エボロクマブ追加、動脈硬化のない糖尿病患者の1次予防に有効/JAMA

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2026/04/14

 

 既知の重度動脈硬化がなく糖尿病を有する患者において、エボロクマブによる早期の強化LDLコレステロール(LDL-C)低下療法は有益であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のNicholas A. Marston氏らVESALIUS-CV Investigatorsによる「VESALIUS-CV試験」の事前に規定されたサブグループ解析で示された。同試験は、心筋梗塞や脳卒中の既往歴がなく心血管イベントのリスクは高いという、比較的リスクが低い集団の1次予防において、PCSK9阻害薬の追加投与が主要心血管イベント(MACE)のリスクを低減することを実証した初めての臨床試験であるが、患者の多くが既知の重度の動脈硬化を有していた。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年3月28日号で報告された。

33ヵ国の無作為化プラセボ対照比較試験

 本研究は、33ヵ国774施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験(Amgenの助成を受けた)。2019年6月に参加者の登録を開始し、2025年7月に最後の患者の追跡を終了した。

 対象は、重度の動脈硬化を認めず(以下のいずれにも該当しない:動脈血行再建術の既往、動脈の50%以上の狭窄、冠動脈石灰化スコア≧100Agatston単位)、高リスク糖尿病(以下の少なくとも1つに該当:罹患期間10年以上、インスリンの連日使用、細小血管疾患)を有し、心筋梗塞や脳卒中の既往歴がなく、LDL-C値≧90mg/dL、非HDL-C値≧120mg/dL、アポリポ蛋白B値≧80mg/dLがみられ、至適な脂質低下療法により病態が2週間以上安定している患者であった。

 被験者を、忍容可能な至適な用量のスタチン療法に加え、エボロクマブ(140mg、2週ごと)またはプラセボを皮下投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。

 主要エンドポイントは次の2つとした。(1)3つの主要心血管イベント(冠動脈性心疾患死、心筋梗塞、虚血性脳卒中)の複合(3-P MACE)、(2)4つのMACE(3-P MACEと虚血による動脈の血行再建術)の複合(4-P MACE)。

48週でLDL-C値が52mg/dLに低下

 試験全体の参加者1万2,257例のうち適格基準を満たしたサブグループ3,655例(年齢中央値65歳[四分位範囲[IQR]:60~70]、女性57%)を解析の対象とした。エボロクマブ群に1,849例、プラセボ群に1,806例を割り付けた。

 サブグループのベースラインBMI中央値は31.4(IQR:28.0~35.6)、9割弱が高血圧、ほぼ全例が糖尿病で、LDL-C中央値は132mg/dL(IQR:108~156)、89%が脂質低下療法を、64%は高強度スタチン療法を受けていた。

 48週の時点で、LDL-C値中央値はエボロクマブ群が52mg/dL、プラセボ群は111mg/dLであった(p<0.001)。96週時にはそれぞれ44mg/dLおよび105mg/dLまで低下した。

3-P・4-P MACEイベントとも有意に優れる

 3-P MACEイベントは、プラセボ群で117例(5年Kaplan-Meier推定値7.1%)に発生したのに対し、エボロクマブ群では83例(5.0%)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.69[95%信頼区間[CI]:0.52~0.91]、p=0.009、群間差:2.1%[95%CI:0.4~3.8])。

 また、4-P MACEイベントは、プラセボ群で178例(5年Kaplan-Meier推定値10.5%)に認めたのに対し、エボロクマブ群では127例(7.6%)と有意に少なかった(HR:0.69[95%CI:0.55~0.86]、p=0.001、群間差:2.9%[95%CI:0.9~4.9])。

 さらに、心血管死(エボロクマブ群2.38%vs.プラセボ群3.49%、HR:0.68[95%CI:0.46~0.99])および全死因死亡(7.36%vs.9.52%、HR:0.76[95%CI:0.61~0.95])の発生率も、エボロクマブ群で良好だった。

重篤・試験薬中止有害事象は同等

 重篤な有害事象(エボロクマブ群24.5%vs.プラセボ群25.7%、p=0.41)、試験薬の投与中止に至った有害事象(同4.1%vs.4.3%、p=0.75)の発生率は両群で同程度だった。死亡は、エボロクマブ群で136例(5年Kaplan-Meier推定値7.8%)、プラセボ群で172例(10.1%)に認めた(HR:0.76、95%CI:0.61~0.95)。

 著者は、「既知の重度な動脈硬化がなく糖尿病を有する高リスク患者の1次予防において、至適なスタチン療法にエボロクマブを加えると、プラセボと比較して初回MACEリスクが低減した」とまとめ、「これらのデータは、アテローム動脈硬化性心血管疾患の進行の初期段階にある患者に対して、スタチン療法に上乗せした強化治療を行うこと、および通常はきわめて高リスクの2次予防患者にのみ適用されるLDL-Cの目標値を目指すことを支持するものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)