ICU収容の人工呼吸器装着患者、毎日の胸部X線検査は本当に必要か?

提供元:ケアネット

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公開日:2009/11/26

 



集中治療室(ICU)に収容され人工呼吸器を装着されている患者に対する胸部X線検査は、病態により必要に応じて施行しても治療の質や安全性を損なうことはないため、従来のように毎日ルーチンに行う必要はないことが、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のGilles Hejblum氏らが実施したクラスター無作為化試験で判明した。米国放射線医学会(ACR)は、人工呼吸器装着患者には毎日のルーチン検査として胸部X線を施行し、必要に応じてさらなる検査を行うよう勧告しているが、患者の病態に応じて施行すれば十分との意見もあるという。ルーチン検査には、危機的病態における誤診を発見して対処できる、検査の可否を判断する必要がないという利点があるが、不要な放射線被曝やコストの面では必要に応じた検査のほうが有利と言える。Lancet誌2009年11月14日号(オンライン版2009年11月5日号)掲載の報告。

21のICUを2つのクラスターに割り付け、検査法をクロスオーバー




研究グループは、ICU収容の人工呼吸器装着患者に対してルーチンの胸部X線検査を毎日行う群(ルーチン検査群)あるいは患者の病態により必要に応じて胸部X線検査を施行する群(オンデマンド検査群)の有効性および安全性を評価するクラスター無作為化クロスオーバー試験を実施した。

フランスの18病院に付設された21のICUをルーチン検査群またはオンデマンド検査群に無作為に割り付けて治療を行い(第1期)、その後2つの検査法を入れ替えて治療を実施した(第2期)。各治療期間は個々のICUに20例の患者が登録されるまでとし、患者のモニタリングは退院あるいは人工呼吸器装着期間が30日に達するまで実施した。

ICUには967例が登録され、そのうち人工呼吸器装着期間が2日に満たない118例は除外された。主要評価項目は、人工呼吸器装着例数×装着日数(人・日)当たりの胸部X線検査の平均施行数とした。

オンデマンド検査で検査数が32%低減、死亡率は同等




第1期には、11のICUがルーチン検査群(222例)に、10のICUがオンデマンド検査群(201例)に無作為に割り付けられた。第2期には、第1期のルーチン検査群でオンデマンド検査(224例)が、オンデマンド検査群でルーチン検査(202例)が実施された。

全体として、424例に4,607件のルーチンの胸部X線検査が施行され、平均検査施行数は1.09件/人・日であったのに対し、オンデマンドの胸部X線検査は425例に対して3,148件が施行され、平均検査施行数は0.75件/人・日であった(p<0.0001)。オンデマンド検査では、ルーチン検査に比べ胸部X線検査数が32%低減した。装着日数、入院期間、死亡率は両検査で同等であった。

著者は、「これらの結果は、ICU収容の人工呼吸器装着患者に対する胸部X線検査は毎日ルーチンに行うのではなく、病態により必要に応じて施行する戦略を強く支持する」と結論し、「膨大な人工呼吸器装着患者の総数からみて、オンデマンド検査は日常診療に実質的なベネフィットをもたらす可能性がある」としている。

(菅野守:医学ライター)