出生体重1,500g未満児への早期インスリン治療介入は無益

提供元:ケアネット

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公開日:2008/11/12

 



極低出生体重児(1,500g未満)への早期インスリン治療介入は、高血糖症を減らすが低血糖症を増大する可能性が高く「臨床ベネフィットはない」とする報告が、ケンブリッジ大学のKathryn Beardsall氏らによって寄せられた。パイロットスタディ「ヨーロッパ新生児インスリン補完療法(Neonatal Insulin Replacement Therapy in Europe:NIRTURE)」の結果より。極低出生体重児の高血糖症の発病率は高度(20~86%)で、罹患率、死亡率ともに高い。またそれゆえ、早期のインスリン治療介入による臨床ベネフィットが期待されてもいた。NEJM誌2008年10月30日号にて掲載。

出産予定日の死亡率を主要転帰に




国際共同多施設オープンラベル無作為化対照試験への参加者は、イギリス、ベルギー、オランダ、スペインの各国医療センターから集められた。早期インスリン治療群(インスリン0.05 U/kg/時を20%ブドウ糖液とともに静脈内持続投与)に割り付けられたのは195例。対照群(標準的な新生児治療)には194例が割り付けられ、それぞれ生後24時間以内~7日までの連続血糖モニタリングのデータを入手し血糖コントロールへの有効性が検証された。

主要転帰は出産予定日での死亡率。なお本研究は、主要転帰に関する無益性と、潜在的な有害性への懸念から早期に中断された。

高血糖症は対照群より10%以上低いが低血糖症が増大




平均血糖値(±SD)を比べると、早期インスリン治療群は6.2±1.4 mmoL/L(112±25 mg/dL)、対照群は6.7±2.2 mmoL/L(121±40 mg/dL)で、治療群のほうが低かった(P = 0.007)。

生後7日間で高血糖症を発病した割合は、治療群のほうが10%以上低い(21%対33%、P = 0.008)。また、治療群のほうが炭水化物の投与量が有意に多く(51±13 kcal/kg/日 対 43±10 kcal/kg/日、P<0.001)、体重減は有意に少なかった(−0.55±0.52 対 −0.70±0.47、P = 0.006)。

しかし、より多くの低血糖症の発現[2.6mmoL/L(47mg/dL)未満1時間以上と定義]がみられた(29%対17%、P = 0.005)。低血糖症エピソードの増大は出生時体重1kg未満の乳児で多かった。

また、主要転帰(出産予定日の死亡率)および副次転帰(罹患率)に関するintention-to-treat解析の結果に違いはみられなかった。ただし28日時点におけるintention-to-treat解析による死亡率が、治療群のほうがより高かったことが示されてはいる(P = 0.04)。

(武藤まき:医療ライター)