過体重または肥満を伴う2型糖尿病患者において、カロリー制限療法単独と比較してSGLT2阻害薬ダパグリフロジンと定期的なカロリー制限の併用は、大幅に高い糖尿病寛解率を達成し、体重減少やさまざまな代謝性リスク因子(体脂肪率、インスリン抵抗性指数[HOMA-IR]、収縮期血圧、空腹時血糖値、HbA1c値など)も有意に改善することが、中国・復旦大学のYuejun Liu氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2025年1月22日号に掲載された。
中国の無作為化プラセボ対照比較試験
研究グループは、2型糖尿病の寛解に及ぼすダパグリフロジン+カロリー制限療法の有効性の評価を目的に多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照比較試験を行い、2020年6月~2023年1月に中国の16の施設で患者を登録した(中国国家自然科学基金などの助成を受けた)。
年齢20~70歳の2型糖尿病(罹患期間6年未満)で、BMI値25以上、HbA1c値6.5~10%の患者328例を対象とした。これらの患者を、カロリー制限療法に加え、ダパグリフロジン(10mg/日)を投与する群(165例)、またはプラセボを投与する群(163例)に無作為に割り付けた。
主要アウトカムは、糖尿病の寛解(抗糖尿病薬の投与を2ヵ月以上受けておらず、HbA1c値<6.5%かつ空腹時血糖値<126mg/dL)とした。
全体の平均年齢は46.7歳、男性が218例(66%)で、平均BMI値は28.2、平均HbA1c値は7.3%であり、148例(45%)がベースラインでメトホルミンの投与を受けていた。介入期間中央値は、ダパグリフロジン群が9ヵ月(四分位範囲:4~12)、プラセボ群は12ヵ月(4~12)だった。
HDLコレステロール、トリグリセライドも改善
12ヵ月の時点での糖尿病寛解率は、プラセボ群が28%(46例)であったのに対し、ダパグリフロジン群は44%(73例)と有意に良好であった(リスク比:1.56[95%信頼区間[CI]:1.17~2.09]、p=0.002)。
また、副次アウトカムであるベースラインから最終受診時までの体重の変化量(ダパグリフロジン群-5.0[SD 4.5]kg vs.プラセボ群-3.2[3.8]kg、推定群間差:-1.3kg[95%CI:-1.9~-0.7]、p<0.001)およびHOMA-IRの変化量(-1.8 vs.-0.6、-0.8[-1.1~-0.4]、p<0.001)も、プラセボ群に比べ、ダパグリフロジン群で優れた。
同様に、体脂肪率の変化量(-2.1[SD 2.8]% vs.-1.4[3.4]%、-0.5%[95%CI:-0.9~0]、p=0.05)、収縮期血圧の変化量(-4.0[12.3]mmHg vs.-3.6[13.1]mmHg、-1.9mmHg[-3.0~-0.7]、p=0.002)、空腹時血糖値の変化量(-23.4[25.0]mg/dL vs.-13.8[29.1]mg/dL、-9.2mg/dL[-11.8~-6.7]、p<0.001)、HbA1c値の変化量(-1.0[1.0]% vs.-0.8[0.9]%、-0.2%[-0.3~-0.1]、p=0.003)のほか、HDLコレステロール値の変化量(4.8[6.9]mg/dL vs.2.3[6.2]mg/dL、1.3mg/dL[0.4~2.2]、p=0.003)、トリグリセライド値の変化量(-17.3[-62.0~7.1]mg/dL vs.-4.4[-35.4~20.4]mg/dL、-16.4mg/dL[-31.3~-1.6]、p=0.03)もダパグリフロジン群で良好だった。
軽度~中等度の有害事象の発現率は同程度
ダパグリフロジン群で重篤な有害事象が2例(1.2%、いずれも尿路感染症による入院)に発現した。試験期間中の死亡例はなく、軽度~中等度の有害事象の発現率は両群で同程度だった。
著者は、「これらの知見は、初期の2型糖尿病患者の寛解の達成において、強力な体重管理以外の新たな選択肢として、より実践的な戦略を提供するものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)