前立腺生検、有害事象が再生検への消極性を招く

提供元:ケアネット

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公開日:2012/02/03

 



前立腺生検の忍容性は全般に良好だが、一部では疼痛や感染などの有害事象による重大な症状をもたらし、再生検に対する消極性や、プライマリ・ケアにおける医療資源の使用を促進することが、英国Sheffield大学のDerek J Rosario氏らが行ったProBE試験で明らかとなった。前立腺がんの診断では前立腺生検が重要だが、被験者の受容性(acceptability)や有害事象の影響、その結果としての医療資源の使用状況をプロスペクティブに検討した試験はほとんどないという。BMJ誌2012年1月21日号(オンライン版2012年1月9日号)掲載の報告。

無作為化試験に組み込まれた前向きコホート研究




ProBE(Prostate Biopsy Effects)試験は、進行中の多施設共同無作為化対照比較試験であるProtecT(Prostate Testing for Cancer and Treatment)試験の登録患者を対象に行われたプロスペクティブなコホート研究。経直腸的超音波ガイド下生検(TRUS-Bx)から35日以内に発現した有害事象の影響の評価を目的とした。

ProtecT試験では、50~69歳の地域住民男性22万7,000人が前立腺特異抗原(PSA)検査のカウンセリングを受けるよう招聘された。そのうち11万1,148人がPSA検査を受け、PSA値 3~20ng/mLの1万297人がTRUS-Bxを推奨された。

このうち、2006年2月~2008年5月までに8施設で抗菌薬併用下にTRUS-Bxを受けた1,753人(平均年齢:62.1歳、平均PSA値:5.4ng/mL)がProBE試験の適格例とされ、試験参加に同意した1,147人(65%、平均年齢:62.1歳、平均PSA値:4.2ng/mL)が登録された。

生検時、7日目、35日目に、質問票を用いて疼痛、感染、出血の頻度と関連症状の影響を評価した。生検直後と7日目に再生検に対する患者の受容性を調査し、35日までの医療資源の使用状況を評価した。
有害事象関連症状が大きな問題になることは少ない




生検後35日までに疼痛を訴えたのは43.6%、発熱の訴えは17.5%、血尿が65.8%、血便が36.8%、血性精液は92.6%であった。これらの症状が中等度~重度の問題となったと答えた患者は少なく、疼痛が7.3%、発熱は5.5%、血尿は6.2%、血便は2.5%、血性精液は26.6%であった。

生検直後に、中等度~重度の問題が生じた場合は再生検を考慮すると答えた患者は10.9%で、7日後には19.6%に増加した。再生検に対する消極的な姿勢は、初回生検時の好ましくない経験、特に生検時疼痛(p<0.001)、感染関連症状(p<0.001)、出血(p<0.001)と有意な関連がみられ、明らかな施設間差が認められた(p<0.001)。

10.4%が医療施設(通常は担当GP)を受診しており、最も頻度が高かったのは感染関連症状であった。有害事象の重症度は再生検に対する消極的な姿勢と有意な関連を示した(p<0.001)。

著者は、「前立腺生検は全般に良好な忍容性を示したが、一部では有害事象による重大な症状をもたらし、再生検への受容性やプライマリ・ケアにおける医療資源の使用に影響を及ぼした」と結論し、「有害事象プロフィールの施設間差は、局所麻酔薬や抗菌薬をより効果的に使用すれば患者のアウトカムが改善され、医療資源の使用が抑制される可能性を示唆する」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)