。

代表的医学雑誌で発表のRCT、適切に登録していたのは半数以下

国際医学雑誌編集者委員会(ICMJE)では2005年より、研究結果掲載の条件として、試験開始以前の登録を義務付けているが、主な3分野の各10雑誌に発表された無作為化対照試験について調べたところ、適切な登録をしていたのは半数以下に過ぎなかった。その中で、事前に設定したアウトカムと、実際に発表したアウトカムに食い違いがあった研究は、3割強に上っていたという。フランスParis Diderot大学のSylvain Mathieu氏らが明らかにしたもので、JAMA誌2009年9月2日号で発表した。

ハイリスク非ST上昇型急性冠症候群への血管形成術実施のタイミング

ハイリスク非ST上昇型の急性冠症候群に対し、血管形成術を行う際、患者が来院してからできるだけ早く実施する場合と、翌日まで待って行う場合とを比較した結果、入院中のトロポニン最大値などのアウトカムに差はないことが明らかにされた。リスクの高い非ST上昇型急性冠症候群(NSTE-ACS)に対しては、早期の侵襲的インターベンションの実施が国際的ガイドラインで勧告されているものの、その適切なタイミングについては明確ではないという。フランスPitie-Salpetriere大学のGilles Montalescot氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年9月2日号で発表されている。

プライマリ・ケアでのがん兆候症状と非がん診断

英国King’s College London School of Medicine一般診療/プライマリ・ケア部門のRoger Jones氏らは、プライマリ・ケアでのがん兆候症状と非がん診断に関するコホート研究を行った。兆候症状を呈している患者の大半が臨床的に意味ある診断を下されていると報告している。BMJ誌2009年8月29日号(オンライン版2009年8月13日号)掲載より。

重症咽頭痛、ステロイド投与で症状を有意に改善?:メタ解析

英国オックスフォード大学プライマリ・ヘルスケア部門のGail Hayward氏らは、咽頭痛にステロイドが有効かどうかについて、システマティックレビューとメタ解析を行った。重症例や滲出性扁桃炎では、抗生物質投与に加えて投与することで症状改善が見られたと報告している。BMJ誌2009年8月29日号(オンライン版2009年8月6日号)掲載より。

プライマリ・ケアにおけるCOPDの予後評価に有用な指標を開発

プライマリ・ケアにおける慢性閉塞性肺疾患(COPD)の予後評価では、改訂BODEインデックス(BMI、気道閉塞、呼吸困難、運動能)およびその簡略版であるADOインデックス(年齢、呼吸困難、気道閉塞)が有用であることが、アメリカJohns Hopkins Bloomberg公共健康医学部疫学科のMilo A Puhan氏らが実施した2つのコホートを対象とした検討で判明した。BODEインデックスはCOPDの予後評価にさかんに活用されているが、このインデックスで予測された死亡リスクが実際の死亡率と一致するか否かを検討した試験はないという。Lancet誌2009年8月29日号掲載の報告。

吸入ブデソニドはCOPD患者の肺炎リスクを増大させない

吸入ブデソニド(商品名:パルミコート)は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の肺炎リスクを増大させないことが、カナダBritish Columbia大学St Paul’s病院のDon D Sin氏らが実施したメタ解析で明らかとなった。ブデソニドはCOPDの増悪を抑制しQOLを改善するが、肺炎のリスクを増大させる可能性が指摘されている。また、吸入ステロイド薬は肺炎リスクを約50%も増大させることを示す大規模臨床試験の結果もあるという。Lancet誌2009年8月29日号掲載の報告。

高感度心筋トロポニン検査は心筋梗塞の早期診断を大いに改善できる(2)

心筋梗塞の早期診断は迅速な治療を促し、胸痛症状を示した患者のアウトカムを改善する。その意味で、緊急環境下で施行される心筋壊死マーカー検査は診断価値が高く、胸痛患者ケアに一里塚を築いたが、胸痛出現直後の精度は低い。これに代わって心筋トロポニン検査が急性心筋梗塞の診断の中心的役割を果たすようになっているが、ヨハネス・グーテンベルク大学(ドイツ)のTill Keller氏ら研究グループは、急性心筋梗塞の早期診断とリスク層別化について、高感度トロポニンI測定法の評価を行った。NEJM誌2009年8月27日号より。

高感度心筋トロポニン検査は心筋梗塞の早期診断を大いに改善できる(1)

急性心筋梗塞は死および身体障害の主要な原因の1つだが、一方で米国やヨーロッパでは毎年約1,500万人の患者が、胸痛など急性心筋梗塞様の症状を呈し救急治療部に搬送されている。そのため、急性心筋梗塞の迅速で信頼性の高い診断が求められるが、こうした臨床上のニーズはまだ十分に満たされていない。バーゼル大学病院(スイス)のTobias Reichlin氏らは、新しい診断法として期待される高感度心筋トロポニン測定法(4つの測定法)の精度について、標準測定法との比較で検討を行った。NEJM誌2009年8月27日号より。

急性冠症候群の30日死亡率、女性と男性で格差

急性冠症候群の30日死亡率は、ST上昇型心筋梗塞(STEMI)では女性が男性より高率だが、非ST上昇型心筋梗塞(NSTEMI)や不安定狭心症の場合には男性の方が高率であることが報告された。急性冠症候群(ACS)後の予後に関する性別格差についてのこれまでの試験では、概ね女性のほうが悪いとする結果が出ていたという。米国New York大学のJeffrey S. Berger氏らが、ACSの13万人超のデータベースをもとに調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2009年8月26日号で発表した。

前立腺がんへのホルモン療法、うっ血性心不全や心筋梗塞歴患者で総死亡率が約2倍に

 リスクの高い前立腺がんに対し、ホルモン療法と放射線療法を併用すると、中程度から重度の共存症がある場合を除き、生存率が増加すると考えられているが、前立腺がんへのネオアジュバントホルモン療法は、冠動脈疾患によるうっ血性心不全や心筋梗塞歴がある場合、同療法を行わない場合に比べ、総死亡率が約2倍に増大することが報告された。共存症が全くないか、冠動脈疾患リスクが1つだけの場合には、同療法による総死亡率の増加は見られなかったという。米国ハーバード大学のAkash Nanda氏が、5,000人超の患者について調べ明らかにしたもので、JAMA誌2009年8月26日号で発表した。

タミフル、リレンザ、季節性小児インフルエンザへの効果

英国オックスフォードにあるジョン・ラドクリフ病院のMatthew Shun-Shin氏らのグループは、季節性インフルエンザに罹患した小児の治療と感染予防のため、ノイラミニダーゼ阻害因子薬のオセルタミビル(商品名:タミフル)とザナミビル(同:リレンザ)を外来投与した場合の治療効果を評価するメタ解析を行った。BMJ誌2009年8月22日号(オンライン版2009年8月10日号)より。

抗うつ薬、自殺リスクの低下効果は年齢依存的

抗うつ薬と青少年の自殺の危険性(自殺念慮/企図リスク)は注意を要する問題であるが、その一方で、疫学研究では、抗うつ薬の投与により自殺率が下がる傾向が確認されていている。この相違を確かめるため、米国食品医薬品局(FDA)のMarc Stone氏ら研究グループは、成人を対象とする抗うつ薬臨床試験における自殺行動のリスク評価を試みた。BMJ誌2009年8月22日号(オンライン版2009年8月11日号)より。

プライマリ・ケアにおけるうつ病治療に、オンライン認知行動療法は有効か?

プライマリ・ケアにおけるうつ病治療では、セラピストがインターネット経由のオンラインでリアルタイムに実施する認知行動療法(cognitive-behavioural therapy; CBT)が有効であることが、イギリス国立ヘルス・リサーチ研究所(NIHR)プライマリ・ケア研究部のDavid Kessler氏らによる無作為化試験で明らかとなった。CBTは有効性に関する強力なエビデンスがあるにもかかわらずさほど普及していない。コンピュータ化されたプログラムによってCBTへの近接性(アクセスのしやすさ、accessibility)の改善が進められてきたが、これらの介入が個々の患者の必要性に対応するものか否かは明確でないという。Lancet誌2009年8月22日号掲載の報告。

プライマリ・ケア医はうつ病を正しく診断しているか?

一般医(GP)によるうつ病の診断では、有病率20%の場合、10%が正確に同定され65%が正しく除外診断されるが、10%が見逃され、15%が誤診されていることが、イギリスLeicester総合病院のAlex J Mitchell氏らが実施したメタ解析で明らかとなった。うつ病は世界規模で保健医療システムの主要な負担となっており、GPのケアの多くがうつ病に当てられているという。Lancet誌2009年8月22日号(オンライン版2009年7月28日号)掲載の報告。

新しい骨粗鬆症治療薬として期待されるdenosumab:FREEDOM

 骨粗鬆症の治療に有用ではないかと期待されているdenosumabは、破骨細胞の形成、作用に不可欠なサイトカインであるRANKL(receptor activator of nuclear factor-κB ligand)に作用し、骨吸収を抑制し骨密度を増加する完全ヒトモノクローナル抗体である。骨粗鬆症、がんの骨転移、関節リウマチによる関節破壊などさまざまな骨代謝異常の治療・予防を目的に開発が行われている。本論は、FREEDOMと呼ばれる国際間無作為プラセボ試験からの報告。NEJM誌2009年8月20日号(オンライン版2009年8月11日号発表)にて掲載された。

米国で急性気道感染症への抗生物質投与率、過去10年間も継続的に減少

米国で、過去10年間の急性気道感染症への抗生物質投与率が低下してきていることがわかった。米国Vanderbilt大学のCarlos G. Grijalva氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年8月19日号で発表した。同投与率は、1990年代に減少傾向にあったが、その後も同傾向が続いていることが確認された。抗生物質耐性菌の感染症による死亡率が増加する中では朗報と言える。

四価HPVワクチン、市販後調査で失神と静脈血栓塞栓症が他種ワクチンより高率

米国で四価ヒトパピローマウイルス組換えワクチン(qHPV)の市販後調査で、ワクチン投与後の有害事象発生率について2年半の調査の結果、失神と静脈血栓塞栓症の発生率が、他のワクチン投与後と比べ高率であることが明らかになった。米国疾病予防対策センター(CDC)のBarbara A. Slade氏らの調べで明らかになったもので、JAMA誌2009年8月19日号で発表した。米国食品医薬品局(FDA)は2006年6月にqHPVを承認、その後CDCの予防接種に関する委員会Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)では、女児の11~12歳に対する投与と、13~26歳の追加投与を勧告している。