先天性心疾患の退院前スクリーニング検査に、パルスオキシメトリーが有用

提供元:ケアネット

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公開日:2011/09/08

 



パルスオキシメトリーは、先天性心疾患の退院前スクリーニング検査として安全に施行可能で、既存の検査に新たな価値を付与する可能性があることが、英国・バーミンガム大学のAndrew K Ewer氏らが実施したPulseOx試験で示された。現在、先天性心疾患のスクリーニングは出生前超音波検査や出生後臨床検査によって行われているが、生命を脅かすような重度の病態は検出されないことが多いという。Lancet誌2011年8月27日号(オンライン版2011年8月5日号)掲載の報告。

パルスオキシメトリーの検出感度、特異度を評価




PulseOx試験では、先天性心疾患のスクリーニング検査としてのパルスオキシメトリーの正確度(accuracy)の評価が行われた。

イギリスの6つの産科施設において、症状のみられない新生児(在胎期間>34週)に対し、退院前スクリーニング検査としてパルスオキシメトリーを施行した。事前に規定された酸素飽和度の閾値を満たさなかった新生児には心エコー検査を行い、それ以外の子どもには生後12ヵ月まで地域や国の登録システムを利用したフォローアップや、臨床的なフォローアップが実施された。

主要評価項目は、パルスオキシメトリーによる重篤な先天性心疾患(28日以内の死亡および侵襲的な介入を要する病態)あるいは重大な先天性心疾患(12ヵ月以内の死亡および侵襲的な介入を要する病態)の検出感度および特異度とした。

感度は重篤な病態が75%、重大な病態は49%、特異度は99%




2008年2月~2009年1月までに2万55人の新生児がパルスオキシメトリーによるスクリーニングを受けた。195人(0.8%)が先天性心疾患と診断され、そのうち192人(98%)に心エコー検査が施行された。53人が重大な先天性心疾患と診断され、そのうち24人が重篤な先天性心疾患であった。

重篤な先天性心疾患に関するパルスオキシメトリーの感度は75.00%(95%信頼区間:53.29~90.23)、重大な先天性心疾患では49.06%(同:35.06~63.16)であった。

出生前超音波検査で先天性心疾患が疑われた35例を除くと、パルスオキシメトリーの感度は重篤な先天性心疾患で58.33%(95%信頼区間:27.67~84.83)、重大な先天性心疾患では28.57%(同:14.64~46.30)まで低下した。

169人(0.8%)が偽陽性と判定され、特異度は99.16%(95%信頼区間:99.02~99.28)であった。6人は重大の定義よりも軽症の先天性心疾患で、40人は緊急の介入を要する別の疾患(呼吸器疾患、感染症など)であった。

著者は、「パルスオキシメトリーは安全に施行可能な検査であり、既存のスクリーニング検査に新たな価値を付与すると考えられる。出生前超音波検査で検出されなかった重篤な先天性心疾患を同定するとともに、他の疾患をも早期に検出するという利点をもたらす」と結論している。

(菅野守:医学ライター)