夜間低酸素血症のCOPDへの長期夜間酸素療法は有効か/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/09/30

 

 カナダ・ラヴァル大学のYves Lacasse氏らINOX試験の研究グループは、夜間に動脈血酸素飽和度低下を認めるものの長期酸素療法の適応ではない慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者において、長期夜間酸素療法の有用性を評価した。試験は、患者の登録が継続できず早期中止となったため検出力が不十分であり、長期夜間酸素療法の有効性に関して結論は得られなかった。COPDを有し、慢性的に日中に重度低酸素血症を呈する患者では、長期酸素療法により生存率が改善する。しかしながら、夜間のみの低酸素血症の管理における酸素療法の有効性は知られていない。研究の詳細は、NEJM誌2020年9月17日号に掲載された。

4ヵ国28施設が参加したプラセボ対照無作為化試験

 本研究は、4ヵ国(カナダ、ポルトガル、スペイン、フランス)の28施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化試験であり、2010年11月~2015年1月の期間に患者登録が行われた(カナダ国立保健研究機構の助成による)。

 対象は、喫煙歴のあるCOPDで、試験登録の少なくとも6週間前には病態が安定し、6ヵ月以上は喫煙しておらず、夜間酸素飽和度が低下した患者であった。夜間酸素飽和度低下は、夜間パルスオキシメトリーによる記録時間(就寝時)の30%以上が酸素飽和度(Spo2)90%未満であることと定義された。試験登録時に、Nocturnal Oxygen Therapy Trial(NOTT)の判定基準で長期酸素療法の適応となる可能性が高い患者は除外された。

 被験者は、在宅夜間酸素療法を受ける群または偽酸素濃縮器から室内空気を吸入する群(プラセボ群)に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要アウトカムは、intention-to-treat(ITT)集団における全死因死亡またはNOTT基準で長期酸素療法の適応の複合とした。

 計画されていた600例のうち243例が無作為割り付けされた時点で、患者の募集とその継続が困難となったため、募集は中止された。

3年時の主要アウトカム:39.0% vs.42.0%

 夜間酸素療法群に123例(平均年齢69±8歳、男性65.9%)、プラセボ群には120例(69±9歳、64.2%)が割り付けられた。192例(79.0%)が、試験登録時の2回の夜間パルスオキシメトリー検査で夜間酸素飽和度低下の基準を満たした。

 3年間で53例(夜間酸素療法群27例、プラセボ群26例)が介入を中止し、4年までにさらに3例(2例、1例)が中止した。

 フォローアップ期間3年の時点で、ITT集団におけるNOTTの長期酸素療法適応基準を満たすか死亡した患者の割合は、夜間酸素療法群が39.0%(48/123例)、プラセボ群は42.0%(50/119例)であった(群間差:-3.0ポイント、95%信頼区間[CI]:-15.1~9.1、p=0.64)。

 また、フォローアップ期間4年の時点でのtime-to-event解析では、NOTTの長期酸素療法適応基準を満たすか死亡した患者の割合は、夜間酸素療法群が47.5%(57/120例)、プラセボ群は54.0%(61/113例)であった(群間差:-6.5ポイント、95%CI:-18.9~5.9、ハザード比[HR]:0.87、95%CI:0.61~1.25、p=0.44)。死亡(HR:0.98、95%CI:0.60~1.63)およびNOTTの長期酸素療法適応基準に適合(0.87、0.57~1.34)のいずれにも両群間に差はなかった。

 COPDの急性増悪や全原因による入院、QOLの経時的な変化にも、両群間に差は認められなかった。また、試験期間中に、介入の直接的な関与による重篤な有害事象の報告はなかった。

 著者は、「データの信頼区間が広いことは、酸素療法の有益性を排除するものではないが、本試験単独および既報の他試験の結果を合わせて検討しても、夜間酸素療法の明確な臨床的有益性は示されていない」としている。

(医学ライター 菅野 守)