直腸がん、局所切除術 vs.TME/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2017/06/15

 

 Stage T2T3で腫瘍サイズが4cm以下、術前化学放射線療法反応性だった下部直腸がん患者について、直腸間膜全切除術(TME:total mesorectal excision)に対する局所切除術の優越性は示されなかった。2年後の臨床的アウトカムは両群で同等だった。フランス・Haut-Leveque HospitalのEric Rullier氏らが145例を対象に行った、第III相の非盲検前向き無作為化比較試験「GRECCAR2」(Organ preservation for rectal cancer)の結果で、Lancet誌オンライン版2017年6月7日号に掲載された。

残存腫瘍サイズ2cm以下の患者を対象に試験
 研究グループは2007年3月1日~2012年9月24日にかけて、直腸がん専門医のいるフランスの3次医療施設15ヵ所で、Stage T2T3の下部直腸がんで最大腫瘍サイズは4cm、術前化学放射線療法に対して良好な臨床的反応を示し、残存腫瘍サイズが2cm以下の18歳以上の患者を対象に試験を行った。

 被験者を無作為に2群に分け、一方の群は局所切除術を、もう一方の群はTMEを行った。なお、局所切除群で最大浸潤径T2-3の場合には、TMEを行った。

 主要エンドポイントは、無作為化後2年時点の複合アウトカム(死亡、再発、Clavien-Dindo分類III~Vの外科合併症罹患率、重度合併症)で、局所切除術のTMEに対する優越性を評価した(優越性を示す期待発生率は局所切除群25% vs.TME群60%)。

エンドポイント発生率、局所切除群56%、TME群48%と同程度だが
 試験には186例が登録され、良好な臨床反応を示した148例が無作為化を受けた。そのうち3例は除外となり(転移、腫瘍径>8cm、同意取り下げによる)、解析には145例が含まれた(局所切除群74例、TME群71例)。

 結果として局所切除群のうち、26例にTMEが施行された。

 術後2年の修正ITT集団の解析では、主要複合アウトカムの発生率は、局所切除群56%(41/73例)、TME群48%(33/69例)で有意差は示されなかった(オッズ比:1.33、95%信頼区間:0.62~2.86、p=0.43)。

 この結果について著者は、局所切除群の多くにTMEを実施したため、外科合併症罹患率や重度合併症発生率が増加し、優越性を示すことができなかったと考察。そのうえで、患者の選択条件を改善することで、局所切除はより効果的な治療戦略となり得る可能性があるとまとめている。

(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)