医療コストが高い病院ほど、死亡率、再入院率、心イベント発生率は良好

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2012/03/27

 



カナダ・オンタリオ州の病院を対象とした調査の結果、医療コストが高い病院のほうが低い病院に比べ、急性心筋梗塞やうっ血性心不全、股関節部骨折などの30日死亡率が低いなど、治療アウトカムが良好であることが明らかにされた。カナダ・Institute for Clinical Evaluative SciencesのTherese A. Stukel氏らが、約39万人の入院患者について調べ、明らかにしたもので、JAMA誌2012年3月14日号で発表した。いわゆる国民皆保険下において、医療サービスの選択と集中が、よりよい患者アウトカムをもたらすのかを検討したもので、これまで明らかではなかった。

30日・1年死亡率、再入院率、心イベント発生率などを比較




研究グループは、カナダのオンタリオ州在住で、1998~2008年に、初回急性心筋梗塞(17万9,139人)、うっ血性心不全(9万2,377人)、股関節部骨折(9万46人)、大腸がん(2万6,195人)のいずれかで入院した18歳以上を、1年間追跡調査した。

病院での終末期に支払われた医療コストや、医師、救急部門のサービスにかかる医療費と、入院患者の30日・1年死亡率、再入院率、主な心イベント発生率などアウトカムとの関連を調べた。
うっ血性心不全30日死亡リスク、医療コスト最高三分位病院は最低三分位病院の0.8倍




その結果、医療コストが最高三分位群の病院では、最低三分位群に比べ、患者アウトカムが有意に良好であることが示された。

具体的には、年齢・性別補正後の30日死亡率は、医療コストが最高三分位群の病院と最低三分位群の病院ではそれぞれ、急性心筋梗塞で12.7%と12.8%、うっ血性心不全で10.2%と12.4%、股関節部骨折で7.7%と9.7%、大腸がんで3.3%と3.9%だった。完全補正後の最高三分位群の最低三分位群に対する相対30日死亡率は、急性心筋梗塞で0.93(95%信頼区間:0.89~0.98)、うっ血性心不全で0.81(同:0.76~0.86)、股関節部骨折で0.74(同:0.68~0.80)、大腸がんで0.78(同:0.66~0.91)だった。

1年死亡率や再入院率、主な心イベント発生率も、同様の傾向を示した。

医療コストが高い病院では、看護スタッフ比率が高く、入院中の専門医による診察回数が多く、急性心筋梗塞やうっ血性心不全患者は手術や内科的な専門治療を、大腸がん患者では術前の専門的治療をいずれも多く受けていた、などの特長が認められた。

(當麻あづさ:医療ジャーナリスト)