tirzepatide、強力な血糖コントロール改善と減量効果/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2021/07/14

 

 tirzepatideは、グルカゴン様ペプチド(GLP)-1受容体とグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(GIP)受容体のデュアルアゴニストである。米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らは、「SURPASS-1試験」において、本薬はプラセボと比較して低血糖リスクを増加させずに血糖コントロールと体重の顕著な改善効果をもたらし、安全性プロファイルもGLP-1受容体作動薬と類似することを示した。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2021年6月25日号で報告された。

3用量を評価する第III相無作為化プラセボ対照試験

 本研究は、4ヵ国(インド、日本、メキシコ、米国)の52施設で行われた第III相二重盲検無作為化プラセボ対照試験であり、2019年6月~2020年10月の期間に参加者の登録が行われた(Eli Lilly and Companyの助成による)。

 対象は、年齢18歳以上、食事療法と運動療法だけではコントロール不良な2型糖尿病で、注射薬による治療を受けておらず、スクリーニング時に糖化ヘモグロビン(HbA1c)値が≧7.0%(53mmol/mol)~≦9.5%(80mmol/mol)で、BMI≧23、過去3ヵ月間の体重が安定している患者であった。

 被験者は、tirzepatide 5mg、同10mg、同15mgまたはプラセボを週1回皮下投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。投与期間は40週だった。

 主要エンドポイントは、ベースラインから40週までのHbA1c値の平均変化量とした。

 478例(平均年齢54.1歳、女性48%、平均罹患期間4.7年、平均HbA1c値7.9%[63mmol/mol]、平均BMI 31.9)が登録され、tirzepatide 5mg群に121例、同10mg群に121例、同15mg群に121例、プラセボ群には115例が割り付けられた。66例(14%)が試験薬の投与を中止し、50例(10%)は試験を中止した。

HbA1c値:1.87~2.07%低下、15%以上の体重減少:13~27%

 40週の時点で、tirzepatideのすべての用量群はプラセボ群に比べ、HbA1c値、空腹時血糖値、体重のベースラインからの変化量と、HbA1c目標値<7.0%(<53mmol/mol)およびHbA1c目標値<5.7%(<39mmol/mol)の達成割合が優れた。

 平均HbA1c値は、5mg群ではベースラインから1.87%(20mmol/mol)低下し、10mg群で1.89%(21mmol/mol)、15mg群で2.07%(23mmol/mol)低下したのに対し、プラセボ群は0.04%(0.4mmol/mol)増加しており、プラセボ群との治療間の平均差の推定値は、5mg群が-1.91%(-21mmol/mol)、10mg群が-1.93%(-21mmol/mol)、15mg群は-2.11%(-23mmol/mol)であった(いずれもp<0.0001)。

 空腹時血糖値は、5mg群ではベースラインから43.6mg/dL低下し、10mg群で45.9mg/dL、15mg群で49.3mg/dL低下したが、プラセボ群は12.9mg/dL上昇しており、プラセボ群との治療間の平均差の推定値は、5mg群が-56.5mg/dL(-3mmol/L)、10mg群が-58.8mg/dL(-3mmol/L)、15mg群は-62.1mg/dL(-3mmol/L)であった(いずれもp<0.0001)。

 HbA1c目標値<7.0%(<53mmol/mol)の達成割合は、3用量のtirzepatide群が87~92%、プラセボ群は19%であり(プラセボ群との比較で、すべての用量がp<0.0001)、HbA1c目標値≦6.5%(≦48mmol/mol)の達成割合は、それぞれ81~86%および10%であった(すべての用量でp<0.0001)。また、HbA1c目標値<5.7%(<39mmol/mol)の達成割合は、3用量のtirzepatide群が31~52%、プラセボ群は1%だった(すべての用量でp<0.0001)。

 tirzepatide群では、体重がベースラインから用量依存性に7.0~9.5kg減少したのに対し、プラセボ群では0.7kg減少した(すべての用量でp<0.0001)。15%以上の体重減少は、tirzepatide群では13~27%で達成されたが、プラセボ群は0%だった。

 tirzepatide群で頻度の高い有害事象として、軽度~中等度の一過性の消化器イベント(悪心[tirzepatide群12~18% vs.プラセボ群6%]、下痢[12~14% vs.8%]、嘔吐[2~6% vs.2%])が認められた。臨床的に重大な低血糖(<54mg/dL[<3mmol/L])および重症低血糖は、tirzepatide群では報告されなかった。プラセボ群で1例が心筋梗塞で死亡した。

 著者は、「本薬は、ほぼ正常値範囲に達する強力な血糖降下作用と、これまでに報告がないほど確固とした減量効果を示した」とまとめ、「2型糖尿病の単剤療法の選択肢となる可能性がある」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 栗山 哲( くりやま さとる ) 氏

東京慈恵会医科大学客員教授