早期リウマチへのトシリズマブ、単独・MTX併用でも寛解維持2倍/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2016/06/17

 

 新たに関節リウマチ(RA)と診断された患者において、メトトレキサート(商品名:リウマトレックスほか、MTX)併用の有無を問わず、ただちにトシリズマブ(商品名:アクテムラ)の投与を開始し寛解維持を目指す治療戦略は、より効果的であることが示された。安全性プロファイルは現在の標準治療であるMTXと類似していた。オランダ・ユトレヒト大学メディカルセンターのJohannes W J Bijilsma氏らが、トシリズマブの単独またはMTXとの併用療法の有効性と安全性を、MTX単独療法と比較したU-Act-Early試験の結果、報告した。早期RA患者にとって、治療の目標は速やかな持続的寛解を得ることだが、目標達成に向けた治療戦略の検討はされていなかった。Lancet誌オンライン版2016年6月7日号掲載の報告。

トシリズマブの単独またはMTX併用療法とMTX単独療法の寛解維持達成を比較
 U-Act-Early試験は、MTXとの併用または単独でのトシリズマブの有効性と安全性を、MTX単独療法と比較する、2年間の多施設共同無作為化二重盲検比較試験。オランダのリウマチ外来21施設で実施された。

 対象は、1年以内にRAと診断され、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)の治療歴がなく、疾患活動性スコア(DAS28)が最低2.6の18歳以上の患者であった。

 被験者は、トシリズマブ+MTX(併用)群、トシリズマブ+プラセボ(トシリズマブ)群、プラセボ+MTX(MTX)群に1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。トシリズマブは4週ごとに8mg/kg(最大800mg)静脈投与、MTXは10mg/週経口投与より開始し、4週ごとに5mgずつ、最大30mg/週まで増量し、寛解または用量制限毒性が現れるまで継続した。割り付けた治療で寛解に至らない場合は、プラセボは実薬に、併用群は標準治療(MTX+TNF阻害薬併用)に変更した。

 主要評価項目は、寛解維持(腫脹関節数≦4かつDAS28<2.6が最低24週持続)を得られた患者の割合であった。

寛解維持達成はトシリズマブ単独84%、併用86%、MTX単独44%
 2010年1月13日~2012年7月30日に適格とされた患者317例が登録された(併用群106例、トシリズマブ群103例、MTX群108例)。試験を完了した患者の割合は72~78%で、3群間で類似していた。中途脱落理由で最も多かったのは、有害事象または他疾患を併発27例(34%)、効果不十分26例(33%)であった。

 最初の割り付け治療での寛解維持達成は、併用群91例(86%)、トシリズマブ群86例(84%)、MTX群48例(44%)で得られた。相対リスクは、併用群 vs.MTX群が2.00(95%信頼区間[CI]:1.59~2.51、p<0.0001)、トシリズマブ群 vs.MTX群1.86(同:1.48~2.32、p<0.0001)であった。

 また、全治療における寛解維持達成は、併用群91例(86%)、トシリズマブ群91例(88%)、MTX群83例(77%)であった。相対リスクは、併用群 vs.MTX群1.13(95%CI:1.00~1.29、p=0.06)、トシリズマブ群 vs.MTX群1.14(同:1.01~1.29、p=0.356)、併用群 vs.トシリズマブ群p=0.59であった。

 全体で最も発現頻度の高い有害事象は鼻咽頭炎で、併用群38例(36%)、トシリズマブ群40例(39%)、MTX群37例(34%)であった。重篤な有害事象の発症に治療群間で差はなく(併用群17例[16%] vs.トシリズマブ群19例[18%]、MTX群13例[12%])、試験期間中に死亡例の報告はなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 金子 開知( かねこ かいち ) 氏

東邦大学医学部 内科学講座 膠原病学分野

J-CLEAR推薦コメンテーター