植物状態の患者の意識をベッドサイドで検出する新たな脳波検査

提供元:ケアネット

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公開日:2012/01/12

 



植物状態と診断された患者の一部には、健常者と同様の脳波検査(EEG)反応が認められ、意識の存在が示唆されることが、カナダ・Western Ontario大学のDamian Cruse氏らの検討で示された。植物状態と診断された患者は覚醒している時間帯があるが、この間も自己および周囲の環境を意識していないようにみえる。一方、機能的MRI(fMRI)ではこれらの患者の中には意識のある例がいることが示されているが、多くの場合、費用や近接性(accessibility)の問題によりfMRIの使用は難しいに状況にあるという。Lancet誌2011年12月17日号(オンライン版2011年11月10日号)掲載の報告。

EEGによる意識の有無の検出能を評価するコホート試験




研究グループは、植物状態の患者における意識の有無をベッドサイドで検出する方法として、EEGの有用性を評価するコホート試験を行った。

2010年7月~2011年6月に、ヨーロッパの2施設(イギリスAddenbrooke’s病院、ベルギーLiege大学病院)からComa Recovery Scale-Revised(CRS-R)で植物状態と判定された外傷性および非外傷性の脳損傷患者を、カナダWestern Ontario大学から健常対照者を登録した。

顕性行動がなくても意識の存在を示唆する臨床指標として、指示に従った場合に検出される運動イメージに関連する新たなEEGのタスクを開発した。患者は右手と爪先を動かすイメージを想い浮かべるよう指示を受けた。この指示に特異的な個々の患者のEEG反応を解析して、健常者と同様に一貫性がみられ統計学的に信頼性の高い運動イメージのマーカーを検索した。
3人で健常者と同様のEEG反応を検出




植物状態と診断された16人(外傷性脳損傷患者5人、非外傷性脳損傷患者11人)と健常対照12人について評価を行った。

16人中3人(19%、外傷性脳損傷患者2人、非外傷性脳損傷患者1人)において、2種類の指示に対し身体的にはまったく無反応だったものの、健常者と同様の適切なEEG反応が繰り返し検出された(分類精度:61~78%)。臨床的背景因子(脳損傷時年齢、脳損傷後経過期間、脳損傷の原因、行動スコア)と指示への応答能力には有意な関連はなかった。

著者は、「厳格な臨床評価が行われているにもかかわらず、植物状態と診断された患者の一部には、健常者と同様のEEG反応が認められ、意識の存在が示唆された」と結論し、「われわれが開発したEEGは安価で持ち運びが可能であり、入手も簡単で、得られたデータは十分な客観性を備えている。身体行動上は完全な植物状態にみえるが認知機能や意識が残存している可能性のある患者の再診断において、ベッドサイドで広く使用可能と考えられる」と指摘している。

(菅野守:医学ライター)