不眠症に対する各運動介入の比較〜ネットワークメタ解析

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/08/11

 

 中国・北京中医薬大学のZhi-Jun Bu氏らは、不眠症における重症度の軽減および睡眠の質の改善に対するさまざまな運動介入の有効性を比較するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。BMJ Evidence-Based Medicine誌オンライン版2025年7月15日号の報告。

 2025年4月1日までに公表された研究をPubMed、Cochrane Library、Embase、Web of Science、SPORTDiscus、PsycINFOデータベースより検索した。成人不眠症患者を対象に、介入を評価したランダム化比較試験(RCT)をメタ解析に含めた。バイアスリスクの評価には、Cochrane Risk of Bias 2 Toolを用いた。エビデンスの確実性は、ネットワークメタ解析信頼性(CINeMA)プラットフォームを用いて評価した。各介入の有効性を評価するため、頻度主義ネットワークメタ解析を実施し、平均差(MD)および95%信頼区間(CI)をアウトカムとして算出した。睡眠アウトカムの評価には、ピッツバーグ睡眠品質指数(PSQI)、不眠症重症度指数(ISI)、睡眠日誌などの検証済みのツールおよび睡眠ポリグラフ、アクチグラフィーなどの客観的睡眠指標を複合的に測定した。

 主な結果は以下のとおり。

・22件のRCT、1,348例をメタ解析に含めた。
・13種類の介入のうち、運動介入は7種類で、ヨガ、太極拳、ウォーキング/ジョギング、有酸素運動と筋力トレーニングの併用、筋肉トレーニング単独、有酸素運動と治療の併用、有酸素運動の混合であった。
・対象研究のバイアスリスクは、低いが4件(18%)、中程度が15件(68%)、高いが3件(14%)であった。
・ヨガは、積極対照群(通常ケア、生活習慣改善など)と比較し、睡眠日誌より収集したデータに基づき総睡眠時間の増加、睡眠効率の改善、入眠後の中途覚醒時間の減少、入眠潜時の短縮が認められた。
【総睡眠時間】MD:110.88分、95%CI:58.66〜163.09、エビデンスの確実性:中
【睡眠効率】MD:15.59%、95%CI:5.76〜25.42、エビデンスの確実性:低
【入眠後の中途覚醒時間】MD:−55.91分、95%CI:−98.14〜−13.68、エビデンスの確実性:低
【入眠潜時】MD:−29.27分、95%CI:−50.09〜−8.45、エビデンスの確実性:低
・ウォーキング/ジョギングは、ISIスコアの大幅な低下につながる可能性が示唆された(MD:−9.57ポイント、95%CI:−12.12〜−7.02、エビデンスの確実性:低)。
・太極拳は、PSQIスコアを低下させる可能性があり、睡眠日誌より収集したデータに基づき総睡眠時間の増加、入眠後の中途覚醒時間の減少、入眠潜時の短縮が認められた。
【PSQIスコア】MD:−4.57ポイント、95%CI:−7.50〜−1.63、エビデンスの確実性:低
【総睡眠時間】MD:52.07分、95%CI:25.53〜78.61、エビデンスの確実性:低
【入眠後の中途覚醒時間】MD:−36.11分、95%CI:−62.81〜−9.42、エビデンスの確実性:低
【入眠潜時】MD:−24.76分、95%CI:−41.07〜−8.46、エビデンスの確実性:低
・さらに、太極拳では、客観的睡眠指標を複合的に測定した結果、総睡眠時間を増加させる可能性が示唆された(MD:24.09分、95%CI:4.66〜43.52、エビデンスの確実性:低)。

 著者らは「運動介入は、不眠症患者の睡眠改善に有効であり、中でもヨガ、太極拳、ウォーキング/ジョギングは、他の運動よりも効果的であることが示唆された。これらの結果をさらに検証し、強化するためにも、大規模かつ高品質の適切に設定されたRCTの実施が望まれる」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)