2011年初夏にドイツで大流行したO104:H4の疫学的プロファイル

提供元:ケアネット

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公開日:2011/11/23

 



ドイツでは、2011年5月、6月、7月に、志賀毒素産生性大腸菌O104:H4による胃腸炎および溶血性尿毒症症候群(HUS)が大流行した。その疫学的プロファイル調査の結果、同定された大腸菌株は通常のO104:H4ではみられないタイプであったこと、HUS発生が主に成人の女性で多かったことが明らかにされた。ドイツ・Robert Koch研究所Christina Frank氏らHUS研究チームによる。同大流行は、もやしの消費が媒介となった可能性が最も高いとされている。NEJM誌2011年11月10日号(オンライン版2011年6月22日号)掲載報告より。

2ヵ月間で3,816例報告、北ドイツに集中




研究チームは、ドイツにおいて報告された志賀毒素産生性大腸菌O104:H4による胃腸炎例およびHUS例と、ハンブルグ大学医療センターに紹介されてきた患者の臨床情報について解析を行った。

報告例について、発症時期が2011年5月1日~7月4日であり、血清型がO104または不明の志賀毒素産生性大腸菌に感染した患者で、HUSまたは胃腸炎の発症が報告された例を、大流行の対象と定義した。

結果、3,816例(うち死亡54例)が同定義に当てはまった。発生報告は、北ドイツに集中しており、5月21、22日がピークであった。

腸管凝集性大腸菌の遺伝子タイプを有しESBLを産生する志賀毒素産生性大腸菌




HUS患者は、そのうち845例(22%)だった。HUS患者の大半は成人(88%、年齢中央値42歳)で、女性が過度に多かった(68%)。菌の推定潜伏期間中央値は8日間で、下痢発症からHUS発現までは中央値5日間であった。

一方、ハンブルグ大学医療センターで前向きに追跡した59例の患者については、HUS例は12例(20%)だったが、性差、また初期症状・徴候について有意差は認められなかった。

また、発生株について調べた結果、血清型はO104:H4であったが、腸管凝集性大腸菌の遺伝子タイプを有し、通常O104:H4でみられる腸管出血性大腸菌の遺伝子タイプはみられず、基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)を産生する志賀毒素産生性大腸菌であることが確認された。