大幅な拡充進む、中国の保健医療サービスと健康保険

提供元:ケアネット

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公開日:2012/03/15

 



近年、中国では保健医療の利用増加やその内容の拡充が進み、保険の補償や入院患者の保険償還が著明に増大していることが、中国衛生部保健統計情報センターのQun Meng氏らの調査で示された。1978年の政府による経済自由化政策の導入をきっかけに、中国では経済成長と貧困削減が急速に進んだが、保健医療システムの改革は同じ歩調では進展しなかったという。2009年、中国政府は、2020年までに誰もが利用可能な医療制度の確立を目標に保健医療の改革政策を導入した。Lancet誌2011年3月3日号掲載の報告。

2003~2011年の保健医療サービス、健康保険の利用状況を調査




研究グループは、2003~2011年の中国における保健医療サービスおよび健康保険の利用状況を調査し、地域や収入の違いによる不平等が経時的に減少しているかを評価する横断的研究を行った。

解析には、中国の31の州や自治体からサンプリングした国民保健サービス調査(NHSS)の2003年、2008年、2011年のデータを使用した。2011年の調査では、2009年に公表された国家的な保健医療改革に関して、実施後の主要な指標の評価を行った。

データは、都市部と農村部、3つの地域(東部、中央部、西部)、世帯収入別に分けて集計し、地域間および地域内の公平性の変動について検討した。
今後の課題は、より効果的で質の高いケアの確立




面接を行った世帯数は2003年が5万7,023、2008年が5万6,456、2011年は1万8,822で、それぞれ98.3%、95.0%、95.5%から回答が得られた。面接した人数は、19万3,689人、17万7,501人、5万9,835人だった。

2003~2011年までに、保険補償は29.7%から95.7%へと増加した(p<0.0001)。保険から償還された入院費負担の平均値は2003年の14.4点から2011年には46.9点まで増加した(p<0.0001)。

2011年の病院分娩率は平均で95.8%に達した。入院率は2003年の3.6%から2011年には8.8%へと約2.5倍に増加した(p<0.0001)。2011年の高額医療費負担世帯率は12.9%であった。帝王切開率は2003年の19.2%から2011年には36.3%に増加した(p<0.0001)。

著者は、「近年、中国では保健医療の利用増加やその内容の拡充によって、保険の補償内容や入院患者の保険償還が著明に増大し、地域間差や地域内差の平等化が大きく進展した」と結論する一方で、「これらの進展には高額医療費負担の低下が伴ってはいないことに留意すべきだ。基本的な保健医療サービスの内容の拡充とともに、より強力なリスク防御や、より効果的で質の高いケアの確立が今後の課題である」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)