院外心停止昏睡への酸素補給療法、制限的vs.非制限的/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2022/09/15

 

 院外心停止蘇生後昏睡の成人生存者に対する酸素補給療法について、動脈血酸素分圧(Pao2)の目標値を制限した場合と制限しない場合の死亡や重度障害、昏睡の発生率は、同等であることが示された。デンマーク・オーデンセ大学病院のHenrik Schmidt氏らが、789例を対象に行った無作為化比較試験の結果を報告した。これまで、院外心停止昏睡の生存者における人工呼吸器の適切な酸素目標値は明らかになっていなかった。NEJM誌オンライン版2022年8月27日号掲載の報告。

90日時点の全死因死亡・重度障害を有する退院・昏睡の複合アウトカムを比較

 試験は院外心停止昏睡の成人生存者を対象に、2×2要因デザイン法を用いて行われた。

 研究グループは被験者を1対1の割合で無作為に2群に割り付け、一方は、Pao2目標値を9~10kPa(68~75mmHg)に設定(制限的酸素値目標群)、もう一方は13~14kPa(98~105mmHg)に設定した(非制限的酸素値目標群)。また、血圧についても2種の目標値のいずれかに割り付けられ、その結果については別に報告した。無作為化は、入院後可能な限りすみやかに、通常はICUで行われた。酸素介入は無作為化後ただちに開始され、抜管まで続けられた。

 主要アウトカムは、無作為化後90日以内の全死因死亡、重度障害を伴う退院、昏睡(脳機能カテゴリー[CPC]:3~4、カテゴリー範囲は1~5で高値ほど障害が重度であることを示す)の複合だった。

 副次アウトカムは、48時間時点のニューロン特異的エノラーゼ値、90日時点の全死因死亡、モントリオール認知機能検査(Montreal Cognitive Assessment[MoCA])スコア(スコア範囲は0~30で高スコアほど認知機能は良好なことを示す)、修正Rankinスケールスコア(スコア範囲は0~6で高スコアほど障害が重度であることを示す)およびCPCだった。

主要アウトカム発生は両群ともに32~34%

 2017年3月~2021年12月に、デンマークの2つの3次心停止センターで無作為化を受け解析に包含された被験者は789例だった。

 主要アウトカムの発生は、制限的酸素値目標群394例中126例(32.0%)、非制限的酸素値目標群395例中134例(33.9%)だった(補正後ハザード比[aHR]:0.95、95%信頼区間[CI]:0.75~1.21、p=0.69)。

 90日時点で、死亡は制限的酸素値目標群113例(28.7%)、非制限的酸素値目標群123例(31.1%)だった。CPC値中央値は両群ともに1、修正Rankinスケールスコア中央値はそれぞれ2と1、MoCAスコア中央値は両群ともに27だった。48時間時点のニューロン特異的エノラーゼ値中央値は、それぞれ17μg/Lと18μg/Lだった。有害事象の発生率も、両群で同等だった。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)