PCI後、CYP2C19 LOFアレルに基づく薬剤選択vs.標準治療/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/09/04

 

 急性冠症候群(ACS)または安定冠動脈疾患(CAD)で経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けたCYP2C19*2/*3機能喪失型(loss-of-function:LOF)アレルの保有者において、遺伝子検査に基づき経口P2Y12阻害薬を選択する治療戦略は、遺伝子検査なしの従来のクロピドグレル療法と比較し、心血管死・心筋梗塞・脳卒中・ステント血栓症・重度虚血再発の複合エンドポイントに関して、統計学的な有意差を示さなかった。米国・メイヨー・クリニックのNaveen L. Pereira氏らが、無作為化非盲検比較試験「TAILOR-PCI試験」の結果を報告した。PCI後にクロピドグレルによる治療を受けたCYP2C19 LOFアレル保有者は、虚血性イベントリスクが高まることが示されている。遺伝子型に基づく経口P2Y12阻害薬の選択によりアウトカムが改善するかどうかは不明であった。JAMA誌2020年8月25日号掲載の報告。

PCI後のACSまたは安定CAD患者約5,300例を無作為化

 研究グループは2013年5月~2018年10月に、米国、カナダ、韓国、メキシコの40施設において、PCIを施行したACSまたは安定CAD患者5,302例を登録し、遺伝子型ガイド群または従来治療群に1対1に無作為に割り付け、2019年10月まで追跡した。

 遺伝子型ガイド群(2,652例)では遺伝子検査を実施し、CYP2C19 LOFアレル保有者にはチカグレロルを、非保有者にはクロピドグレルを投与した。従来治療群(2,650例)にはクロピドグレルを投与し、12ヵ月後に遺伝子検査を行った。

 主要評価項目は、12ヵ月時点の心血管死・心筋梗塞・脳卒中・ステント血栓症・重度虚血再発の複合エンドポイント、副次評価項目は、12ヵ月時点の大出血または小出血であった。主要解析はCYP2C19 LOFアレル保有者を解析対象とし、副次解析には無作為化された全患者を組み込んだ。

CYP2C19 LOFアレル保有者で、有効性および出血の発現に有意差なし

 無作為化された患者5,302例(年齢中央値62歳、女性25%)のうち、82%がACS、18%が安定CADで、94%が試験を完遂した。また、CYP2C19 LOFアレル保有者は1,849例であり、12ヵ月時点で、遺伝子型ガイド群は903例中764例(85%)がチカグレロルを、従来治療群は946例中932例(99%)がクロピドグレルの投与を受けていた。

 12ヵ月時点の主要評価項目のイベント発現は、遺伝子型ガイド群のCYP2C19 LOFアレル保有者で903例中35例(4.0%)、従来治療群で946例中54例(5.9%)に認められた(ハザード比[HR]:0.66、95%信頼区間[CI]:0.43~1.02、p=0.06)。

 12ヵ月時点の大出血または小出血の発現率は、遺伝子型ガイド群のCYP2C19 LOFアレル保有者1.9%、従来治療群1.6%で有意差はなかった(HR:1.22、95%CI:0.60~2.51、p=0.58)。そのほか事前に定義された副次評価項目11項目についても両群で有意差はなかった。

 無作為化された全患者では、主要評価項目のイベント発現は、遺伝子型ガイド群2,641例中113例(4.4%)、従来治療群2,635例中135例(5.3%)で有意差はなかった(HR:0.84、95%CI:0.65~1.07、p=0.16)

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 中川 義久( なかがわ よしひさ ) 氏

滋賀医科大学 循環器内科 教授

J-CLEAR評議員