日本発エビデンス|page:93

性別で異なる、睡眠障害とうつ病発症の関連:東京医大

 不眠症状、日中の眠気、短い睡眠時間、あるいは睡眠覚醒スケジュール後退などの睡眠関連障害は、うつ病のリスクファクターとなることが知られている。一般的に、うつ病は男性より女性に多いが、睡眠関連障害については必ずしも同様の性差が示されるわけではない。うつ病の発症過程における睡眠関連障害の影響には性差があると考えられるが、この問題に注目した研究はこれまでほとんどなかった。東京医科大学の守田 優子氏らは、睡眠関連障害を有する日本人若年成人のうつ病発症に及ぼす性差について検討を行った。その結果、睡眠関連障害がうつ病発症に及ぼす影響には性差が認められ、女性では睡眠覚醒スケジュール後退の影響が大きいことを報告した。結果を踏まえて著者らは「睡眠関連障害に起因するうつ症状の軽減・予防には性別に基づくアプローチが必要である」と指摘している。Chronobiology International誌2015年8月号の掲載報告。

テリパラチド連日投与の市販後調査中間解析結果

 近畿大学医学部 奈良病院 整形外科・リウマチ科の宗圓 聰氏らは、骨折リスクが高い日本人骨粗鬆症患者における、テリパラチド連日投与の有効性および安全性を検討する観察研究Japan fracture observational study(JFOS)について、試験デザイン、患者背景および中間解析結果を報告した。その中で、日常診察下におけるテリパラチドの有効性プロファイルは臨床試験ならびに欧州・米国で行われた観察研究の結果と類似していることを提示した。Current Medical Research & Opinion誌オンライン版2015年7月20日号の掲載報告。

脳卒中リスク、日本でも居住地の経済状況が影響

 地区の社会経済状況の水準を指標化したものを、地理的剥奪指標(areal deprivation index)という。これまで欧米の多くの研究で、この地理的剥奪が循環器疾患リスクに影響する因子であることが示されている。しかし、アジアにおける検討はこれまでなかった。今回、国立がん研究センターによる多目的コホート研究(JPHC研究)で、地理的剥奪指標と脳卒中死亡および発症リスクとの関連が前向き研究で検討された。その結果、居住地の剥奪指標が脳卒中の発症に影響することが明らかになった。著者らは「地区の社会経済状況は脳卒中リスクを減少する公衆衛生介入の潜在的なターゲットになりうる」としている。Journal of epidemiology誌オンライン版2015年3月5日号掲載の報告。

抗認知症薬の脳萎縮予防効果を確認:藤田保健衛生大

 これまで抗認知症薬が軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー病患者の脳萎縮を予防するという決定的なエビデンスはなかったが、藤田保健衛生大学の岸 太郎氏らによる無作為化プラセボ対照試験のメタ解析の結果、抗認知症薬はプラセボに比べ優れた脳萎縮予防効果を発揮することが示唆された。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年7月19日号の掲載報告。

心肺蘇生への市民介入で後遺症のない生存が増大/JAMA

 日本において2005~2012年に、居合わせた市民(バイスタンダー)による胸骨圧迫およびAEDを用いた除細動の実施率は上昇し、神経学的後遺症のない生存の増大と関連していることが、帝京大学救急医学講座の中原慎二氏らによる全国データの調査分析の結果、明らかにされた。日本の院外心停止(OHCA)後の神経学的後遺症のない生存については、増大が報告されていたが、入院前処置との関連(バイスタンダー介入と生存における増大など)についてはこれまで十分な検討はされていなかった。JAMA誌2015年7月21日号掲載の報告。

リパスジル、既存薬との併用療法の有効性確認

 新規Rhoキナーゼ阻害薬のリパスジル塩酸塩水和物(K-115)(商品名:グラナテック)は、単独療法において眼圧下降効果と良好な安全性プロファイルが認められている。熊本大学 眼科学分野教授の谷原 秀信氏らは、他の緑内障治療薬との併用療法を検討する2件の多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検群間比較試験を行い、チモロールまたはラタノプロストへの併用においても眼圧下降効果が認められることを示した。ただし、ラタノプロストへの併用の効果は朝点眼直前(トラフ値)ではみられなかった。JAMA Ophthalmology誌2015年7月1日号の掲載報告。

ドネペジルの効果が持続する期間は?:国内長期大規模研究

 これまで、アルツハイマー型認知症(AD)に関する研究は、長期的な大規模研究が非常に少なく、既存試験は通常、対象者数わずか数百例程度で実施されている。そのため、認知症機能評価別病期分類(FAST)により評価した、日常生活動作(ADL)の変化に関する詳細な調査はない。順天堂大学の新井 平伊氏らは、現在進行中のADに対するドネペジル塩酸塩の長期大規模観察研究(J-GOLD試験)の中間結果を発表した。著者らは「本研究は、日本におけるAD患者を対象とした最大規模の前向き研究であり、日常診療の実態を示す重要な研究である」としている。Psychogeriatrics誌オンライン版2015年6月26日号の報告。

日本人治療抵抗性うつ病患者へのCBT併用試験とは:FLATT Project

 うつ病は、QOLへの影響が最も大きい消耗性疾患の1つであるが、うつ病患者のうち、適切な抗うつ薬治療により寛解を達成できるのは半分以下である。うつ病治療における、その他の有望な治療オプションに認知行動療法(CBT)がある。しかし、CBTの実施には、経験豊富なセラピストや多くの施行時間を要するため、普及は容易ではない。国立精神・神経医療センターの渡辺 範雄氏らは、薬物療法のみで反応不十分なうつ病患者に対し、抗うつ薬切り替えと同時にスマートフォンを用いたCBTプログラムを併用した際の有効性を検討するための研究(FLATT Project)を開始した。Trials誌2015年7月7日号の報告。

統合失調症患者の脳ゲノムを解析:新潟大学

 細胞ゲノム変異と染色体異常は脳疾患の神経病理と関係している。新潟大学の坂井 美和子氏らは、統合失調症患者の脳ゲノムDNAを用いて遺伝子量変化を分析し、細胞ゲノム不安定性と統合失調症との関連について検討した。その結果、疾患に関連する遺伝子コピー数多型(CNV)の候補領域を同定したことを報告した。Molecular Cytogenetics誌オンライン版2015年7月1日号の掲載報告。

Ht値と脳卒中・冠動脈疾患リスクは関連する

 ヘマトクリット(Ht)値と循環器疾患(CVD)リスクの関連については、一貫した結果が得られていない。九州大学(現 九州医療センター)の後藤 聖司氏らは、一般的な日本人集団(久山町研究)において、Ht値と脳卒中および冠動脈疾患(CHD)発症との関連性を調査した。その結果、Ht値の増加および減少はどちらもCVDのリスク増加と関連していたが、Ht値の影響はCVDのサブタイプにより異なることが示唆された。Atherosclerosis誌オンライン版2015年7月10日号に掲載。

レーザー虹彩切開術後のプラトー虹彩、日本人では約20%

 長崎県・溝口眼科の溝口 尚則氏は、日本人の原発閉塞隅角症(PAC)および原発閉塞隅角緑内障(PACG)患者におけるプラトー虹彩の有病率、ならびにプラトー虹彩を有する患者の生体パラメーターを明らかにすることを目的として、超音波生体顕微鏡(UBM)を用いて分析する横断的観察研究を行った。その結果、レーザー虹彩切開術(LPI)後のPACおよびPACG患者におけるプラトー虹彩有病率は約20%であること、一方でプラトー虹彩の有無で前眼部に形態学的な違いは認められなかったことなどを報告した。Clinical Ophthalmology誌オンライン版2015年6月29日号の掲載報告。

高血圧への肥満の影響、30年で著しく増加

 わが国ではこの数十年にわたって、過体重者(BMI:25.0~29.9)と肥満者(同:30.0以上)の割合が増加している。福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター 永井 雅人氏らは、1980~2010年における4つの全国調査を用い、過体重および肥満の高血圧症への影響の経年動向を調べた結果、その影響は有意に増加したことが示された。過体重者および肥満者が増加しないよう、早急に対処する必要性を示唆している。Hypertension Research誌オンライン版2015年7月16日号に掲載。

アトピーに伴う網膜剥離、近年は減少傾向に

 アトピー性皮膚炎(AD)の眼合併症には眼瞼炎、角結膜炎、円錐角膜、虹彩炎、白内障、網膜剥離などがあるが、なかでも網膜剥離は若年者に及ぼす影響が大きい。三重大学の佐宗 幹夫氏らは過去20年におけるAD合併網膜剥離について調査した。その結果、最近10年間でAD合併網膜剥離の患者数は顕著に減少していることを明らかにした。著者は「ADに伴う網膜剥離を予防するためには皮膚炎の管理が重要であることが示唆される」とまとめている。Clinical Ophthalmology誌オンライン版2015年6月23日号の掲載報告。

再生不良性貧血、遺伝子解析による予後予測は可能か/NEJM

 再生不良性貧血における体細胞変異と臨床転帰の関連やクローン性造血の発現状況の詳細が、京都大学大学院の吉里哲一氏らによる次世代シーケンサーを用いた検討で示された。後天性再生不良性貧血は、造血細胞や造血前駆細胞が免疫系によって破壊されることで発症し、汎血球減少を来す。造血幹細胞移植により治癒の可能性があり、免疫抑制療法が有効であるが、生存期間の改善に伴い患者の約15%が遅発性の骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)を発症するという。NEJM誌2015年7月2日号掲載の報告。

レビー小体型認知症、認知機能と脳萎縮の関連:大阪市立大学

 レビー小体型認知症(DLB)患者における側頭葉内側萎縮(MTA)と認知機能障害との関係はいまだ明らかにされていない。大阪市立大学の田川 亮氏らは、これらの関係について、MRIを用いて検討した。その結果、MTAは記憶や言語に関する認知機能障害と関連している可能性を報告した。Geriatr Psychiatry Neurology誌オンライン版2015年6月11日号の掲載報告。  対象は、DLBと診断された37例で、1.5 Tesla MRIスキャナーにより検査した。すべてのMRIデータは、MRIスキャンで得られる画像上でMTAの程度を定量化できるvoxel-based specific regional analysis system for Alzheimer disease(VSRAD)の新型ソフトウエアを用いて分析した。関心体積(VOI)の標的は嗅内皮質、海馬、扁桃体の全領域とした。MTAの程度は標的VOI上の平均positive Zスコア(数値が高いほどMTAが重度)により評価した。認知機能障害の有無について、Mini-Mental State Examination(MMSE)および改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R:MMSEと比べ記憶と言語の評価に有効である)を用いて評価した。

胃がん切除予定例のピロリ除菌はいつすべき?

 マーストリヒト・アジア太平洋コンセンサスガイドラインでは、胃がんの既往のある患者へのHelicobacter pyloriの除菌を強く推奨している。がん研有明病院の本多 通孝氏らは、胃切除術を受ける患者への適切な除菌のタイミングを検討するため、オープンラベル単一施設無作為化比較試験を実施した。その結果、術前群と術後群で除菌成功率が同等であり、著者らは、「胃切除を予定している胃がん患者は、予定されている再建術式に関係なく、術前の除菌は必要ない」と結論している。Journal of the American College of Surgeons誌オンライン版2015年4月8日号に掲載。