日本発エビデンス|page:46

進行乳がんにおける内分泌療法+BVへの切り替え、患者報告アウトカムの結果(JBCRG-M04)/ESMO2020

 進行・再発乳がんに対する標準的化学療法は、病勢進行まで同レジメンを継続することだが、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)や倦怠感などの用量依存的な影響が問題になる場合がある。今回、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性進行・再発乳がん患者に対して、1次化学療法のパクリタキセル(wPTX)+ベバシズマブ(BV)療法から、内分泌療法(ET)+BVの維持療法に切り替えた場合の患者報告アウトカム(PRO)について、化学療法継続と比較したところ、身体的健康状態(PWB)と倦怠感を有意に改善し、重度のCIPNを防いだことが示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、福島県立医科大学の佐治 重衡氏が報告した。

双極性うつ病に対するルラシドンの有用性~他の非定型抗精神病薬との比較

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、双極性うつ病に対するルラシドン(LUR)の有効性および安全性を評価するため、システマティックレビュー、変量効果モデル、日本での第III相試験のネットワークメタ解析を実施し、オランザピン(OLZ)やクエチアピン徐放製剤(QUE-XR)との比較検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年9月9日号の報告。  本研究には、双極性うつ病患者を対象とした日本での二重盲検ランダム化プラセボ対照第III相試験のデータを含めた。主要アウトカムは治療反応率、副次的アウトカムは寛解率、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアの改善、治療中止率、個々の有害事象発生率とした。

メタボ健診の保健指導に心血管リスク低減効果なし~見直しが必要(解説:桑島巖氏)-1295

特定健康診査とその結果に基づく特定保健指導は2008年(平成20年)から始まった全国規模の保健事業で、一般的にはメタボ健診と呼ばれているものである。メタボ健診では腹囲とBMIを測定するほか、血圧、HbA1c、LDLコレステロール値などを測定して、その結果により医師や保健師による指導を行うというシステムである。そもそもの発端は、1989年に米国のKaplanによって提唱された概念で、上半身肥満・糖代謝異常・高中性脂肪血症・高血圧の4つが重なると心筋梗塞に罹患しやすいことから、「死の四重奏(Deadly Quartet)」と呼ばれていたものである。日本でいうメタボリック(メタボ)では、それらの上流に内臓脂肪蓄積を置いているのが、米国の死の四重奏と異なり、わが国では内臓脂肪症候群と呼ぶ場合もある。そこで日本の特定健康診査では腹囲を測定することに重点を置いているのが特徴であり、医療機関では腹部CTも測定するところもある。

メタボ健診の特定保健指導に心血管リスク低減効果なし

 京都大学の福間 真悟氏らの疫学研究により、わが国の特定健康診査(メタボ健診)を受けた勤労世代の男性において、特定保健指導によって体重は1年後にわずかに減少したが、その後は変化がなかったことが示された。さらに、心血管リスク因子においては、特定保健指導によって1年後も長期的にも改善が認められなかった。著者らは「特定健康診査の費用が高額(年間約160億円)であることを考慮し、本介入について再評価する必要がある」としている。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2020年10月5日号掲載の報告。

日本人統合失調症患者における経皮吸収型ブロナンセリンのD2受容体占有率

 経皮吸収型の抗精神病薬は、アドヒアランスの改善など、潜在的なベネフィットを有している。大日本住友製薬のHironori Nishibe氏らは、経皮吸収型ブロナンセリン1日1回の使用による線条体のドパミンD2受容体占有率について調査を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2020年9月16日号の報告。  本研究は、ブロナンセリン錠8mg/日または16mg/日で治療された、日本人統合失調症外来患者18例(20~64歳、スクリーニング時の陽性・陰性症状評価尺度[PANSS]スコア120未満)を対象とした非盲検第II相臨床試験である。対象患者は、2~4週間のブロナンセリン錠による治療後、経口用量に基づき、2~4週間の経皮吸収型ブロナンセリン1日1回使用の1日量10mg、20mg、40mg、60mg、80mgに割り付けられた。主要評価項目は、ブロナンセリンの線条体ドパミンD2受容体占有率とし、[11C]raclopride-PET画像を用いて測定した。副次評価項目は、用量別の受容体占有率の評価、PANSSおよび臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコアの変化、アドヒアランスに対する患者の意向、経皮吸収型製剤の粘着性とした。

日本の公立学校教師における不眠症と長時間労働

 筑波大学の堀 大介氏らは、日本の公立学校教師における不眠症の有病率を明らかにするため、労働時間、通勤時間と不眠症との関連を調査した。また、不眠症の教師が仕事に費やした時間についても調査を行った。Sleep Medicine誌2020年11月号の報告。  日本の公立小学校または中学校の教師を対象とし、2016年実施の労働環境調査で得られたデータを用いて2次分析を行った。分析対象者数は1万1,390人(女性の割合:47.4%、平均年齢:42.2±11.3歳)であった。労働時間、通勤時間と不眠症との関連を評価するため、二項ロジスティック回帰分析を用いた。主要アウトカムは不眠症とし、その定義はアテネ不眠尺度6以上とした。説明変数は、1週間の労働時間、1日の通勤時間、職業性ストレスの6つのサブスケール、年齢層、子供の有無、仕事の種類、学校の種類、学校の都市性とした。

T790M陽性NSCLCに対するオシメルチニブとベバシズマブの併用(WJOG 8715L)/ESMO2020

 EGFR-TKIに耐性となりT790M陽性が確認された進行肺腺がんに対して、オシメルチニブとベバシズマブの併用は、オシメルチニブ単独に比し、無増悪生存期間(PFS)の延長を示せなかった。日本のWest Japan Oncology Group(WJOG)の試験結果が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で仙台厚生病院の戸井之裕氏から発表された。  このWJOG8715L試験は、日本国内で実施されたオープンラベルの無作為化第II相試験である。

日本人超高齢の心房細動、エドキサバン15mgは有益/NEJM

 標準用量の経口抗凝固薬投与が適切ではない、非弁膜症性心房細動(AF)の日本人超高齢患者において、1日1回15mg量のエドキサバンは、脳卒中または全身性塞栓症の予防効果がプラセボより優れており、大出血の発生頻度はプラセボよりも高率ではあるが有意差はなかったことが示された。済生会熊本病院循環器内科最高技術顧問の奥村 謙氏らが、超高齢AF患者に対する低用量エドキサバンの投与について検討した第III相多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照イベントドリブン試験の結果で、NEJM誌オンライン版2020年8月30日号で発表された。超高齢AF患者の脳卒中予防のための経口抗凝固薬投与は、出血への懸念から困難と判断されることが少なくない。

精神病性うつ病患者の再発に対するベンゾジアゼピンの影響

 ベンゾジアゼピンの長期投与は、依存、転倒、認知障害、死亡リスクを含む有害事象が懸念され、不安以外の症状に対する有効性のエビデンスが欠如していることから、うつ病治療には推奨されていない。しかし、多くのうつ病患者において、抗うつ薬とベンゾジアゼピンの併用が行われている。東京医科歯科大学の塩飽 裕紀氏らは、ベンゾジアゼピン使用がうつ病患者の再発または再燃リスクを低下させるか調査し、リスク低下の患者の特徴について検討を行った。Journal of Clinical Medicine誌2020年6月21日号の報告。

日本人双極I型うつ病に対するルラシドン単剤療法~二重盲検プラセボ対照試験

 主に米国と欧州で実施されたこれまでの研究において、双極I型うつ病に対するルラシドン(20~120mg/日)の有効性および安全性が報告されている。理化学研究所 脳神経科学研究センターの加藤 忠史氏らは、日本人を含む多様な民族的背景を有する患者において、双極I型うつ病に対するルラシドン単剤療法の有効性および安全性を評価した。Psychiatry and Clinical Neurosciences誌オンライン版2020年8月22日号の報告。  対象患者を、ルラシドン20~60mg/日群(182例)、同80~120mg/日群(169例)、プラセボ群(171例)にランダムに割り付け、6週間の二重盲検治療を実施した。主要評価項目は、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)のベースラインから6週目までの変化とした。

日本における若年性認知症の有病率とサブタイプ

 若年性認知症患者の生活には、その年代に合った社会的支援が求められる。最新情報を入手し、適切なサービスを提供するためには、疫学調査が必要である。東京都健康長寿医療センター研究所の粟田 主一氏らは、若年性認知症の有病率、サブタイプの内訳、患者が頻繁に利用するサービスを明らかにするため、調査を行った。Psychogeriatrics誌オンライン版2020年8月19日号の報告。  本研究は、マルチサイト人口ベース2ステップ研究として実施された。全国12地域(北海道、秋田県、山形県、福島県、茨城県、群馬県、東京都、新潟県、山梨県、愛知県、大阪府、愛媛県[対象となる人口:1,163万322人])の医療機関、介護サービス事業所、障害福祉サービス事業所、相談機関などを対象にアンケートを実施した。ステップ1として、過去12ヵ月間で若年性認知症患者がサービス求めたかまたは滞在したかを調査した。ステップ1で「はい」と回答した施設に追加のアンケートの協力を求め、若年性認知症患者へ質問票を配布し、認知症サブタイプなどのより詳細な情報を収集した。

脳画像データの機械学習を用いた統合失調症と自閉スペクトラム症の鑑別

 神経精神疾患の診断は、問診による臨床症状に基づいて行われるため、難しい部分がある。ニューロイメージングなどの客観的なバイオマーカーが求められており、機械学習と組み合わせることで確定診断の助けとなり、その信頼性を高めることが可能である。東京大学のWalid Yassin氏らは、統合失調症患者、自閉スペクトラム症(ASD)患者、健常対照者から得た磁気共鳴画像(MRI)の脳構造データを用いて機械学習を行い、鑑別診断のための機械学習器の開発を試みた。Translational Psychiatry誌2020年8月17日号の報告。

アンジェスの新型コロナワクチン、阪大病院での第I/II相試験開始

 9月8日、アンジェスは、新型コロナウイルス感染症向けDNAワクチンについて、大阪大学医学部附属病院で第I/II相試験を開始したと発表した。同社によると、開発は計画通り進んでおり、接種完了後、経過観察を経て、大阪市立大学医学部附属病院および大阪大学医学部附属病院での第I/II相試験成績を総合的に判断する速報結果を2020年第4四半期に公表する予定という。  大阪市立大学医学部附属病院における第I/II相試験(低用量群15 例および高用量群15 例、筋肉内に2週間間隔で2回接種)は、6月末に開始され、8月半ばに接種が完了している。今回の大阪大学医学部附属病院における第I/II相試験では、用量2mgで、10例による2週間間隔での2回接種、10例による4週間間隔での2回接種、10例による2週間間隔での3回接種の計30例を目標としている。試験期間は、1回目の接種から52週間のフォローアップ期間を含み、2021年9月30日までの予定。

急性期統合失調症に対するルラシドンの有用性~国内第III相試験のネットワークメタ解析

 急性期統合失調症に対するルラシドンの国内第III相試験の結果では、その有効性に一貫性がないことから、藤田医科大学の岸 太郎氏らは、これらの試験のシステマティックレビューおよびランダム効果モデルネットワークメタ解析を実施した。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年8月7日号の報告。  日本での急性期統合失調症に対する二重盲検ランダム化試験を分析対象とした。有効性のアウトカムは、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)の合計、陽性尺度、陰性尺度、総合精神病理尺度の各スコア、臨床全般印象度(CGI-S)スコアの改善および治療反応率とした。中止率および有害事象の発生率も併せて評価した。

新型コロナワクチンAZD1222、日本での第I/II相臨床試験を開始/アストラゼネカ

 9月4日、アストラゼネカは、新型コロナウイルスワクチンAZD1222の日本国内における第I/II相臨床試験を開始したことを発表した。国内の複数の施設で18歳以上の被験者約250名を対象に実施し、日本人に接種した際の安全性と有効性を評価していく。  AZD1222は、アストラゼネカと英オックスフォード大学と共に開発を進めており、世界各国で治験を行っている。現在、南アフリカで第I/II相試験、英国で第II/III相試験、ブラジル・米国で第III相試験を実施している。

乳がんに対するsiRNA核酸医薬候補、医師主導治験開始/がん研有明病院

 がん研究会有明病院は9月2日、東京大学医科学研究所らと共同研究を進めてきたsiRNA核酸医薬候補の乳がん治療薬(SRN-14/GL2-800)を用いて、医師主導治験(First In Human 試験)を開始したことを発表した。  SRN-14/GL2-800は、幹細胞関連転写因子であるPR domain containing 14 (PRDM14)分子に対する、キメラ型siRNAとそのナノキャリアーから構成される化合物。川崎市産業振興財団ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)、東京大学、東京大学医科学研究所が共同で開発した。

COVID-19での嗅覚・味覚障害、アジア人と白人で3倍の差:メタ解析

 新型コロナウイルス陽性例ではかなりの割合で嗅覚・味覚障害が認められる。しかし、発現率は報告によって大きく異なり、その理由は不明である。米国・ネバダ大学リノ校のChristopher S. von Bartheld氏らは、系統的レビューとメタ解析を実施し、嗅覚・味覚障害の有病率について統合解析を行ったところ、白人がアジア人の3倍高いことがわかった。ACS Chemical Neuroscience誌オンライン版2020年9月1日号に掲載。  著者らは、米国国立衛生研究所のCOVID-19ポートフォリオを検索し、COVID-19患者の嗅覚・味覚障害の有病率を報告した研究を調査した。3万8,198例を含む104件の研究を適格と判断し、系統的レビューとメタ解析を行った結果、推定ランダム有病率は、嗅覚障害が43.0%、味覚障害が44.6%、全体で47.4%であった。

ACE阻害薬とARBがCOVID-19重症化を防ぐ可能性/横浜市立大学

 新型コロナウイルスは、アンジオテンシン変換酵素2(ACE2)受容体を介して細胞に侵入することが明らかになっており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とレニン-アンジオテンシン系(RAS)との関連が注目されている。  今回、横浜市立大学附属 市民総合医療センター 心臓血管センターの松澤 泰志氏らの研究グループが、COVID-19罹患前からのACE阻害薬またはARBの服用と重症度との関係について、多施設共同後ろ向きコホート研究(Kanagawa RASI COVID-19 研究)を行った。Hypertension Research誌オンライン版2020年8月21日号での報告。

統合失調症患者の肥満と白質微細構造障害との関連

 国立精神・神経医療研究センターの秀瀬 真輔氏らは、統合失調症患者の肥満(BMI 30以上)と症状、向精神薬、全脳構造との関連について調査を行った。Schizophrenia Research誌オンライン版2020年8月5日号の報告。  対象は、日本人統合失調症患者65例(平均年齢:37.2±11.3歳、女性:32例)で、全員が右利きであった。症状の評価には、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)を用いた。肥満と灰白質および白質構造との関連を分析するため、ボクセル ベース形態計測(VBM)および拡散テンソル画像(DTI)を用いた。

治療抵抗性統合失調症の認知プロファイルと自閉スペクトラム症の特徴

 治療抵抗性統合失調症(TRS)の複雑な病態生理には、重度の陽性症状だけでなく、ほかの症状領域も含まれている。また、統合失調症と自閉スペクトラム症(ASD)の重複する心理学的プロファイルは、明らかになっていない。千葉大学の仲田 祐介氏らは、統合失調症とASD患者における神経発達および認知機能に焦点を当て、比較検討を行った。Schizophrenia Research. Cognition誌2020年7月27日号の報告。  対象は、TRS患者30例、寛解期統合失調症(RemSZ)患者28例、ASD患者28例。一般的な神経認知機能はMATRICSコンセンサス認知機能評価バッテリーを用いて評価し、社会的な認知機能は心の理論(theory of mind)と感情表出(emotional expression)で評価した。自閉症の特徴は、自閉症スペクトラム指数(AQ)、自閉症スクリーニング尺度(ASQ)、広汎性発達障害評価尺度(PDDRS)を用いて評価した。