医療一般|page:1

アトピー性皮膚炎への新規外用薬、既存薬と比較~メタ解析

 アトピー性皮膚炎に対する治療薬として、2020年1月にデルゴシチニブ、2021年9月にジファミラストが新たに承認された。長崎大学の室田 浩之氏らは、これらの薬剤と既存の標準的な外用薬について、臨床的有効性および安全性を評価するためシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施し、結果をDermatology and Therapy誌2025年5月号で報告した。  Medline、Embase、Cochrane、ならびに医中誌から対象となる文献を選定し、有効性の評価項目として、Eczema Area and Severity Index(EASI)スコアおよびInvestigator Global Assessment(IGA)スコアを使用した。安全性の評価項目には、重篤な有害事象、ざ瘡、および皮膚感染症が含まれた。

CT検査による将来のがんリスク、飲酒や過体重と同程度?

 米国では、年間6,200万人の患者に対して約9,300万件のCT検査が行われている。CT検査は診断に役立つが、被曝によってがんリスクを高める可能性がある。2009年の分析では、2007年の米国におけるCTの使用により将来約2万9,000件のがんが発症するとの推定が報告されたが、2007年以降、年間に実施されるCT検査数は30%以上増加しているという。  CT使用に関連する将来的ながん発症率の予測値を更新するため、カリフォルニア大学サンフランシスコ校疫学・生物統計学部のRebecca Smith-Bindman氏らは、2018年1月~2020年12月にカリフォルニア大学国際CT線量レジストリの検査データ12万1,212件を使用し、リスクモデルを用いた分析を実行した。

アリピプラゾール持続性注射剤の治療継続に影響する要因

 アリピプラゾール持続性注射剤(LAI)は、有効性が良好であり、臨床現場で広く用いられる薬剤である。注目すべきことに、韓国人集団におけるアリピプラゾールLAIの治療継続に及ぼす要因を検討した研究は、これまでなかった。韓国・Inha University College of MedicineのSoyeon Chang氏らは、アリピプラゾールLAIの治療継続に影響を及ぼす実臨床における要因を明らかにするため、1年間のレトロスペクティブコホート研究を実施した。Clinical Psychopharmacology and Neuroscience誌2025年5月31日号の報告。  韓国・Inha University Hospitalにおいて、アリピプラゾールLAI治療を開始した患者68例を対象に、1年間のレトロスペクティブコホート研究を実施した。患者の診療記録をレビューし、治療継続率、継続中止までの期間、継続中止理由の評価を行った。

“スマートシャツ”で心臓病を予測

 心電図センサーが縫い込まれている“スマートシャツ”の着用が、心臓病のリスクが高い人の特定に役立つ可能性を示す研究結果が報告された。米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校のManuel Hernandez氏らの研究によるもので、詳細は「IEEE Journal of Biomedical and Health Informatics」に3月11日掲載された。  Hernandez氏らは、心臓病のリスクが高い人を特定するためのアルゴリズムの構築を目指しており、今回の研究では、運動に伴う心拍変動を測定できるウェアラブルデバイスとして、Carré Technologies社が開発した、心電図機能を備えているスマートシャツを実験に用いた。

子宮頸がんワクチンの接種率は近隣の社会経済状況や地理に関連か

 子宮頸がんはほとんどの場合ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により発症する。HPVにはワクチンが存在していることから、子宮頸がんは「予防できるがん」とも呼ばれる。この度、HPVワクチンの接種率が近隣地域の社会経済状況、医療機関へのアクセスに関連するという研究結果が報告された。近隣地域の社会経済状況が高く、医療機関へのアクセスが容易なほどHPVワクチンの接種率が高かったという。大阪医科薬科大学総合医学研究センター医療統計室の岡愛実子氏(大阪大学大学院医学系研究科産科学婦人科学教室)、同室室長の伊藤ゆり氏らの研究によるもので、詳細は「JAMA Network Open」に3月13日掲載された。

重症精神疾患に対する抗精神病薬+メトホルミン併用の有用性

 候補薬剤である。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのLuiza Farache Trajano氏らは、SGAによる治療を開始する重症精神疾患患者におけるメトホルミン併用の割合、有病率、人口統計学的パターンを明らかにし、SGA開始後2年間におけるメトホルミン併用が体重変化に及ぼす影響を推定するため、コホート研究を実施した。BMJ Mental Health誌2025年4月2日号の報告。  Clinical Practice Research Datalinkのプライマリケアデータを用いて、2005〜19年にアリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドンによる治療を開始した重症精神疾患患者を対象に、コホート研究を実施した。メトホルミン併用の累積割合、期間有病率を推定し、人口統計学的および臨床的因子による併用処方率の違いを調査した。交絡因子を考慮し、SGA単独またはSGA+メトホルミン併用で治療された患者の体重変化について線型回帰法を用いて比較した。

妊娠合併症は将来の心臓の健康に悪影響を及ぼす

 妊娠中に妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群といった合併症を発症した女性は、後年の心臓の健康リスクが高いことを示す研究結果が報告された。米ノースウェスタン大学のJaclyn Borrowman氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of the American College of Cardiology(JACC)」に4月22日掲載された。  著者らによると、妊娠合併症と健康リスクとの関連は、妊娠前に過体重や肥満であった女性に、特に強く当てはまるという。そして、「女性にとって妊娠中に合併症を発症するか否かは、将来の健康状態や慢性疾患のリスクを予測するという点で、あたかも“ストレス負荷テスト”のようなものだ」と解説。またBorrowman氏は、「われわれの研究結果は、妊娠を考えている女性が体重管理を優先することが、妊娠中および将来の心臓血管の健康につながり得ることを示唆している」と話している。

免疫チェックポイント阻害薬の治療効果、年齢による差は認められず

 人の免疫システムが加齢に伴い衰えていくことはよく知られている。しかし、そのような免疫機能の低下が、がんに対する免疫療法の効果を妨げることはないようだ。がん患者に対する免疫チェックポイント阻害薬による治療は年齢に関わりなく有効であることが、新たな研究で明らかにされた。米ジョンズ・ホプキンス大学医学部腫瘍学分野のDaniel Zabransky氏らによるこの研究結果は、「Nature Communications」に4月21日掲載された。Zabransky氏は、「高齢患者に対する免疫療法の効果は、若年患者と同等か、場合によってはそれ以上だ」と述べている。

喘息治療における吸入薬投与の最適なタイミングとは

 喘息患者は、1日1回の吸入ステロイド薬を遅めの午後に使用することで、夜間の症状を効果的にコントロールできる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。英マンチェスター大学のHannah Jane Durrington氏らによるこの研究結果は、「Thorax」に4月15日掲載された。  薬物投与のタイミングを体内時計に合わせる治療法はクロノセラピー(時間治療)と呼ばれ、薬の治療効果を高めることが期待されている。Durrington氏らによると、喘息には明確な日内リズムがあり、気流閉塞と気道炎症の主要な影響は夜間にピークに達する。実際、致死的な喘息発作の約80%は夜間に発生しているという。

β遮断薬やスタチンなど、頻用薬がパーキンソン病発症を抑制?

 痛みや高血圧、糖尿病、脂質異常症の治療薬として、アスピリン、イブプロフェン、スタチン系薬剤、β遮断薬などを使用している人では、パーキンソン病(PD)の発症が遅くなる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。特に、PDの症状が現れる以前からβ遮断薬を使用していた人では、使用していなかった人に比べてPDの発症年齢(age at onset;AAO)が平均で10年遅かったという。米シダーズ・サイナイ医療センターで神経学副部長兼運動障害部門長を務めるMichele Tagliati氏らによるこの研究結果は、「Journal of Neurology」に3月6日掲載された。

糖尿病や腎臓病リスクが高まる健診の未受診期間は?/H.U.グループ中央研究所・国循

 2型糖尿病の進展は、糖尿病性腎症や透析を含む合併症の発症など健康上の大きな問題となる。年1回の健康診断と健康転帰との良好な関係は周知のことだが、定期的な健康診断をしなかった場合の2型糖尿病および透析への進展に及ぼす影響についてはどのようなものがあるだろうか。この課題に対して、H.U.グループ中央研究所の中村 いおり氏と国立循環器病研究センターの研究グループは、年1回の健康診断の受診頻度と糖尿病関連指標との関連、および透析予防における早期介入の潜在的影響について検討した。その結果、健康診断を3年以上連続して受診しなかった人は、2型糖尿病のリスクが高いことが示唆された。

未治療の進行性肺線維症、ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法の安全性・有効性(TOP-ILD)/日本呼吸器学会

 進行性肺線維症(PPF)に対する治療は、原疾患の標準治療を行い、効果不十分な場合に抗線維化薬を使用するが、早期からの抗線維化薬の使用が有効な可能性も考えられている。そこで、未治療PPFに対する抗線維化薬ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法の安全性と有効性を検討する国内第II相試験「TOP-ILD試験」が実施された。本試験において、ニンテダニブ+抗炎症薬の同時導入療法は、治療継続率が高く、有効性についても良好な結果が得られた。第65回日本呼吸器学会学術講演会において、坪内 和哉氏(九州大学病院)が本試験の結果について解説した。

青年期統合失調症に対するブレクスピプラゾールの短期的有用性〜第III相試験

 青年期の統合失調症に対する現在の治療は、不十分であり、新たな治療オプションが求められている。米国・Otsuka Pharmaceutical Development & CommercializationのCaroline Ward氏らは、青年期統合失調症に対するブレクスピプラゾール治療の短期的有効性および安全性を評価するため、10ヵ国、62施設の外来診療における国際共同ランダム化二重盲検プラセボ対照第III相試験を実施した。The Lancet Psychiatry誌2025年5月号の報告。  同試験の対象は、DSM-5で統合失調症と診断され、スクリーニング時およびベースライン時に陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)合計スコア80以上であった13〜17歳の患者。ブレクスピプラゾール群(2〜4mg/日)、プラセボ群、アリピプラゾール群(10〜20mg/日)のいずれかに1:1:1でランダムに割り付けられた。主要有効性エンドポイントは、PANSS合計スコアのベースラインから6週目までの変化とした。安全性は無作為に割り付けられ、試験薬を1回以上投与された患者について評価を行った。

バーミンガム股関節表面置換術で高レベルの身体活動を維持

 表面置換型人工股関節置換術の一種であるバーミンガム股関節表面置換術(BHR)を受けた患者では、人工股関節全置換術(THA)を受けた患者と同程度に、長期間にわたり高レベルの身体活動を維持できることが長期研究で明らかになった。米ワシントン大学医学部整形外科教授のRobert Barrack氏らによるこの研究結果は、「The Journal of Bone and Joint Surgery」に3月19日掲載された。  長年、熱心にスポーツを続けていると体に負担がかかり、股関節に痛みを伴う変形性関節症を発症することがある。THAはこうした症状に対する治療選択肢の一つだが、術後に高強度の運動や負荷の高い動きが制限されてしまうことが少なくない。そのため、若くて活動的な患者の間では、THAよりも、患者を競技レベルの運動に復帰させた実績のあるBHRが好まれることが多い。

触覚フィードバックで軽度アトピー性皮膚炎患者における夜間掻痒が軽減

 軽度のアトピー性皮膚炎に対する触覚フィードバックは、患者の夜間掻痒を軽減させる非薬理学的介入として使用できる可能性があるという研究結果が、「JAMA Dermatology」に2月5日掲載された。  米ミシガン大学アナーバー校のAlbert F. Yang氏らは、単アーム2段階コホート試験を実施し、クローズドループ・触覚フィードバックを備えた人工知能(AI)対応ウェアラブルセンサーについて、軽症アトピー性皮膚炎の夜間掻痒症状に対する検出精度および軽減効果を検討した。試験には、中等度~重度の掻痒行動を自己申告した軽症アトピー性皮膚炎患者が対象者として登録された。手に装着したウェアラブルセンサーから送られる触覚フィードバックは、AIアルゴリズムによって夜間掻痒症状が検出されたときに発せられる。対象者は、まず検出機能のみ作動させたセンサーを7日間装着し、その後触覚フィードバックも作動させた状態でセンサーを7日間装着した。

歩く速度が不整脈リスクと関連

 歩行速度が速い人は不整脈リスクが低いという関連のあることが報告された。英グラスゴー大学のJill Pell氏らの研究によるもので、詳細は「Heart」に4月15日掲載された。歩行速度で3群に分けて比較すると、最大43%のリスク差が認められたという。  これまで、身体活動が不整脈リスクを抑制し得ることは知られていたが、歩行速度と不整脈リスクとの関連についての知見は限られていた。Pell氏らはこの点について、英国で行われている一般住民対象大規模疫学研究「UKバイオバンク」のデータを用いて検討した。

PTSDの迅速なスクリーニングと評価のための言語的特徴〜メタ解析

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状と言語的特徴との関連を調査し、言語的特徴がPTSDの迅速なスクリーニングや評価を行ううえで信頼できる指標として利用可能かを判断するため、中国・上海中医薬大学のZhenyuan Yu氏らは、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Frontiers in Psychiatry誌2025年3月31日号の報告。  2024年8月までに公表されたPTSDと言語的特徴との関連を調査した研究をPubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、Web of Science、Ovidデータベースより包括的に検索し、参考文献の後方トラッキングにより補強した。

チルゼパチド72週の投与で体重が5%以上減少/リリー・田辺三菱

 日本イーライリリーと田辺三菱製薬は、4月11日に発売された持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド[皮下注アテオス])について、プレスセミナーを開催した。プレスセミナーでは、肥満症の基礎情報や肥満症の要因、社会的課題とともに、チルゼパチドの臨床試験であるSURMOUNT-J試験の概要が説明された。  「複合的な要因からなる慢性疾患『肥満症』のアンメットニーズ」をテーマに、脇 裕典氏(秋田大学大学院医学系研究科 代謝・内分泌内科学講座 教授)が、肥満症の病態や関係する諸課題について説明した。

中年患者へのスタチン使用、白内障リスク上昇

 近年、スタチンの使用が白内障の発症に影響を及ぼす可能性が示唆されている。そこで、日本人におけるスタチン使用と白内障の発症との関連性について、日本大学薬学部のKazuhiro Kawabe氏らが検討し、中年層でのスタチン使用が白内障リスクを約1.5倍高めることを明らかにした。Scientific Reports誌2025年4月19日号掲載の報告。  研究者らは、日本人の健康診断および保険請求データベースの2005年1月1日~2017年12月31日に記録されたデータを用いて後ろ向きコホート研究を実施。健康診断データの脂質異常症117万8,560例のうち72万4,200例をスタチン非使用群とスタチン使用群(新規使用)に分類し、未調整/年齢・性別による調整/多変量調整のハザード比(HR)を算出してCox比例ハザード回帰分析を行った。主要評価項目はスタチンの使用と白内障リスクの関連性を評価。副次評価項目として、使用されたスタチンの力価や特徴、スタチンごとの白内障リスクを評価した。

外遊びやスポーツで子どもの運動能力が向上

 家の外で遊んで時間を過ごしたり、さまざまなスポーツ活動に参加したりしている子どもは運動能力が高く、特に複数のスポーツを行っている場合にその関連が顕著であることが報告された。ユヴァスキュラ大学(フィンランド)のNanne-Mari Luukkainen氏らの研究の結果であり、詳細は「Journal of Sports Sciences」に2月1日掲載された。女児に限れば平日に1日30分強、屋外で過ごすことも、スポーツ実施の有無にかかわらず、運動能力の高さと有意な関連が認められるという。  論文の筆頭著者であるLuukkainen氏は、この研究結果を、「幼少期に2種類以上のスポーツ活動に参加していることは、その後の学齢期における運動能力向上の予測因子である」と総括。また、「この結果に基づき、体育教師やコーチは、子どもたちの発達における組織的なスポーツ活動と非組織的な身体活動の双方の重要性を認識し、それらの活動への参加を奨励する必要がある」と提言している。