医療一般|page:1

T-DXd、化学療法未治療のHER2低発現/超低発現の乳がんに承認取得/第一三共

 第一三共は2025年8月25日、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd、商品名:エンハーツ)について、日本において「ホルモン受容体陽性かつHER2低発現又は超低発現の手術不能又は再発乳癌」の効能又は効果に係る製造販売承認事項一部変更承認を取得したことを発表した。  本適応は、2024年6月開催の米国臨床腫瘍学会(ASCO2024)で発表された、化学療法未治療のホルモン受容体陽性かつ、HER2低発現またはHER2超低発現の転移再発乳がん患者を対象としたグローバル第III相臨床試験(DESTINY-Breast06)の結果に基づくもので、化学療法未治療のHER2低発現またはHER2超低発現の乳がんを対象に承認された日本で初めての抗HER2療法となる。

アカラブルチニブ、マントル細胞リンパ腫に承認取得/AZ

 アストラゼネカは、アカラブルチニブマレイン酸塩水和物(商品名:カルケンス錠100mg)について、「マントル細胞リンパ腫」を効能又は効果として、2025年8月25日付で厚生労働省より承認を取得したことを発表した。本承認は国際共同第III相ECHO試験の結果などに基づくもので、米国、EU、ほか数ヵ国でマントル細胞リンパ腫(MCL)に承認されている。

最低賃金上昇へは診療報酬の期中改定対応を要望/日医

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、8月20日に定例記者会見を開催した。会見では、「最低賃金の上昇を受けた期中改定の必要性」と、10月に開催される「女性のがん」に関するシンポジウムの概要が説明された。  はじめに会長の松本氏が「賃上げに関する指標が軒並み高水準で上がってきている中で、人員配置の制約もあり、医療職1人当たりの労働生産性を上げて、全体の員数を減らすといったような対応は難しく、人員を確保し続ける必要がある。また、診療報酬は固定価格であり、医療機関は賃上げにはとても対応できるような経営状況にはない。

玄関付近に植物のある家に住んだほうが日本人のうつ病リスクが低い

 高齢者のうつ病は、認知機能低下や早期死亡リスク上昇につながる可能性がある。住居環境とうつ病との関連は、多くの研究で報告されているものの、玄関付近の特性とうつ病との関連性を調査した研究は限られている。千葉大学の吉田 紘明氏らは、日本人高齢者における玄関付近の特性とうつ病との関連を明らかにするため、横断的研究を実施した。Preventive Medicine Reports誌2025年6月20日号の報告。  2022年1月〜2023年10月、65歳以上の日本人を対象にコホート研究を実施した。解析対象は、東京都23区内に居住する2,046人(平均年齢:74.8±6.2歳)。2023年におけるうつ病の状況は、老年期うつ病評価尺度(GDS15)を用いて評価した。2023年の玄関エリアの特性を説明変数として用いた。修正ポアソン回帰分析を用いて、うつ病有病率比および95%信頼区間(CI)を推定した。

肥満症には社会全体で対応し、医療費を削減/PhRMA、リリー

 米国研究製薬工業協会(PhRMA)と日本イーライリリーは、「イノベーションによる健康寿命の延伸と国民皆保険の持続性:肥満症を例にして」をテーマにヘルスケア・イノベーションフォーラムを都内で共同開催した。  肥満症は、わが国でも患者数が増加し、健康障害と社会的スティグマを伴う、深刻な慢性疾患となっている。その一方で、肥満者の生活習慣のみがフォーカスされ、自己管理の問題と見なされる傾向がある。従来は、運動療法や食事療法など治療選択肢が少なかったこともあり、他の疾患と同じレベルの必要な治療が行われてこなかった。

医師の終末期の選択、95%が延命治療を拒否

 医師が進行がんや末期アルツハイマー病になった場合、どのような終末期医療を希望するのか? ベルギー・ブリュッセルのEnd-of-Life Care Research GroupのSarah Mroz氏らによる研究結果が、Journal of Medical Ethics誌オンライン版2025年6月10日号に掲載された。  研究チームは2022年5月~2023年2月に一般開業医、緩和ケア専門医、その他臨床医の1,157人を対象に横断的調査を実施した。ベルギー、イタリア、カナダ、米国(オレゴン州、ウィスコンシン州、ジョージア州)、オーストラリア(ビクトリア州、クイーンズランド州)の8エリアで、参加した医師に進行がんと末期アルツハイマー病という2つの仮想の臨床シナリオを提示し、終末期医療の意向に関する情報を収集した。

幼児期の重度う蝕、母親の長時間インターネット使用と関連か

 育児に関する情報をインターネットから得ることは、現代では一般的な行動となっている。しかし、画面に向かう時間が長くなりすぎることで、子どもの健康に思わぬ影響が及ぶ可能性がある。最近の研究により、母親の長時間インターネット使用と、3歳児における重度う蝕(Severe early childhood caries :S-ECC)の発症との間に有意な関連が示された。母親が仕事以外で1日に5時間以上インターネットを使用していた場合、そうでない場合と比較して、子どもがS-ECCになるリスクが4倍以上高まる可能性が示唆されたという。研究は島根大学医学部看護学科地域老年看護学講座の榊原文氏らによるもので、詳細は「BMC Pediatrics」に7月2日掲載された。

転移乳がんへのT-DXd後治療、アウトカムを比較

 転移乳がん(MBC)に対し、トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)投与後の治療選択について十分なデータはない。米国・ダナ・ファーバーがん研究所のPaolo Tarantino氏らによる、電子カルテ由来のデータベースを用いた後ろ向き解析の結果、T-DXd投与後の追加治療(後治療)によるアウトカムは、MBCのサブタイプおよび投与された治療レジメンによって有意に異なることが明らかになった。また、T-DXd直後にサシツズマブ ゴビテカン(SG)を使用した場合、すべてのサブタイプで実臨床での無増悪生存期間(rwPFS)が比較的短く、T-DXdとの一定程度の交差耐性の可能性が示唆された。Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版8月14日号掲載の報告。

ラーメン摂取頻度と死亡リスクの関係~山形コホート

 週3回以上のラーメンの頻繁な摂取は、とくに男性、70歳未満、麺類のスープを50%以上摂取する習慣やアルコール摂取習慣のある人といった特定のサブグループで死亡リスク増加と関連する可能性が示唆された。山形大学の鈴木 美穂氏らは、山形コホート研究の食品摂取頻度質問票のデータを用いて、日本人一般集団におけるラーメン摂取頻度と死亡率との関連を検討した。The Journal of Nutrition, Health and Aging誌オンライン版2025年8月1日号への報告より。  本研究は、山形コホート研究の食品摂取頻度質問票調査に参加した40歳以上の6,725人(男性2,349人)を対象とした。ラーメンの平均摂取頻度を、月1回未満、月1~3回、週1~2回、週3回以上の4群に分類。麺類のスープ摂取量は、「ラーメン、うどん、そばのスープはどれくらい飲みますか?」という設問に対する回答を、「50%以上」と「50%未満」の2群に分類した。ラーメン摂取頻度と死亡との関連を明らかにするため、Cox比例ハザード解析を行った。

カリフォルニア州では気候変動で救急外来受診数が増加

 気候変動による日々の気温上昇を受けて米カリフォルニア州の救急外来(ED)では、かつてないほどの混雑が予想されることが、新たな研究で示唆された。この研究では、同州では気候変動により主に寒冷関連の死者数が減少するという明るい側面も確認されたものの、暑熱関連の気候変動は怪我や慢性的な健康問題の悪化を招くため、EDを受診する患者が増え、医療システムへの負担が増加することが予想されたという。米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)公衆衛生学分野のCarlos Gould氏らによるこの研究結果は、「Science Advances」に7月30日掲載された。  Gould氏は、「暑さは死に至るほどではないにしても健康に害を及ぼす可能性がある。気温の上昇は、一貫してED受診の増加と関連しているため、死亡率のみを考慮した研究や政策では大きな負担を見落とすことになる」と話している。

低グレード前立腺がん、想定よりリスクが高い場合も

 生検でグレードグループ1(GG1)に分類された前立腺がん患者は、転移リスクが低いため、治療はせずに経過観察のみでよいとされることが多い。しかし新たな研究で、GG1前立腺がん患者のおよそ6人に1人は中〜高リスクのがんであることが示された。米ワイル・コーネル・メディスン泌尿器科・人口健康科学科のBashir Al Hussein氏らによるこの研究結果は、「JAMA Oncology」に7月31日掲載された。  前立腺生検の結果は、非がん性から高リスクで治療が必要ながんまでさまざまである。現在、生検でGG1と判定された場合、治療は行わずに定期的に腫瘍の評価を行って進行の兆候がないか確認する「積極的監視」の方法が取られることが多い。Al Hussein氏らによると、積極的な監視では、前立腺で生成されるがん関連タンパク質である前立腺特異抗原(PSA)値をモニターするための血液検査、生検、MRI検査などが行われる可能性があるという。しかし同氏らは、前立腺生検は前立腺全体の組織を採取するわけではないため、1回の生検では悪性のがん細胞を見逃す可能性もあると強調する。

小児心停止における人工呼吸の重要性、パンデミックで浮き彫りに

 「子どもを助けたい」。その一心で行うはずの心肺蘇生だが、コロナ流行期では人工呼吸を避ける傾向が広がった。日本の最新研究が、この“ひと呼吸”の差が小児の救命に大きな影響を与えていたことを明らかにした。コロナ流行期では、胸骨圧迫のみの心肺蘇生が増加し、その結果、死亡リスクが高まり、年間で約10人の救えるはずだった命が失われていた可能性が示唆されたという。研究は岡山大学学術研究院医歯薬学域地域救急・災害医療学講座の小原隆史氏、同学域救命救急・災害医学の内藤宏道氏らによるもので、詳細は「Resuscitation」に7月4日掲載された。

男性部下の育休に対する上司の怒り、背景に職場の不公平感とストレス

 男性が育児休業(育休)を取りにくい職場の空気はどこから生まれるのか。今回、男性の育休に対する上司の怒りは、業務負担や部下に対する責任感といった職場ストレスが原因となり、不公平感を介して生じている可能性があるとする研究結果が報告された。研究は筑波大学人間系の尾野裕美氏によるもので、詳細は「BMC Psychology」に7月1日掲載された。  日本では男性の育児休業制度は国際的にみても手厚く整備されており、法的には長期間の取得が可能で、一定の所得補償も用意されている。しかし現実には、男性の育休取得率やその取得期間は依然として低く、制度が十分に活用されているとは言いがたい。従来の研究では、育休取得によるワークライフバランスの向上や仕事満足度の向上といった肯定的側面に主に焦点が当てられてきた。一方で、制度活用が職場内で生じさせる不公平感や、上司が感じる感情的な負担といった側面には、これまで十分な検討がなされてこなかった。そこで本研究では、男性部下の長期育休取得に対する上司の否定的感情が、職場におけるストレッサー(不明確な役割や能力を超えた業務など)を通じてどのように形成されるのかを明らかにすることを目的とした。不公平感が怒りの媒介要因となるという仮説モデルに基づき、その相互関係を検証するためのオンライン調査を実施した。

音声で日本人の軽度認知障害を検出可能か?

 軽度認知障害(MCI)では、発声パターンやテンポの変化がみられることがあるため、音声は認知機能障害の潜在的なバイオマーカーとなる可能性がある。音声バイオマーカーの予測特性をタイムリーかつ非侵襲的に検出するうえで、人工知能(AI)を用いたMCIの検出は、費用対効果に優れる方法であると考えられる。国立循環器病研究センターの清重 映里氏らは、日本の地域住民における非構造的な会話の音声データからAIで生成した音声バイオマーカーを用いて、MCIを検出する予測モデルを開発し、その効果を検証した。The Lancet Regional Health. Western Pacific誌2025年6月12日号の報告。

転移乳がんへのCDK4/6阻害薬、1次治療と2次治療でOSに差なし~メタ解析

 CDK4/6阻害薬は、HR+/HER2-転移乳がんに対して、1次治療での使用が2次治療での使用より無増悪生存期間(PFS)の改善が認められたことから、1次治療としてガイドラインで推奨されている。一方、1次治療からの使用は累積毒性とコストの増加に関連することがSONIA試験で示唆されており、1次治療と2次治療の生存期間を比較したデータは少ない。今回、ブラジル・サンパウロ大学のLis Victoria Ravani氏/米国・マサチューセッツ総合病院のZahra Bagheri氏らがメタ解析を行った結果、2次治療での使用は1次治療からの使用と比べ、PFS2(無作為化から2次治療で進行するまでの期間)は悪化したが、全生存期間(OS)は同等であることが示唆された。Breast Cancer Research誌2025年8月13日号に掲載。

Lp(a)高値が及ぼす冠動脈疾患以外へのリスクとは/Circulation

 リポ蛋白(a)[Lp(a)]は動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)の残余リスクの1つとして重要とされ、近年、再注目されている。今回、MIT・ハーバード大学ブロード研究所のTiffany R Bellomo氏らが、Lp(a)高値が冠動脈以外の動脈硬化疾患の発症ならびに重大な合併症の進展に関連していることを明らかにした。Circulation誌オンライン版2025年7月28日号掲載の報告。  研究者らは、冠動脈以外の動脈硬化性疾患および合併症の発症リスクが高い患者を特定する上で、Lp(a)測定が有用となることを明らかにするため、英国バイオバンク46万544例のうちLp(a)が測定されていた患者データを解析。Cox比例ハザード回帰モデルを用いて、Lp(a)濃度と末梢動脈疾患(PAD)や頸動脈狭窄の発症の関連、初発の主要下肢有害イベント(major adverse limb event:MALE)および初発の脳卒中進展との関連についてモデル化した。

認知症診断後の経過に男女差は?

 認知症の男性患者は、年齢や人種/民族、社会経済要因、併存疾患などで調整した後でも女性患者と比較して死亡率が高く、入院などの医療サービスの利用率も高いことを、米国・Duke University School of MedicineのJay B. Lusk氏らが明らかにした。JAMA Neurology誌オンライン版2025年8月11日号掲載の報告。  認知症の発症率は女性で高いことが知られており、性差は認知症のアウトカムにも影響する可能性が示唆されている。そこで研究グループは、認知症の男性患者と女性患者における、認知症と診断された後の死亡率や医療サービスの利用率を調査するために全国コホート研究を行った。  調査はメディケア加入データを用いて2014~21年に実施され、最大8年間の追跡調査が行われた。解析は2024年4月〜2025年4月に行われた。対象は、国際疾病分類第10版(ICD-10)に基づく認知症の診断コードを有し、過去1年以上の出来高払い制メディケア加入歴のある65歳以上の患者であった。

パッチ検査でメラノーマを早期発見できる日は近い?

 将来的には、自宅で行う新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の簡易検査のように、メラノーマ(悪性黒色腫)の検査ができるようになるかもしれない。米ミシガン大学の研究グループが、マイクロニードルが埋め込まれた「ExoPatch」と呼ばれるシリコンパッチにより、マウスのメラノーマと健康な皮膚を区別することができたとする研究結果を報告した。同大学の化学工学教授のSunitha Nagrath氏は、「成功すれば、このパッチが皮膚がん検出に革命を起こす可能性がある」と述べている。米国立衛生研究所(NIH)の資金提供を受けて実施されたこの研究の詳細は、「Biosensors and Bioelectronics」10月1日号に掲載された。

「永遠の化学物質」が2型糖尿病リスクと関連?

 ほとんど分解されないために環境中に長期間存在し続けることから、「永遠の化学物質」と呼ばれているPFAS(ペルフルオロアルキル化合物やポリフルオロアルキル化合物)の血中濃度と、2型糖尿病発症リスクとの有意な関連性を示唆する研究結果が、「eBioMedicine」に7月21日掲載された。米マウントサイナイ・アイカーン医科大学のVishal Midya氏らの研究によるもので、同氏は、「われわれの研究は多様な背景を持つ米国の一般人口において、PFASがいかに代謝を阻害し糖尿病リスクを高めているのかを探索するという、新たな研究の一つである」と述べている。