インスリン デグルデク、2型糖尿病の低血糖、夜間低血糖を改善

提供元:ケアネット

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公開日:2012/05/10

 

 2型糖尿病に対する基礎・追加インスリン療法の基礎インスリンとして、インスリン デグルデクはインスリン グラルギン(商品名:ランタス)と同等の血糖コントロールを示し、夜間低血糖の発現率は有意に低いことが、アメリカ・ベイラー医科大学のAlan J Garber氏らが行ったBEGIN Basal-Bolus Type 2試験で示された。2型糖尿病における膵β細胞の機能不全の進行は、従来の基礎インスリン療法では阻止されず、病態は不可避的に増悪するという。デグルデクは新規の超持効型基礎インスリン製剤で、皮下投与するとマルチヘキサマー(多数の六量体からなる集合体)を形成し、緩徐かつ持続的に循環血中に吸収されるため、超長時間のPK/PDプロフィールを示し、グラルギンに比べインスリン作用の変動が小さいことが示唆されている。Lancet誌2012年4月21日号掲載の報告。

基礎・追加インスリン療法におけるデグルデクの非劣性を検証

 BEGIN Basal-Bolus Type 2試験は、2型糖尿病に対するインスリン デグルデクとインスリン グラルギンの有効性と安全性の非劣性を検証する非盲検無作為化第III相試験。低血糖の発現状況をより正確に評価するために、目標空腹時血糖値の達成に向けて用量を調整する「目標達成に向けた治療(treat-to-target)」として実施された。

 2009年9月1日~2010年10月28日までに、12ヵ国123施設から、インスリン治療を3ヵ月以上施行後もHbA1c値が7.0~10.0%であった18歳以上の2型糖尿病患者が登録された。これらの患者が、デグルデクあるいはグラルギンを1日1回皮下注射する群に3対1の割合で無作為に割り付けられ、52週の治療が行われた。

 全例が1日3回の食事時にインスリン アスパルトによる追加インスリン療法を受けた。基礎インスリン療法は、朝食前の自己測定による血糖値3.9~<5.0mmol/L(=70.2~<90mg/dL)を目標に漸増された。

 主要評価項目は、ベースラインから治療52週までのHbA1c値の変化とし、デグルデクのグラルギンに対する非劣性を評価した。低血糖(血糖値<3.1mmol/L[=55.8mg/dL]あるいは援助を必要とする重篤な病態)の発現状況についても検討した。

より安全な治療選択肢となる可能性

 1,006例が登録され、デグルデク群に755例、グラルギン群には251例が割り付けられ、それぞれ744例(99%)、248例(99%)が解析の対象となった(平均年齢58.9歳、平均罹病期間:13.5年、平均HbA1c値:8.3%、平均空腹時血糖値:9.2mmol/L[=165.6mg/dL])。試験完遂率はデグルデク群が82%(618例)、グラルギン群は84%(211例)だった。

 治療1年後のHbA1c値の低下率はデグルデク群が1.1%、グラルギン群は1.2%(推定治療差:0.08%、95%信頼区間[CI]:-0.05~0.21)であり、血糖コントロールにおけるデグルデクのグラルギンに対する非劣性が確証された。

 低血糖の発現率はデグルデク群が11.1件/曝露人年と、グラルギン群の13.6件/曝露人年に比べ有意に低かった(推定率比:0.82、95%CI:0.69~0.99、p=0.0359)。同様に、夜間低血糖の発現率もそれぞれ1.4件/曝露人年、1.8件/曝露人年と有意差が認められた(推定率比:0.75、95%CI:0.58~0.99、p=0.0399)。

 重度低血糖は両群とも発現率が低すぎて比較できないが、同等と推察された(デグルデク群:0.06件/曝露人年、グラルギン群:0.05件/曝露人年)。他の有害事象の発現状況は両群で同等だった。

 著者は、「インスリン デグルデクによる基礎インスリン療法は、インスリン グラルギンに比べ夜間低血糖の発現率が低く、同等の血糖コントロールが達成されたことから、基礎・追加インスリン療法を要する長期化した2型糖尿病患者に対し、より安全な治療選択肢となる可能性がある」と結論している。

(菅野守:医学ライター)