結腸・直腸がんをプライマリ・ケアで早期発見する方法とは?

提供元:ケアネット

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公開日:2010/04/23

 

 プライマリ・ケアにおける結腸・直腸がんの診断では、症状の組み合わせと便潜血検査(特に免疫化学に基づく検査法)によるアプローチが最も有望であることが、オランダVU大学医療センターのPetra Jellema氏らによるメタ解析で示された。結腸・直腸がんはヨーロッパで2番目に多いがんであり、5年生存率は早期がんの90%以上に対し進行がんでは10%以下であるため早期診断が重要とされる。腹部症状のある患者は通常プライマリ・ケア医を受診するので、早期診断におけるプライマリ・ケア医の役割は大きい。しかし、腹部症状自体は頻度が高い一方、1名のプライマリ・ケア医が結腸・直腸がんに遭遇する機会は年にわずか1例にすぎないことから、診断精度の高い簡便な検査法の開発が切望されている。BMJ誌2010年4月10日号(オンライン版2010年4月1日号)掲載の報告。

結腸・直腸がんを同定する診断法の感度、特異度のメタ解析
 研究グループは、プライマリ・ケア医にとって、非急性の下腹部症状で受診した患者の中から結腸・直腸がんのリスクが高い症例を同定するのに有用な診断法のエビデンスについて系統的なレビューを行い、メタ解析を実施した。

 PubMedおよびEmbaseを検索し、引用文献の調査も行った。以下の条件を満たす試験を抽出した。1)診断研究、2)非急性の下腹部症状で受診した成人患者が対象、3)徴候、症状、血液検査、糞便検査を含む試験。

 2名の研究者がquality assessment of diagnostic accuracy studies(QUADAS)を用いて別個に論文の質を判定し、データを抽出した。診断法について2×2分割表を作成し、感度と特異度の推定値をプールした。考慮すべき臨床的あるいは統計学的な不均質性が存在する場合はプールに含めなかった。

プライマリ・ケアにおけるエビデンスの確立が急務
 47試験が解析の対象となった。感度は、50歳以上(0.81~0.96、中央値0.91)、2週間以内に専門医に紹介するガイドライン(TWR guideline)に記載された症状の組み合わせ(0.80~0.94、同0.92)、免疫化学的便検査(0.70~1.0、同0.95)で高値を示した。これらのうち特異度が良好だったのは便検査(0.71~0.93、同0.84)のみであった。

 特異度は、家族歴(0.75~0.98、中央値0.91)、体重減少(0.72~0.96、同0.89)、鉄欠乏性貧血(0.83~0.95、同0.92)で良好であったが、いずれも感度が不良であった。

 これら6つの要素に関する検査の有用性は、プライマリ・ケアでは十分に検討されていない。

 著者は、「結腸・直腸がんの診断能は、症状の組み合わせと免疫化学的便検査の結果で判断するアプローチが優れることが示されたが、プライマリ・ケアにおけるエビデンスはない」と結論したうえで、「プライマリ・ケアでの結腸・直腸がんの診断におけるこれらの検査の役割について評価する質の高い試験の実施が急務である」と指摘する。

(医学ライター 菅野 守)