2002~16年米国の医療費、人種・民族別で格差/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2021/08/26

 

 2002~16年の米国医療費は、年齢・健康状態調整後も人種・民族で異なり、総医療費は多人種系や白人が最も高かった。また、医療サービス別医療費についても人種・民族で差があり、白人は外来医療費が、黒人は入院や救急医療費が、全体平均に比べいずれも高かった。米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのJoseph L Dieleman氏らが、データベースを基に行った探査的研究で明らかにした。著者は、「さらなる研究で、COVID-19パンデミックに関連する支出などを含む現在の医療費を、人種・民族別に確認する必要がある」と述べている。JAMA誌2021年8月17日号掲載の報告。

4種のデータベースを基に検証

 研究グループは、米国内730万件の外来受診歴、入院歴、処方箋記録について「Medical Expenditure Panel Survey」(2002~16年)、「Medicare Current Beneficiary Survey」(2002~12年)を基に調べ、「National Health Interview Survey」(2002、2016年)による医療保険加入人口と推定症例数、「Disease Expenditure project」(1996~2016年)による推定医療費を統合し、米国における2002~16年の人種・民族別医療費の差を推定・検証した。

 主要アウトカムは、2002~16年の人種・民族別の米国内医療費で、総額・年齢標準化額を医療サービス別に推定した。また、2016年の主要疾患の人種・民族別医療費も求めた。人種・民族別医療費の差については、利用率と価格・ケアの程度別に検証した。

アジア系など、歯科以外の全タイプ医療費が平均を下回る

 2016年の本調査対象とした6タイプの医療サービス費は、推定2兆4,000億ドル(95%不確定性区間[UI]:2兆4,000億~2兆4,000億)だった。同年における年齢標準化後の1人当たり推定総医療費は、アメリカ先住民とアラスカ先住民(非ヒスパニック系)が7,649ドル(6,129~8,814)、アジア系、ハワイ先住民と太平洋諸島系(非ヒスパニック系)4,692ドル(4,068~5,202)、黒人7,361ドル(6,917~7,797)、ヒスパニック系6,025ドル(5,703~6,373)、その他複数人種系(非ヒスパニック系)9,276ドル(8,066~1万601)、白人(非ヒスパニック系)8,141ドル(8,038~8,258)だった。白人が全体医療費の72%を占めた。

 集団サイズおよび年齢で調整後、白人は外来医療費が、全体平均に比べ推定15%高かった(95%UI:13~17、p<0.001)。黒人(非ヒスパニック系)は、外来医療費は全体平均より推定26%低く(19~32、p<0.001)、一方で入院費は推定19%(3~32、p=0.02)、救急医療費は推定12%(4~24、p=0.04)、それぞれ高かった。ヒスパニック系は、1人当たりの外来医療費が全体平均より推定33%低く(26~37、p<0.001)、またアジア系、ハワイ先住民と太平洋諸島系(非ヒスパニック系)は歯科以外の全医療サービス分野で全体平均より医療費が低かった(すべてのp<0.001)。一方で、アメリカ先住民・アラスカ先住民(非ヒスパニック系)とその他の複数人種系(非ヒスパニック系)は、救急医療費が全体平均よりも推定でそれぞれ90%(11~165、p=0.04)、40%(19~63、p=0.006)高かった。

 人種・民族別の医療費で有意差が認められた18分野については、すべて利用率の違いと一致していた。こうした格差は、潜在的疾病負荷を補正しても持続していた。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)