VHL病の腎細胞がんにbelzutifanが有効/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2021/12/06

 

 フォン・ヒッペル-リンドウ(VHL)病はVHL遺伝子の生殖細胞系列の病的変異に起因するまれな常染色体性優性の遺伝性疾患で、良性または悪性の新生物と関連し、低酸素誘導因子2α(HIF-2α)の恒常的な活性化などにより生涯に患者の約70%が腎細胞がんを発症するという。米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのEric Jonasch氏らは、VHL病患者の腎細胞がん治療における第2世代分子標的薬のHIF-2α阻害薬belzutifan(MK-6482)の有用性について検討した(MK-6482-004試験)。その結果、本薬の有害事象は主にGrad1または2であり、VHL病関連の腎細胞がんだけでなく膵病変や網膜・中枢神経系の血管芽腫にも抗腫瘍活性を有することが示された。研究の成果は、NEJM誌2021年11月25日号に掲載された。

4ヵ国11施設の非盲検単群第II相試験

 本研究は、VHL病患者の腎細胞がんの治療におけるbelzutifanの有効性と安全性の評価を目的とする非盲検単群第II相試験であり、2018年5月~2019年3月の期間に4ヵ国(米国、デンマーク、フランス、英国)の11施設で患者の登録が行われた(Merck Sharp and Dohmeなどの助成を受けた)。

 対象は、年齢18歳以上、生殖細胞系列のVHL遺伝子異常に基づいてVHL病と診断され、少なくとも1個の測定可能な腎細胞がん(CTまたはMRIで最長腫瘍径≧10mm)を有し、パフォーマンスステータス(PS、ECOG基準)が0または1の患者であった。

 被験者は、belzutifan 120mg(40mg錠を3錠、1日1回、経口)の投与を受け、許容できない有害事象の発現または病勢が進行するまで継続された。

 主要エンドポイントは、VHL病関連腎細胞がん患者における客観的奏効(完全奏効または部分奏効)とされ、固形がん治療効果判定基準(RECIST ver. 1.1)に基づき、独立画像審査委員会による中央判定が行われた。腎細胞がん以外のがんを有する患者(網膜と中枢神経系の血管芽腫、膵病変[重度の嚢胞腺腫、神経内分泌腫瘍]など)における奏効と安全性の評価も実施された。

客観的奏効率49%、2年無増悪生存率96%

 61例が登録された。年齢中央値は41歳(範囲:19~66)、男性が32例(52%)で、50例(82%)はPS 0であった。膵病変が61例(100%)、中枢神経系の血管芽腫が50例(82%)、網膜血管芽腫が12例(20%)で認められた。59例(97%)が、1つ以上の腫瘍減量手技(例:腎部分切除術、開頭手術、凍結融解壊死治療)を受けていた。

 追跡期間中央値は21.8ヵ月(範囲:20.2~30.1)、投与期間中央値は21.7ヵ月(1.9~30.1)であり、データカットオフ日の時点で54例(89%)がbelzutifanの投与を継続していた。

 客観的奏効が得られた腎細胞がん患者は30例で、客観的奏効率は49%(95%信頼区間[CI]:36~62)であった。いずれも部分奏効で、完全奏効を達成した患者はいなかった。30例(49%)が安定と判定された。また、奏効までの期間中央値は8.2ヵ月(範囲:2.7~19.1)で、奏効期間中央値には未到達だった。

 56例(92%)で全標的病変径の合計の縮小が認められた。ほとんどの患者で、治療開始前には腫瘍の増大が進んでいたが、治療開始後はこれらの患者で最大腫瘍径の縮小が観察された。24ヵ月時の無増悪生存率は96%(95%CI:87~99)だった。

 膵病変を有する61例中47例(77%)で奏効が確認され、このうち6例(10%)は完全奏効であった。中枢神経系血管芽腫では、50例中15例(30%)で奏効が得られ、3例(6%)は完全奏効だった。また、ベースラインで網膜血管芽腫が見られた12例で評価が可能であった16眼では、すべて(100%)が改善と判定された。

 最も頻度の高い有害事象は貧血(90%)および疲労(66%)であった。7例が治療を中止し、このうち4例は患者の自発的な中止、1例は治療関連有害事象(Grade1のめまい)による中止、1例は担当医の評価で病勢進行と判定されたことによる中止であり、1例は死亡した(フェンタニルの急性毒性)。有害事象は全般にGrade1または2であり、Grade3は20例(33%)で報告された。

 著者は、「VHL病患者は、罹患臓器に生涯にわたって腫瘍が発生するリスクがあり、ほとんどの患者は生涯に数回の手術を受けており、これに伴い合併症が発生する。有効な全身療法が確立されれば、外科的な負担が軽減される可能性があり、臓器に限局したVHL病関連の新生物の管理における新たなアプローチとなるだろう」としている。

(医学ライター 菅野 守)