降圧による認知症・認知機能障害の予防的効果/JAMA

降圧薬を服用し血圧を下げることと、認知症や認知機能障害の発生リスクの有意な低下が関連していることが明らかにされた。アイルランド・Galway国立大学・Saolta大学病院グループのDiarmaid Hughes氏らが、無作為化比較試験14件・被験者総数9万6,158例を対象にしたシステマティック・レビューとメタ解析の結果で、JAMA誌2020年5月19日号で発表した。これまで、認知症や認知機能障害に対する降圧の予防的効果は不明であった。
システマティック・レビューとメタ解析で認知症・認知機能障害のリスクを検証
研究グループは、PubMed、EMBASE、CENTRALにおいて、血圧低下と認知機能アウトカムの関連を検証した2019年12月31日までに発表された無作為化比較試験を検索し、システマティック・レビューとメタ解析を行った。対象とした試験では、対照群に対してはプラセボや別の降圧薬を投与、またはより高い血圧目標値を設定されていた。研究者2人がそれぞれデータを検証して抽出。ランダム効果メタ解析モデルを用いて、統合治療効果と信頼区間(CI)を算出し評価した。
主要アウトカムは、認知症または認知機能障害とし、副次アウトカムは、認知機能低下、認知試験スコアの変化とした。
14試験9万6,158例を包含、追跡期間は平均4.1年
適格条件を満たした無作為化比較試験は14件で、被験者総数は9万6,158例だった。被験者の平均年令は69(SD 5.4)歳、また女性は42.2%(4万617例)、平均収縮期血圧値は154(SD 14.9)mmHg、平均拡張期血圧値は83.3(SD 9.9)mmHgであり、平均追跡期間は49.2ヵ月だった。14試験のうち、認知症発生率または認知症・認知機能障害発生率を報告した12試験(被験者総数9万2,135例、追跡期間平均4.1年)を包含し、主要アウトカムに関するメタ解析を行った。副次的アウトカムの認知機能低下を報告した試験は8件、認知試験スコアの変化も8件が報告されていてそれぞれ解析を行った。
認知症や認知機能障害の発生リスクは、対照群7.5%に対し、降圧群は7.0%と有意なリスク低下が認められた(オッズ比[OR]:0.93[95%CI:0.88~0.98]、絶対リスク低下:0.39%[95%CI:0.09~0.68]、I2=0.0%)。
認知機能低下発生率について報告した8試験(追跡期間平均4.1年)の解析では、対照群21.1%に対し、降圧群は20.2%と有意なリスク低下が認められた(OR:0.93[95%CI:0.88~0.99]、絶対リスク低下:0.71%[95%CI:0.19~1.2]、I2=36.1%)。
なお降圧と認知試験スコアの変化には、有意な関連は認められなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)
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降圧治療と認知症や認知機能障害の発症の関連―システマティックレビュー、メタ解析(解説:石川讓治氏)-1245
コメンテーター : 石川 讓治( いしかわ じょうじ ) 氏
東京都健康長寿医療センター 循環器内科 専門部長
J-CLEAR推薦コメンテーター