うつ病に対するtDCS療法 vs.薬物療法/NEJM

うつ病治療として、経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct-current stimulation:tDCS)療法の選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)エスシタロプラム(商品名:レクサプロ)に対する非劣性は示されず、有害事象はより多かったことが、ブラジル・サンパウロ大学のAndre R. Brunoni氏らによる単施設の二重盲検無作為化非劣性試験の結果、報告された。大うつ病障害治療としての電気刺激療法は、2009年に経頭蓋磁気刺激(TMS)が米国FDAに承認され、さまざまな試験で異なる結果が報告されている。TMSは、けいれんリスクは小さいがコスト高であり、より安価で安全な手法としてtDCSが開発されたが、これまでに同法と薬物療法を直接比較する試験は行われていなかった。NEJM誌2017年6月29日号掲載の報告。
tDCS療法 vs.エスシタロプラム vs.プラセボで直接比較
研究グループは、サンパウロ大学関連施設にて2013年10月~2016年7月に、単極性うつ病の成人患者を集めて試験を行った。被験者を3群に3対3対2の割合で無作為に割り付けて、それぞれtDCS療法+プラセボ経口薬(tDCS群)、シャムtDCS療法+エスシタロプラム(エスシタロプラム群)、シャムtDCS療法+プラセボ経口薬(プラセボ群)を投与した。tDCS療法は、前頭葉前部に2mAの直流電気刺激を1日30分(1セッション)、計22セッション行うというもので、最初の15セッションは週末を除く平日に連続実施し、その後7セッションは週に1回のペースで行った。エスシタロプラムは、10mg/日を3週間投与し、その後は20mg/日の用量で投与した。
主要評価項目は、17項目のハミルトンうつ病評価尺度(HDRS-17)スコア(範囲0~52:高スコアほどうつ病がより重度であることを示す)の変化とした。測定はベースライン、3週、6週、8週、10週時点で行った。
tDCSのエスシタロプラムに対する非劣性は、スコア低下の差に関する信頼区間(CI)の下限値で判定。同値が、プラセボ群とエスシタロプラム群の差の50%以上の値で示されることとした。
tDCSのエスシタロプラムに対する非劣性は示されず
計245例が無作為に割り付けられた(tDCS群94例、エスシタロプラム群91例、プラセボ群60例)。intention-to-treat解析において、ベースラインから低下したスコアの平均(±SD)点は、tDCS群9.0±7.1点、エスシタロプラム群11.3±6.5点、プラセボ群5.8±7.9点であった。
スコア低下のプラセボ群とエスシタロプラム群の差は-5.5点であった。tDCS群とエスシタロプラム群の差は-2.3点(95%CI:-4.3~-0.4、p=0.69)であり、CI下限値(-4.3)が事前規定の非劣性マージン(-5.5点の50%値:-2.75)よりも低く、tDCSのエスシタロプラムに対する非劣性は示されなかった。
なお、tDCS群とエスシタロプラム群の対プラセボ群の差は、それぞれ3.2点(95%CI:0.7~5.5、p=0.01)、5.5点(同:3.1~7.8、p<0.001)で、いずれもプラセボ群に対する優越性は示された。
有害事象は、皮膚の発赤、耳鳴り、神経過敏の発現率がtDCS群で他の2群よりも高かった。また、tDCS群でのみ躁病の新規発症が2例報告された。エスシタロプラム群では眠気と便秘が他の2群よりも多く認められた。
(ケアネット)
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コメンテーター : 岡村 毅( おかむら つよし ) 氏
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