「てんかんにおける予期せぬ突然死(sudden unexpected death in epilepsy:SUDEP)」はてんかん関連死の主要な原因であり、後ろ向き研究によってそのリスク因子は、全般けいれん発作(とくに夜間)、罹患期間の長いてんかん、独居が知られている。米国・University of Texas Health Science Center at HoustonのManuela Ochoa-Urrea氏らは、これらのリスク因子を支持するエビデンスと共に、発作に伴う無呼吸がSUDEPリスクの指標となる可能性を示した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年9月17日号で発表された。
米国と英国の前向きコホート研究
研究チームは、SUDEPのリスク因子を前向きに検討する目的で、9施設(米国8、英国1)が参加した多施設共同コホート研究を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]の助成を受けた)。
2011年9月17日~2021年12月30日に、生後2ヵ月以上で、参加施設のてんかん監視室(EMU)に入室してビデオ脳波(EEG)モニタリングを受け、少なくとも6ヵ月間の追跡調査を完了したてんかん(薬剤抵抗性の有無は問わない)患者2,468例(発症時年齢中央値15歳[四分位範囲[IQR]:7~27]、女性1,382例[56%]、罹患期間中央値12年[IQR:4~22])を登録した。
主要エンドポイントは、SUDEP発生までの期間であった。
SUDEPによる死亡率は4.76件/1,000人年
追跡期間中央値35ヵ月(IQR:18~54)の時点で、2,468例のうち38例(1.54%)がSUDEP(definite SUDEP:12例、probable SUDEP:18例、possible SUDEP:8例)で死亡し、2例がnear SUDEPであった。7,982人年の前向きコホートにおけるSUDEPによる死亡率は4.76件(95%信頼区間[CI]:3.37~6.53)/1,000人年だった。
また、SUDEPリスク増加の有意な予測因子として次の4つを認めた。(1)独居(同居者ありと比較したハザード比[HR]:7.62、95%CI:3.94~14.71、p<0.0001)、(2)過去1年間の全般てんかん発作の発現が3回以上(3回未満と比較したHR:3.10、1.64~5.87、p=0.0005)、(3)発作時中枢性無呼吸の発現時間(10秒延長ごとのHR:1.11、1.05~1.18、p=0.0001)、(4)発作後中枢性無呼吸の発現時間(10秒延長ごとのHR:1.32、1.14~1.54、p=0.0002)。
possible SUDEPとnear SUDEPを除外したサブ解析では、発作時中枢性無呼吸が有意ではなくなった。
推定5年SUDEP発生率は2.2%
Kapan-Meier法による全体の推定5年SUDEP発生率は2.2%であった。また、5年SUDEPリスクは、同居者あり(2.1%)に比べ独居(14.9%)、過去1年間の全般てんかん発作の発現3回未満(1.4%)に比べ3回以上(4.3%)、発作時中枢性無呼吸の発現時間中央値17秒以下(3.7%)に比べ17秒超(7.4%)、発作後中枢性無呼吸の発現時間中央値14秒以下(3.6%)に比べ14秒超(13.4%)で、それぞれ有意に高かった。
著者は、「これらの知見は、死亡に先立つ発作に伴う無呼吸とSUDEPリスク上昇との関連を示唆しており、発作中の心肺モニタリングがてんかん死のリスク評価に有益となる可能性がある」「独居やけいれん発作の頻度と共に、発作に伴う無呼吸(17秒を超える発作時中枢性無呼吸、および14秒を超える発作後中枢性無呼吸)は、検証可能なSUDEPリスク指標の開発に役立つ可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)