低~中所得国の高血圧ケア、その継続性は?/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/08/05

 

 低~中所得国(LMIC)では、高血圧ケアを継続中の患者が、どの段階でケアを受けなくなるかに関する全国調査のエビデンスが少ない。一方、この情報は、保健医療サービス介入の効果的な対象の設定や、高血圧ケアの改善の進展評価において重要だという。米国・ハーバード公衆衛生大学院のPascal Geldsetzer氏らは、LMICにおける高血圧ケアの中断の現況を調査・評価し、Lancet誌オンライン版2019年7月18日号で報告した。

44のLMICで4段階の高血圧ケアカスケードを評価
 研究グループは、44ヵ国のLMICにおいて、ケアの過程(ケアの必要性から治療の成功まで)の個々の段階でその消失を評価することにより、4段階の高血圧ケアカスケード(血圧測定、高血圧の診断、治療、高血圧コントロール)の達成状況を、国別および集団別に検討する目的で、横断研究を実施した(Harvard McLennan Family Fundなどの助成による)。

 最新のWHO Stepwise Approach to Surveillance(STEPS)などのデータセットを用いて、44のLMICにおける2005年以降の個人レベルの集団ベースのデータを収集し、統合した。国別および4地域別(中南米/カリブ海、欧州/地中海東岸、東南アジア/西太平洋、サハラ以南のアフリカ)に解析を行った。

 高血圧は、血圧が140/90mmHg以上、または高血圧の薬物療法の報告があることとした。高血圧患者のケアカスケードとして、(1)かつて血圧測定を受けた、(2)高血圧と診断された、(3)高血圧で治療を受けた、(4)高血圧のコントロールが達成された者の割合を算出した。

 これらの高血圧ケアカスケードを、年齢、性別、教育、世帯収入、BMI、喫煙状況、国、地域別に評価した。線形回帰モデルを用いて、各カスケードの段階別に、1人当たり国内総生産(GDP)に基づく国のパフォーマンスを推定することで、パフォーマンスが95%予測区間(prediction interval)の範囲外の国を同定した。

血圧測定73.6%、診断39.2%、治療29.9%、コントロール10.3%
 110万507例(年齢中央値39.5歳[範囲34.8~44.5]、女性割合中央値58.2%[53.2~62.5])が解析の対象となった。このうち19万2,441例(17.5%)が高血圧であった。

 高血圧患者のうち、73.6%(95%信頼区間[CI]:72.9~74.3)が血圧測定を受けたことがあり、39.2%(38.2~40.3)が調査以前に高血圧と診断されており、29.9%(28.6~31.3)が治療を受け、10.3%(9.6~11.0)で高血圧のコントロールが達成されていた。

 中南米/カリブ海地域は、4つのケアカスケードすべての割合が最も高く、サハラ以南のアフリカは4つすべてが最も低かった。高血圧コントロールの達成率が5%未満の国の割合は、サハラ以南のアフリカ地域が16ヵ国中10ヵ国(63%)であったのに対し、東南アジア/西太平洋地域は8ヵ国中3ヵ国(38%)、欧州/地中海東岸地域は10ヵ国中1ヵ国(10%)、中南米/カリブ海は10ヵ国中0ヵ国(0%)だった。

 4つのすべてのケアカスケードの達成が、調査年の1人当たりGDPに基づく予測値を実質的に上回っていたのは、バングラデシュ、ブラジル、コスタリカ、エクアドル、キルギス、ペルーであった。これに対し、4つのカスケードがすべて予測値を有意に下回っていたのは、アルバニア、インドネシア、タンザニア、ウガンダ、南アフリカ共和国だった。

 女性、年齢が高い、調査時に非喫煙、世帯収入が多いことは、単変量および多変量解析の双方で、4つのケアカスケードの達成と正の相関を示した。また、学歴が高いことは、多変量解析において4つのケアカスケードの達成との関連が認められた。

 著者は、「今回の研究は、LMICにおける高血圧の保健医療の施策やサービスの計画および対象設定に関して、重要なエビデンスをもたらす」とし、「LMICの中には他のLMICに比べ実質的に高血圧ケアカスケードの達成が良好な国が存在する理由や、異なる環境でケアカスケードを最も効果的に改善する方策を知るには、さらなる研究が求められる」と指摘している。

(医学ライター 菅野 守)