わが子が受けたポリオ生ワクチンから感染

提供元:ケアネット

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公開日:2011/06/29

 



入院中の便検査でエンテロウイルスが陽性だった弛緩性麻痺例の調査結果について、米国ミネソタ州保健局Aaron S. DeVries氏らによるレポートが、NEJM誌2011年6月16日号で発表された。患者は、長期にわたり後天性免疫グロブリン血症で免疫グロブリン静注療法を受けていた44歳の女性で、突然、四肢および呼吸麻痺を来し入院、その後死亡に至ったというもので、症例経過、ウイルス検査結果、家族を含めた周辺調査および二次感染の結果などから、推定感染時期が、女性の2人の子どものうちの1人がポリオ生ワクチンの接種を受けた時期と一致したという。

免疫グロブリン静注療法を受けていた44歳の女性に突然の麻痺




女性に症状が現れたのは2008年12月で、咳、化膿性鼻汁、軽度の呼吸困難、倦怠感、微熱が認められたが、患者自身、慢性副鼻腔炎の増悪ではないかと考え、事実4日後にその症状は消失した。しかし2日後に、左ふくらはぎに締め付けられるような感覚を覚え、その後5日間で下肢虚弱、入院となった。入院2日後に症状は上肢にも進行、さらに8~38日にかけて自発呼吸が困難となり気管挿管、61~73日には肝機能障害悪化、肺炎、呼吸不全を来し、その後も問題改善が認められず、92日目に家族がサポート中止を選択、その後死亡に至った。

患者は、1991年に後天性免疫グロブリン血症と診断され、その後、慢性リンパ様間質性肺炎、食道静脈瘤を伴う肝硬変、一連の入院前2ヵ月の間に悪化した慢性下痢症を伴う腸疾患を患っており、2006年には脾摘を受けていた。B細胞欠損、Bruton型チロシンキナーゼの発現は正常なども報告されている。

当局が調査に乗り出すことになったのは、初期には陰性だったが、入院74日目の便検査でエンテロウイルスが検出され報告されたことがきっかけだった。

ポリオウイルス同定、感染は11.9年より以前であると推定




ゲノム塩基配列決定法の結果、ポリオウイルスtype 2が同定されたが、以前に発表されていた経口ポリオウイルスワクチンのヌクレオチド配列とは12.3%の相違が認められ、2つの弱毒化した野生型ウイルスが認められた。

患者はおそらく11.9年(95%信頼区間:10.9~13.2)より以前に感染したと推定された。家族への聞き取り調査から、2人の子ども(13歳と6歳)のうちの1人がその当時、3回接種のポリオ生ワクチンを受けていることが明らかになった。

一方で、同室患者3人や2,038人に上る医療従事者へのスクリーニングが行われたが、二次感染は確認されなかった。

DeVries氏は、「後天性免疫グロブリン血症患者は、ポリオウイルスに慢性感染している可能性がある。そして、ポリオは免疫グロブリン静注療法を受けているにもかかわらず発症する可能性がある」と報告。米国では2000年にポリオ生ワクチンから不活化ワクチンに切り換えられた。本症例は、それ以後初の麻痺性ポリオの症例だったという。最後に、不活化ワクチン切り替え後も、ポリオ根絶のための監視と、特に慢性感染の可能性がある患者へのメンテナンスが必要だとまとめている。

(武藤まき:医療ライター)