低リスク前立腺がん、監視療法の転帰に人種は影響するか/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/11/13

 

 監視療法を受けた低リスク前立腺がん患者について、アフリカ系米国人は非ヒスパニック系白人と比較して、病勢進行および根治的治療の10年累積発生率が統計学的に有意に増加したが、転移または前立腺がん特異的死亡率は増加しなかった。米国・VHA San Diego Health Care SystemのRishi Deka氏らが、後ろ向きコホート研究(追跡調査期間中央値7.6年)で明らかにした。これまでの研究で、低リスク前立腺がんのアフリカ系米国人は、非ヒスパニック系白人に比べ進行性の疾患が隠れている可能性が懸念されるとして、監視療法が安全な選択肢であるかは不明であった。JAMA誌2020年11月3日号掲載の報告。

低リスク前立腺がん患者約9,000例を、中央値7.6年追跡

 研究グループは、米国の国立退役軍人保健局(VHA)において、2001年1月1日~2015年12月31日の期間に低リスク前立腺がんと診断され、監視療法で管理されたアフリカ系米国人および非ヒスパニック系白人を対象に、後ろ向きコホート研究を実施した。最終追跡調査日は2020年3月31日。

 監視療法は、診断後の最初の1年以内に根治的治療を行わず、少なくとも1回の追加生検の実施と定義した。

 主要評価項目は、中間リスク以上への進行、根治的治療、転移、前立腺がん特異的死亡、および全死因死亡であった。

 解析対象は全体で8,726例、アフリカ系米国人が2,280例(26.1%)(年齢中央値63.2歳)、非ヒスパニック系白人が6,446例(73.9%)(65.5歳)で、追跡期間中央値は7.6年(四分位範囲:5.7~9.9、範囲:0.2~19.2)であった。

アフリカ系米国人で、病勢進行と根治的治療の10年累積発生率が有意に高い

 アフリカ系米国人と非ヒスパニック系白人における各評価項目の10年累積発生率は、病勢進行が59.9% vs.48.3%(群間差:11.6%、95%信頼区間[CI]:9.2~13.9、p<0.001)、根治的治療が54.8% vs.41.1%(13.4%、11.0~15.7、p<0.001)で有意差が認められた。

 一方、転移は1.5% vs.1.4%(0.1%、-0.4~0.6、p=0.49)、前立腺がん特異的死亡は1.1% vs.1.0%(0.1%、-0.4~0.6、p=0.82)、全死因死亡は22.4% vs.23.5%(1.1%、-0.9~3.1、p=0.09)で有意差はみられなかった。

 著者は、転移の臨床評価の方法や時期が事前定義されていないなど、研究の限界があると述べたうえで、「死亡リスクを明確に評価するためには、より長期の追跡調査が必要である」とまとめている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)