妊娠初期の中絶、ミソプロストール投与で術後合併症を有意に低下

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2012/05/24

 



妊娠初期の人工妊娠中絶について、プロスタグランジンアナログ製剤のミソプロストール(商品名:サイトテック、本邦では抗NSAID潰瘍剤としてのみ承認、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与禁忌)400μgの経膣投与により、吸引法単独と比べて合併症を低下することが明らかにされた。これまで、ミソプロストールを用いた人工妊娠中絶の合併症発生率については有用な情報がほとんどなかったが、世界保健機関(WHO)のOlav Meirik氏らが国際多施設共同無作為化試験を行い報告した。Lancet誌2012年5月12日号(オンライン版2012年3月8日号)掲載報告より。

施術3時間前にミソプロストール400μgまたはプラセボを投与




Meirik氏らは、2002年10月22日~2005年9月24日にかけて9ヵ国14施設で無作為化並行群間比較試験を行った。妊娠初期(first trimester)で中絶を望む健常な女性を対象に、吸引法による人工中絶手術の3時間前にミソプロストール200μg錠2錠またはプラセボ2錠のいずれかを経膣投与するよう無作為に割り付けた。

治療管理にあたるスタッフ以外は、治験参加者も医療スタッフも、割り付け情報を知らされなかった。追跡調査は最長で2週間とした。

主要評価項目は、吸引法による1つ以上の合併症(子宮頸部裂傷、子宮穿孔、不全流産、子宮再掻爬、骨盤炎症性疾患、その他の重篤な有害事象)とした。

即時性合併症の解析では、薬物投与と吸引法を受ける女性を含めたが、遅延性合併症の解析には、追跡可能な症例のみを含めた。
ミソプロストール400μg投与群で合併症発生率が有意に低下




被験者は、ミソプロストール投与群2,485例、プラセボ投与群2,487例だった。両群で56例が追跡ができなかった。

吸引法に伴い1つ以上の合併症がみられたのは、ミソプロストール群2,427例中50例(2%)、プラセボ群2,431例中74例(3%)だった[相対リスク(RR):0.68、95%信頼区間(CI):0.47~0.96]。

ミソプロストール群では、子宮頸部裂傷は認められず、子宮穿孔は3例に認められた。プラセボ群では頸部裂傷が2例、子宮穿孔は1例だった。

不全流産については、ミソプロストール群19例(<1%)、プラセボ群55例(2%)でみられた(RR:0.35、95%CI:0.21~0.58)。子宮再掻爬を必要としたのは、14例(<1%)対48例(2%)(同:0.29、0.16~0.53)だった。

骨盤炎症性疾患または他の重篤な有害事象の発生率について、群間差がない点が注目された[30(1%)対25(1%)、RR:1.20、95%CI:0.71~2.04)。

ミソプロストール投与後3時間の主要な有害事象は、腹痛[2,484例中1,355例(55%)、プラセボ群2,487例中545例(22%)]、性器出血[909例(37%)対167例(7%)]だった。

以上を踏まえ研究グループは、「ミソプロストール400μgの経膣子宮頸部投与は、妊娠初期の吸引法中絶による合併症の出現率を低下させられる」と結論した。