急性呼吸促迫症候群(ARDS)生存患者の長期5年アウトカム

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2011/04/20

 



急性呼吸促迫症候群(ARDS)生存患者の長期5年アウトカムの追跡調査結果が、カナダ・トロント大学のMargaret S. Herridge氏らにより報告された。これまでの長期追跡調査は2年が最長で、患者本人へのインタビューや評価に基づく総合的・長期データ(肺機能、身体機能、健康関連のQOL、医療・介護サービス利用、費用)は集約されていなかった。報告は1998~2001年の間に登録された「TORONTO ARDS」追跡調査からの結果で、被験者は重度の肺障害を有するものの合併症はほとんどない比較的若い患者であった。NEJM誌2011年4月7日号掲載より。

ARDS後の障害状況、医療・介護サービス利用増大の関連因子などを調査




5年追跡調査は、ARDS後の身体的、精神的、QOLの障害状況を分類、定量化、描出し、不良アウトカムや医療・介護サービス利用増大と関連する因子を調べることを主要な目的に行われた。

追跡された被験者はトロントの4つの大学病院のICUで登録された109例のARDS生存患者(ARDS発症時年齢中央値44歳)で、ICU退室後から3、6、12ヵ月時点および2、3、4、5年時点の外来受診時に、インタビューと検査を受け評価された。

インタビューおよび検査の内容は、肺機能検査、6分間歩行テスト、安静時および運動時の酸素飽和度測定、胸部画像診断、QOL評価(SF-36;スコア0~100、よりスコアが高いほど良好)であった。

若く合併症のない患者でも完全な回復は望めない




5年時点の評価の結果、6分間歩行テストの結果は436m(年齢・性でマッチさせた対照群から算出した予測値の76%)で、QOL評価(特に身体的評価)スコアは41(年齢・性でマッチさせた対照群からの平均標準スコアは50)であった。

これらスコアに関して、若い患者のほうが高齢の患者よりも回復の度合いが大きかったが、いずれも5年時点の身体機能レベルは標準予測値には達していなかった。

一方で5年の間に、その他身体的、精神的な一連の問題が患者または家族介護者に発生したり、持続していた。また合併症が多い患者ほど5年間の費用負担が大きかった。

Herridge氏は、「重度の肺障害後には、運動制限や身体的・精神的後遺症、身体的QOL低下、医療サービスの利用・費用の増大が重大な“遺産”として存在する」と結論し、若く合併症のない患者でも完全な回復は望めないことなどから、ICUで入手した虚弱状況を理解し、個別に家族にも目を向けた評価を行い、長期視点でのリハビリプログラムの調査を優先すべきとまとめている。

(武藤まき:医療ライター)