研究機関でのハラスメント、影響を受けやすいのは?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2023/06/19

 

 米国・ミシガン大学のReshma Jagsi氏らは、医学アカデミアに従事する教員にまつわる職場ハラスメント、サイバーインシビリティ(ネット上での敬意を欠いた非礼な言動)、組織風土がどのように変化しているかを調べる検討を行った。その結果、セクシャルハラスメント、サイバーインシビリティ、ネガティブな組織風土が高率に、とりわけマイノリティ集団を対象として存在し、メンタルヘルスに影響をもたらしていることを報告した。著者は、「医学アカデミアには、労働力の活力を損なう虐待行為を助長する可能性がある文化が存在する。引き続き医学アカデミアの文化を変える努力が必要である」と述べている。JAMA誌2023年6月6日号掲載の報告。

米国医学アカデミアの文化の変遷と教員メンタルヘルスとの関係性を調査

 研究グループは、2006~2009年に国立衛生研究所(NIH)キャリア開発助成金を受けた米国医学アカデミアの教員について、2021年にサーベイを行い、回答を得られた830人(回答率64%)を対象に、医学アカデミアの文化と教員のメンタルヘルス、および両者の関係性を調べた。

 多変数モデルを使用して、文化体験(組織風土、セクシャルハラスメント、サイバーインシビリティ)とメンタルヘルスとの関連性を調査。文化体験は、性別、人種・民族性(アジア人、医学界で過小評価されているグループ[アジア系または非ヒスパニック系白人以外の人種・民族として定義]、白人)、レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クィア(LGBTQ+)別に比較した。

 主要アウトカムは、3つの文化(組織風土、セクシャルハラスメント、サイバーインシビリティ)の影響とし、従前の開発ツールを用いて評価した。副次アウトカムはメンタルヘルスの評価で、5項目Mental Health Inventory(スコア範囲:0~100、高スコアほどメンタルヘルスは良好)を用いた。

職場ハラスメント、サイバーインシビリティ、差別的組織風土の存在が明らかに

 教員830人のうち、男性が422人、女性が385人、男女非分類2人、性別の特定なしが21人であった。また、169人がアジア人、66人が過小評価グループ、572人が白人と回答し、23人は人種・民族の回答がなかった。774人が、シスジェンダーおよびヘテロセクシャルと回答し、31人がLGBTQ+、25人が無回答だった。

 女性は男性と比べてネガティブに一般的な組織風土を評価した(平均3.68[95%信頼区間[CI]:3.59~3.77]vs.3.96[3.88~4.04]、p<0.001)。多様性の風土評価は、性別(女性の平均3.72[3.64~3.80]vs.男性4.16[4.09~4.23]、p<0.001)、人種・民族性(アジア人の平均4.0[3.88~4.12]、過小評価グループ3.71[3.50~3.92]、白人3.96[3.90~4.02]、p=0.04)で有意に差があった。

 また、女性は男性よりも、ジェンダーハラスメント(性差別な発言や粗暴な行為)を経験したとの回答が多かった(71.9%[95%CI:67.1~76.4]vs.44.9%[40.1~49.8]、p<0.001)。LGBTQ+回答者はシスジェンダーおよびヘテロセクシャル回答者と比べて、ソーシャルメディアを職業的に使用する場合、セクハラを受けたと報告する回答が多いようであった(13.3%[1.7~40.5]vs.2.5%[1.2~4.6]、p=0.01)。

 多変量解析で、3つの文化とジェンダーは、メンタルヘルスの副次アウトカムと有意に関連していた。

(ケアネット)

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コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏

東京都健康長寿医療センター

上智大学

大正大学

J-CLEAR評議員