国を挙げての急性期脳卒中ケアサービス提供の改善施策は功を奏したか?:英国

提供元:ケアネット

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公開日:2011/03/25

 



英国では、ロンドン南部における1995~2000年の脳卒中患者に対する急性期ケア提供の社会人口統計学的格差の報告を受け、その後、急性期ケアサービス改善に特に重点を置いた施策が次々と打ち出された。それらが効果をもたらし、改善が認められているのか。キングズ・カレッジ・ロンドンの健康・社会的ケア調査部門のJuliet Addo氏らが、ロンドン南部におけるその後の変化動向について調査を行った。BMJ誌2011年3月5日号(オンライン版2011年2月24日号)掲載より。

改善施策の影響を1995年から2009年の患者受療内容から評価




調査は、ロンドン南部で1995年1月から2009年12月の間に、初発の虚血性脳卒中や脳内出血を有した患者3,800例を対象とし、急性期脳卒中ケア受診の経時的変化と、ケア提供と関連する因子について評価が行われた。

主要評価項目は、急性期ケア介入、入院状況、脳卒中ユニットケア、急性期の投薬状況、ケアを受けるアクセスの不均衡について。1995~1997年(907例)、1998~2000年(810例)、2001~2003年(757例)、2004~2006年(706例)、2007~2009年(620例)の5期間にグループ分けされ評価された。

3,800例のうち、脳卒中後に入院治療を受けたのは3,330例(87.6%)で、そのうち388例(11.7%)が入院中に脳卒中を発症していた。平均発症年齢は71.1(SD 14.1)歳だった。

全体的に改善はされたが、年齢、社会階層で有意な格差がみられ、至適には至っていない




脳卒中後に入院治療を受けられた人は1995~1997年に82.1%で、2007~2009年には94.7%に上昇したが、なお約5%(33/620例)の人、特に軽症の人が入院治療を受けることができていなかった。また入院できた人でも約21%(124/584例)が、集学的な脳卒中ユニットケアを受けることができていなかった。

脳卒中ユニットケアおよび脳画像診断の割合(調査全期間における)は、有意に増大していた。血栓溶解療法の割合(2005~2009年)も有意に増大していた(いずれもp<0.001)。

また、白人患者との比較で黒人患者の、脳卒中ユニットケアで治療を受けた割合(オッズ比:1.76、95%信頼区間:1.35~2.29、P<0.001)、作業療法および理学療法(同:1.90、1.21~2.97、P=0.01)が、年齢や脳卒中の重症度とは独立して有意に増大していた。

運動機能および嚥下機能の障害を有した人が、脳卒中ユニットケアを受けられる割合も増大していた[オッズ比はそれぞれ、1.52(P=0.001)、1.32(P<0.001)]。

病院在院日数は、1995年から2009年で有意に減少していた(P<0.001)。

脳画像診断は、75歳以上(P=0.004)、低社会経済的状態にある人(P<0.001)で低率だった。

機能障害を有した人がリハビリテーションを受けられる割合は、有意に増大していた(P<0.001)。75歳以上の人で、作業療法や理学療法を受けられる傾向が、より認められた(P=0.002)。

研究グループは、「1995年から2009年で、効果的な急性期の脳卒中ケアを受けることに関しては改善が認められた。しかし、その提供の不均一さは有意で、エビデンスに基づくケアは至適に行われてはいない」と結論している。