胃腸炎を伴う重度急性栄養失調児に対して、経口補液療法と静脈内補液療法の間に、96時間時点の死亡率に関して差異があるとのエビデンスは認められなかった。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのKathryn Maitland氏らGASTROSAM Trial Groupが非盲検優越性無作為化試験の結果を報告した。国際的な勧告では、体液過剰への懸念から重度急性栄養失調児への静脈内補液療法は推奨されていないが、その懸念を裏付けるエビデンスは不足していた。一方で、現行勧告下での高い死亡率から、静脈内補液療法戦略を選択肢の1つとすることによるアウトカム改善への可能性が期待されていた。NEJM誌オンライン版2025年6月13日号掲載の報告。
アフリカの4ヵ国6病院で生後6ヵ月~12歳児対象の無作為化試験
研究グループは、アフリカの4ヵ国6病院(ウガンダ2、ケニア2、ニジェール1、ナイジェリア1)で、静脈内補液療法(急速または緩徐)が標準的な経口補液療法と比べて死亡率低下と結び付くかを評価する、治験担当医師主導の要因デザインを用いた多施設共同非盲検無作為化優越性試験を実施した。
胃腸炎かつ脱水症状を伴う重度急性栄養失調の生後6ヵ月~12歳児を、2対1対1の割合で次の3種類の補液戦略のいずれか1つを受けるよう割り付けた。(1)経口補液+ショックに対する静脈内ボーラス投与(経口群)、(2)乳酸リンゲル液100mL/kgを3~6時間で投与+ショックに対するボーラス投与(急速静注群)、(3)乳酸リンゲル液100mL/kgを8時間で投与(緩徐静注群)
主要エンドポイントは、96時間時点の死亡率であった。
96時間時点の死亡、経口群8%、静注群7%
2019年9月2日~2024年10月27日に計272例が無作為化された(経口群138例、急速静注群67例、緩徐静注群67例)。被験児の年齢中央値は生後13ヵ月であり、28日間追跡調査(最終フォローアップ)を受けた。4例(1%)が中途で脱落したが、全例をすべての解析に組み入れた。経鼻カテーテルを用いた補液が、経口群126/135例(93%)、静注群82/126例(65%)で行われた。ショックに対するボーラス投与が入院期間中に行われたのは経口群12例(9%)、急速静注群7例(10%)、緩徐静注群はなしであった。
96時間時点で死亡は、経口群11例(8%)、静注群9例(7%)(急速群5例[7%]、緩徐群4例[6%])で報告された(リスク比:1.02、95%信頼区間[CI]:0.41~2.52、p=0.69)。
28日時点における死亡は、経口群17例(12%)、静注群14例(10%)(急速群8例[12%]、緩徐群6例[9%])であった(ハザード比:0.85、95%CI:0.41~1.78)。
重篤な有害事象の発現は、経口群32例(23%)、急速静注群14例(21%)、緩徐静注群10例(15%)で報告された。肺水腫、心不全、体液過剰のエビデンスは認められなかった。
(ケアネット)