関節形成術の感染予防、バンコマイシン追加は有効か/NEJM

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/10/30

 

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の保菌が確認されていない関節形成術を受ける患者において、セファゾリンによる標準的な周術期抗菌薬予防投与にバンコマイシンを追加しても手術部位感染予防効果は改善しないことが示された。オーストラリア・モナシュ大学のTrisha N. Peel氏らが、多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Australian Surgical Antibiotic Prophylaxis trial:ASAP試験」の結果を報告した。現行ガイドラインでは、関節形成術における感染予防としてセファゾリンや第2世代セファロスポリン系抗菌薬の投与が推奨されているが、MRSAやメチシリン耐性表皮ブドウ球菌の感染は予防できない恐れがある。バンコマイシンの追加で手術部位感染が減少する可能性があるが、有効性および安全性は不明であった。NEJM誌2023年10月19日号掲載の報告。

術後90日以内の手術部位感染の発生を評価

 研究グループは、関節形成術を受ける18歳以上の患者で、MRSAの感染/コロニー形成が証明されていない、またはその疑いがない患者を、セファゾリンによる標準的な周術期抗菌薬予防投与に加えて、バンコマイシン1.5g(体重50kg未満の患者では1g)を静脈内投与する群(バンコマイシン群)または生理食塩水を投与する群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。

 有効性の主要アウトカムは、術後90日以内のすべての手術部位感染(表層切開創、深部切開創および臓器/体腔感染)の発生。安全性アウトカムは、急性腎障害、抗菌薬に対する過敏反応、180日死亡などであった。

 2019年1月15日~2021年10月29日に4,239例が無作為化された(新型コロナウイルス感染症の流行により手術が長期にわたり中断されたため、計画された4,450例の98.0%に当たる4,362例が登録された時点で試験終了となった)。

 4,239例中、割り付けられて手術を受けた4,113例(膝関節形成術2,233例、股関節形成術1,850例、肩関節形成術30例)が修正ITT集団に組み入れられた。

バンコマイシン上乗せの有効性は認められず、膝関節形成術ではむしろ感染が増加

 修正ITT集団4,113例において、手術部位感染はバンコマイシン群で2,044例中91例(4.5%)、プラセボ群で2,069例中72例(3.5%)に発生し、相対リスクは1.28(95%信頼区間[CI]:0.94~1.73、p=0.11)であった。

 膝関節形成術における手術部位感染の発生率は、バンコマイシン群5.7%(63/1,109例)、プラセボ群3.7%(42/1,124例)、相対リスクは1.52(95%CI:1.04~2.23)であった。一方、股関節形成術における手術部位感染の発生率はそれぞれ3.0%(28/920例)、3.1%(29/930例)、相対リスクは0.98(95%CI:0.59~1.63)であった。

 有害事象は、バンコマイシン群で2,010例中35例(1.7%)、プラセボ群で2,030例中35例(1.7%)に発現した。過敏反応はそれぞれ24例(1.2%)、11例(0.5%)(相対リスク2.20、95%CI:1.08~4.49)、急性腎障害は42例(2.1%)および74例(3.6%)(相対リスク0.57、95%CI:0.39~0.83)に認められた。

(ケアネット)