頸動脈狭窄症への経頸動脈血行再建、経大腿動脈と比較/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2020/01/10

 

 頸動脈狭窄症の治療において、経頸動脈血行再建術(transcarotid artery revascularization:TCAR)は経大腿動脈アプローチによるステント留置術と比較し、脳卒中または死亡のリスクが有意に低いことが示された。米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのMarc L. Schermerhorn氏らが、TCARと経大腿動脈ステント術の転帰を傾向スコアマッチング法により比較した解析結果を報告した。従来の経大腿動脈アプローチによる頸動脈ステント術は、頸動脈内膜剥離術と比較して周術期脳卒中の発生率が高いことがいくつかの試験で観察されていた。一方、TCARは2015年に開発されたリバースフローシステムによる新しい頸動脈ステント術で、経大腿動脈アプローチとは対照的に、頸動脈に直接アクセスすることによって大動脈弓でのカテーテル操作を回避し、標的病変操作前の頸動脈から大腿静脈への体外動静脈シャントによって脳を保護する。TCARは経大腿動脈アプローチによる脳卒中リスクを減少させるために開発されたが、経大腿動脈ステント術と比較した場合のアウトカムはよくわかっていなかった。JAMA誌2019年12月17日号掲載の報告。

傾向スコアマッチング法でTCARと経大腿動脈ステント術のアウトカムを比較
 研究グループは、2016年9月~2019年4月に米国およびカナダでTCARまたは経大腿動脈ステント術を受けた無症候性/症候性の頸動脈狭窄症患者を前向きに登録したVascular Quality Initiative Transcarotid Artery Surveillance ProjectおよびCarotid Stent Registryのデータ(追跡期間終了日2019年5月29日)を用い、傾向スコアマッチング解析を実施した。

 主要評価項目は、院内脳卒中(同側または反対側、皮質または椎骨脳底、虚血性または出血性脳卒中と定義)/死亡、脳卒中、死亡(全死因死亡)、心筋梗塞、ならびに1年時点の同側脳卒中または死亡の複合エンドポイントであった。

 研究期間中の登録患者はTCARが5,251例、経大腿動脈ステント術が6,640例で、傾向スコアマッチングにより抽出されたそれぞれ3,286例が解析対象となった。TCAR群は平均(±SD)年齢71.7±9.8歳、女性35.7%、経大腿動脈ステント術群は同71.6±9.3歳、女性35.1%であった。

院内脳卒中/死亡、脳卒中および死亡のリスクはTCARが有意に低い
 院内脳卒中/死亡はTCAR群1.6%vs.経大腿動脈ステント術群3.1%で、絶対差は-1.52%(95%信頼区間[CI]:-2.29~-0.75)、相対リスク(RR)は0.51(95%CI:0.37~0.72)(p<0.001)であった。脳卒中は1.3% vs.2.4%(絶対差:-1.10%[95%CI:-1.79~-0.41]、RR:0.54[95%CI:0.38~0.79]、p=0.001)、死亡は0.4% vs.1.0%(-0.55%[-0.98~-0.11]、0.44[0.23~0.82]、p=0.008)で、いずれもTCAR群で有意にリスクが低下した。
 周術期心筋梗塞については、両群間で統計学的有意差は確認されなかった(0.2% vs.0.3%、絶対差:-0.09%[95%CI:-0.37~0.19]、RR:0.70[0.27~1.84]、p=0.47)。Kaplan-Meier法による1年時点の同側脳卒中または死亡は、TCARで有意にリスクが低下した(5.1% vs.9.6%、ハザード比:0.52[95%CI:0.41~0.66]、p<0.001)。

 TCARでは、治療を要するアクセス部位合併症のリスクが高かったが(1.3% vs.0.8%、絶対差:0.52%[95%CI:-0.01~1.04]、RR:1.63[95%CI:1.02~2.61]、p=0.04)、術中放射線照射時間(中央値5分[IQR:3~7]vs.16分[11~23]、p<0.001)は短く、造影剤使用量(中央値30mL[IQR:20~45]vs.80 mL[55~122]、p<0.001)は少なかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)