加齢黄斑変性症に対するラニビズマブvs. bevacizumab:CATT

提供元:ケアネット

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公開日:2011/06/01

 



滲出型加齢黄斑変性症(AMD)に対する、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬のラニビズマブ(商品名:ルセンティス)とbevacizumabの有効性および安全性について検討した、多施設共同単盲検非劣性無作為化試験「CATT」の結果が発表された。ラニビズマブは臨床試験により滲出型AMDに対する有効性が認められる承認薬である。一方、bevacizumab(商品名:アバスチン、抗悪性腫瘍薬としてのみ承認)はAMDに対しては未承認で大規模臨床試験データもないが、ラニビズマブ同様VEGFをターゲットとすること、また投与コストがラニビズマブよりも安価であること(1回投与につきラニビズマブ約2,000ドル、bevacizumab約50ドル)から、ラニビズマブのFDA承認待ちの間に眼科医たちが適応外使用を始め、米国ではAMD治療薬として最も一般的に用いられるようになっているという。NEJM誌2011年5月19日号(オンライン版2011年4月28日号)掲載報告より。

ラニビズマブとbevacizumabは同等




CATT(Comparison of Age-Related Macular Degeneration Treatments Trials)は、ラニビズマブとbevacizumabの有効性および安全性を評価すること、また「必要に応じて投与」が「月1回投与」と比べて長期的視力を損なうかどうかの検討を目的に行われた。2008年2月から2009年12月の間に米国内44のクリニックから登録された患者1,208例(50歳以上、未治療の滲出型AMDを片眼以上有する、電子視力検査による視力が20/25~20/320)を対象とした。

被験者は無作為に、ラニビズマブかbevacizumabを硝子体内注射される群に、また月1回投与か月1回の評価で必要に応じて投与する群に割り付けられた。

主要アウトカムは、1年時点の視力変化の平均とした。非劣性の範囲は、視力表5文字とした。

結果、1年時点の視力変化の平均は、月1回投与bevacizumab群8.0文字増、同ラニビズマブ群8.5文字増で、両群は同等であることが認められた。

必要に応じて投与bevacizumab群(5.9文字増)、同ラニビズマブ群(6.8文字増)も同等であることが認められた。

また、ラニビズマブは投与法が異なっても(月1回投与か必要に応じて投与)、同等であることが認められたが、bevacizumab群については確証が得られなかった。

中心窩網膜厚減少の平均は、月1回投与ラニビズマブ群196μmで、他の群(必要に応じて投与ラニビズマブ群168μm、月1回投与bevacizumab群164μm、必要に応じて投与bevacizumab群152μm)より大きかった(分散分析によるP=0.03)。

入院リスク、bevacizumab群がラニビズマブ群の1.29倍だがさらなる検証が必要




死亡、心筋梗塞、脳卒中の発生率は、bevacizumab群とラニビズマブ群で同程度であった(P>0.20)。

一方で、重篤な全身有害事象(主に入院)リスクが、ラニビズマブ群よりもbevacizumab群でより高かった[発生率:bevacizumab群24.1%、ラニビズマブ群19.0%、リスク比:1.29(95%信頼区間:1.01~1.66)]。それらの多発したイベントは、先行研究のがんトライアルではみられなかった疾患カテゴリーにまで多岐にわたっていた。

以上を踏まえCATT研究グループは、「1年時点で、ラニビズマブとbevacizumabの視力に対する効果は、投与スケジュールが同じ場合、同等であった。ラニビズマブの視力に対する効果は、月1回の評価で必要に応じて投与する群と月1回投与群で同等だった」と結論。重篤な有害事象発生率の差異については、偶然である可能性、病歴や多変量モデルに基線の健康状態が含まれなかったことなどが考えられ、より多くの症例数による「さらなる検討が必要」と結論している。

(朝田哲明:医療ライター)