在宅後期高齢者への積極的な介護予防介入、効果は疑問

提供元:ケアネット

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公開日:2010/05/14

 



在宅ケアを受けていない高齢者に、積極的な介護予防を行うことが、健康長寿をもたらし、医療コスト削減に結びつくのか。カナダ・マクマスター大学看護学部のJenny Ploeg氏らが、機能低下リスクを有する75歳以上高齢者を対象に行った1年間にわたる無作為化試験の結果、通常ケア群とで有意差は認められなかったという。BMJ誌2010年4月24日号(オンライン版2010年4月16日号)掲載より。

75歳以上対象の無作為化試験で、介入効果を通常ケア群と比較




試験は、カナダ・オンタリオ州ハミルトンの、5つのプライマリ・ケア・ネットワークに所属する35人の家庭医の協力のもと行われた。各家庭医の、75歳以上で在宅ケアを受けていない患者が被験者として登録。試験適格患者は3,166例、そのうち2,662例(84%)から、郵送アンケートで行われたADL機能低下リスク判定調査に対する回答が得られた。

リスク判定基準を満たした患者は1,724例で、769例(45%)から試験参加の同意が得られ、719例が無作為化された。

被験者は、経験豊かな在宅看護師により2004~2006年の間に、12ヵ月の介入を受けた。介入は、最初に居住者在宅介護評価票を用いて総合的な評価が行われ、患者およびその家族と家庭医とが共同してケアプランを策定し、健康増進、コミュニティケア、その他サポートサービスへの照会が行われた。

QALYs、医療・介護サービス利用、ADL・健康状態の変化、死亡率ともに有意差なし




通常ケアを受けた対照群と、QALYs(質で調整した生存年)、医療・介護サービスの利用量およびコスト、ADL、自己評価による健康状態、死亡率について比較検討された。

結果、QALYsについて、対照群との間に統計学的に有意な平均差は認められなかった(0.017、95%信頼区間:-0.022~0.056、P=0.388)。

処方薬とサービス利用の全コストについても、両群間で統計学的に有意な平均差は認められなかった[-165カナダドル(107ポンド、118ユーロ、162ドル)、95%信頼区間:-16545~16214カナダドル、P=0.984)。

12ヵ月のADLおよび自己評価による健康状態の変化も、有意差が示されなかった。

死亡は各群ともに10例だった。

Ploeg氏は、「本研究の結果は、ハイリスクな高齢者への予防介護の必要性を支持するものではなかった」と結論している。