広範囲脳梗塞にも24h以内の血管内治療が有効/NEJM

中国で行われた試験で、主幹動脈閉塞を伴う梗塞が大きい患者において、発症後24時間以内の血管内治療と薬物治療の併用は薬物治療のみと比較して、頭蓋内出血の発生は多かったものの3ヵ月後の機能予後は良好であった。中国・Beijing Tiantan HospitalのXiaochuan Huo氏らが、無作為化非盲検試験「ANGEL-ASPECT試験」の結果を報告した。日本で行われたRESCUE-Japan LIMITでは、ASPECTS(Alberta Stroke Program Early Computed Tomographic Score)が3~5の患者において血管内治療の有効性が示されていた。ANGEL-ASPECT試験も、従来の試験とは異なり大きな梗塞を有する急性期虚血性脳卒中患者における血管内治療の有効性の検証が目的であった。NEJM誌オンライン版2023年2月10日号掲載の報告。
ASPECTSが3~5、またはASPECTS 0~2かつ梗塞領域容積70~100mLの患者を対象
研究グループは、中国の46施設において、18~80歳、発症から24時間以内、NIHSSが6~30(範囲:0~42、スコアが高いほど神経学的症状の重症度が重い)、後ろ向きに評価した発症前のmRSスコアが0~1で、中大脳動脈(M1部、M2部)または内頸動脈(ICA)の主幹動脈閉塞が確認された患者を、最終健常確認から24時間以内に血管内治療(ステントリトリーバーまたは吸引システムによる血栓除去術、必要に応じてバルーン形成術、ステント留置、動脈内血栓溶解療法)+薬物治療群と薬物治療単独群に1対1の割合で無作為に割り付けた。画像所見の適格基準は、発症後24時間以内の非造影CTに基づくASPECTSが3~5(範囲:0~10、スコアが低いほど梗塞が大きい)、またはASPECTSが0~2かつ梗塞領域容積が70~100mL、とした。
主要アウトカムは90日後のmRSスコアで、90日後のmRSスコアの分布のずれについて仮定のない順序数解析によりウィルコクソン-マン・ホイットニー一般化オッズ比(OR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。副次アウトカムは90日後のmRSスコア0~2の割合、mRSスコア0~3の割合など、安全性の主要評価項目は無作為化後48時間以内の症候性頭蓋内出血(Heidelberg出血分類に基づく)などであった。
90日後のmRSスコアの分布は血管内治療群が良好
2020年10月2日~2022年5月18日の間に計456例が登録され、231例が血管内治療群に(うち1例は無作為化直後に同意を撤回したため、解析から除外)、225例が薬物治療単独群に割り付けられた。患者背景は年齢中央値68歳、女性が176例(38.7%)であった。両群とも約28%の患者に静脈内血栓溶解療法が行われた。事前に計画された第2回中間解析(2022年5月17日)において、血管内治療の有効性が認められたため、試験は早期中止となった。最終追跡調査日は2022年8月13日である。
90日後のmRSスコアの分布は、薬物治療単独群より血管内治療群が有意に良好であることを示していた(一般化OR:1.37、95%CI:1.11~1.69、p=0.004)。90日後のmRSスコア0~2の割合は血管内治療群30.0%、薬物治療単独群11.6%(相対リスク[RR]:2.62、95%CI:1.69~4.06)、mRSスコア0~3の割合はそれぞれ47.0%、33.3%(RR:1.50、95%CI:1.17~1.91)であった。
48時間以内の症候性頭蓋内出血は、血管内治療群で230例中14例(6.1%)、薬物治療単独群で225例中6例(2.7%)に認められた(RR:2.07、95%CI:0.79~5.41、p=0.12)。48時間以内のすべての頭蓋内出血はそれぞれ113例(49.1%)、39例(17.3%)に発生した。
(ケアネット)
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コメンテーター : 中川原 譲二( なかがわら じょうじ ) 氏
梅田脳・脊髄・神経クリニック 脳神経外科
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