LBBB+正常房室伝導の心不全、adaptive CRT vs.従来型CRT/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2023/09/08

 

 左脚ブロックと正常房室伝導を有する心不全患者において、従来の心臓再同期療法(CRT)と比較し、左心室のみを刺激して自己の正常な右脚伝導と融合させる連続自動最適化(左心室同期刺激)のCRT(adaptive CRT)は、全死因死亡または非代償性心不全への治療介入の発生率を有意に低下させなかった。米国・クリーブランドクリニックのBruce L. Wilkoff氏らが、アジア、オーストラリア、欧州、北米の27ヵ国の227施設で実施された国際共同前向き単盲検無作為化試験「AdaptResponse試験」の結果を報告した。左脚ブロックと正常房室伝導を有する心不全患者において、adaptive CRTは従来の両室CRTより良好な結果をもたらす可能性があり行われた試験であったが、結果について著者は、「死亡率および心不全増悪はいずれのCRTでも低かったことから、本試験の患者集団は先行研究の患者集団よりCRTに対する反応が高いことが示唆される」と述べている。Lancet誌オンライン版2023年8月24日号掲載の報告。

全死因死亡または非代償性心不全に対する治療介入の複合アウトカムを評価

 研究グループは、左室駆出率35%以下、至適薬物療法にもかかわらずNYHA心機能分類II~IVの心不全症状を有し、左脚ブロックでQRS時間が男性140ms以上、女性130ms以上、ベースラインのPR間隔が200ms以下、登録時に洞調律の成人患者を、adaptive CRT(左室単独同期刺激を与えるアルゴリズム)群、または従来の両室CRT群に、コンピュータによるブロック法を用いて1対1の割合で無作為に割り付け追跡評価した。

 すべての患者は、CRTデバイスのプログラミングを受けたが、割り付けについては盲検化され、施設スタッフは盲検化されなかった。

 主要アウトカムは、全死因死亡および非代償性心不全に対する治療介入の複合で、intention-to-treat集団で評価した。有害事象についてもintention-to-treat集団で収集、報告された。

Adaptive CRTと従来型CRTで有意差なし

 2014年8月5日~2019年1月31日の期間に、患者3,797例が登録され、このうち3,617例(95.3%)が無作為に割り付けられた(adaptive CRT群1,810例、従来型CRT群1,807例)。本試験は、2022年6月23日の第3回中間解析の結果が、事前に設定された無益性の境界を越えたため早期中止となった。

 3,617例の患者背景は、平均(±SD)年齢64.9±11.0歳、女性1.568例(43.4%)、男性2,049例(56.6%)、追跡期間中央値は59.0ヵ月(四分位範囲[IQR]:45~72)であった。

 主要アウトカムのイベントは、adaptive CRT群で1,810例中430例(Kaplan-Meier法による60ヵ月時点の発生率23.5%、95%信頼区間[CI]:21.3~25.5)、従来型CRT群で1,807例中470例(25.7%、23.5~27.8)に認められ、両群間に有意な差はなかった(ハザード比[HR]:0.89、95%CI:0.78~1.01、p=0.077)。

 システム関連有害事象は、adaptive CRT群で1,810例中452例(25.0%)、従来型CRT群で1,807例中440例(24.3%)報告された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)