院内心停止、バソプレシン+メチルプレドニゾロンは有益か/JAMA

院内心停止患者において、バソプレシン+メチルプレドニゾロン投与はプラセボ投与と比較して自己心拍再開を有意に増大することが示された。しかしながら、本投与が長期生存にとって、有益なのか有害なのかは確認できなかったという。デンマーク・オーフス大学のLars W. Andersen氏らが、512例を対象に行った無作為化試験の結果を報告した。先行研究で、院内心停止へのバソプレシン+メチルプレドニゾロン投与は、アウトカムを改善する可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2021年9月29日号掲載の報告。
エピネフリン投与後に、最大4回まで投与
研究グループは、デンマークの10病院で、2018年10月15日~2021年1月21日に院内心停止が認められた成人患者512例を対象に、プラセボ対照無作為化二重盲検試験を行った。被験者を2群に分け、エピネフリン初回投与後に、初回投与として一方にはバソプレシン(20 IU)+メチルプレドニゾロン(40mg)を(245例)、もう一方にはプラセボを(267例)を投与した。その後、エピネフリン追加投与後に、バソプレシン+メチルプレドニゾロンまたはプラセボを、それぞれ最大4回まで投与した。追跡期間(90日間)の最終追跡日は2021年4月21日だった。
主要アウトカムは、自己心拍再開。副次アウトカムは、30日時点の生存および良好な神経学的アウトカム(脳機能カテゴリースコア1または2)などとした。
自己心拍再開、バソプレシン+メチルプレドニゾロン群42%、プラセボ群33%
無作為化を受けた512例のうち、適格条件を満たした501例を対象に解析した。平均年齢は71歳(SD 13)、男性の割合は64%だった。自己心拍再開が認められたのは、バソプレシン+メチルプレドニゾロン群100例(42%)、プラセボ群が86例(33%)だった(リスク比[RR]:1.30[95%信頼区間[CI]:1.03~1.63]、リスク差:9.6%[95%CI:1.1~18.0]、p=0.03)。
30日時点の生存は、バソプレシン+メチルプレドニゾロン群23例(9.7%)、プラセボ群31例(12%)だった(RR:0.83[95%CI:0.50~1.37]、リスク差:-2.0%[95%CI:-7.5~3.5]、p=0.48)。
30日時点の良好な神経学的アウトカムの達成例は、それぞれ18例(7.6%)、20例(7.6%)だった(RR:1.00[95%CI:0.55~1.83]、リスク差:0.0%[95%CI:-4.7~4.9]、p>0.99)。
自己心拍再開患者において、高血糖症の発症がバソプレシン+メチルプレドニゾロン群77例(77%)、プラセボ群63例(73%)で認められ、また高ナトリウム血症がそれぞれ28例(28%)、27例(31%)報告された。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)
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コメンテーター : 香坂 俊( こうさか しゅん ) 氏
慶應義塾大学 循環器内科 専任講師