55~69歳のPSAスクリーニング、前立腺がん死亡は減らすが全死因死亡には影響なし

提供元:ケアネット

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公開日:2012/03/28

 



PSA検査に基づくスクリーニングは前立腺がん死亡に効果があるのか、ないのか。相反する試験結果が示される中、オランダ・エラスムス大学医療センターのFritz H. Schroder氏ら欧州8ヵ国が参加する前立腺がんスクリーニング欧州無作為化試験(ERSPC)の共同研究グループが、2年間の追跡データを追加した11年間の前立腺がん死亡についての追跡調査結果を発表した。以前に同グループが示した知見を強化するものであったと報告し、「PSAスクリーニングは前立腺がん死亡を有意に減少する。しかし、全死因死亡に対する影響は認められなかった」と結論している。NEJM誌2012年3月15日号掲載報告より。

欧州8ヵ国から被験者、追跡11年時点の前立腺がん死亡等を解析




ERSPCは、1991年にオランダとベルギーの2ヵ国でスタートし、その後1994~1998年の間にスウェーデン、フィンランド、イタリア、スペイン、スイスの5ヵ国でも被験者登録が開始され、2003年まで募集が行われた。その間の2000年にはフランスでも被験者募集が始まり、合計8ヵ国が参加することとなった多施設共同無作為化試験である。

研究グループが今回行った解析は、2003年までに登録された8ヵ国の50~74歳18万2,160例で、そのうち、55~69歳の16万2,388例を事前特定のコアグループと定義した。

被験者は、無作為に、PSA検査に基づくスクリーニングを受ける群と、スクリーニングを受けない対照群に割り付けられ追跡された。主要評価項目は、前立腺がん死亡の割合であった。
PSA検査スクリーニング群、前立腺がん死亡の相対的減少は21%




結果、コアグループの追跡期間中央値11年時点での解析の結果、PSA検査スクリーニング群の前立腺がん死亡リスクについての相対的な減少は、21%であった(比率比:0.79、95%信頼区間:0.68~0.91、P=0.001)。ノンコンプライアンスについて補正後の同値は29%だった。

そしてPSA検査スクリーニング群の死亡率の絶対的減少は、1,000人・年につき0.10例だった。無作為化を受けた被験者での解析結果では、1,000人につき1.07例であった。

追跡10年時点と11年時点との前立腺がん死亡の比率比は、0.62(95%信頼区間:0.45~0.85、P=0.003)だった。

追跡11年の結果、スクリーニング受診を1,055人に勧め、そのうち37例でがんを見つけることができれば、前立腺がん死を1例防ぐことに結びつくとの試算が得られた。

なお、全死因死亡率の違いについては、スクリーニング群と非スクリーニング群に有意差は認められなかった。

(武藤まき:医療ライター)