腎移植後のEPO製剤投与、ヘモグロビン濃度125g/L超で死亡率が上昇

提供元:ケアネット

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公開日:2009/11/13

 



腎移植後に貧血を呈する患者は40%近くに達し、重症貧血患者の約20%はエリスロポエチン(EPO)製剤の投与を受けている。しかし最近のデータは、EPO製剤投与が一定の条件下で死亡率を増加させる可能性があることを示唆していた。オーストリア・ウィーン医科大学のGeorg Heinze氏らの研究グループは、EPO製剤の安全かつ死亡率上昇を招かないヘモグロビン濃度の最適範囲を調べるため、後向きコホート研究を実施した。BMJ誌2009年10月31日号(オンライン版2009年10月23日号)より。

1,800例を対象に、ヘモグロビン濃度の最適範囲を後ろ向きコホートにて調査




対象は、オーストリアの移植センターで1992年1月1日から2004年12月31日の間に腎移植を受け、少なくとも3ヵ月間生存したレシピエントで、Austrian Dialysis and Transplant Registryに登録された1,794例。主要評価項目はEPO製剤投与後の生存期間とヘモグロビン濃度とした。

調査の結果、過去15年でEPO製剤使用は25%増大していた。

140g/L超ではより有意に高まる




EPO製剤を投与した患者の10年生存率は57%、非投与患者は78%で、EPO製剤投与の患者の死亡割合がより高いことが示された(P<0.001)。死亡発生率は、投与患者は5.4例/100人・年、一方、非投与患者は2.6例/100人・年だった(P<0.001)。

併存症、薬物療法、検査値、ヘモグロビン濃度(125g/L超)にて交絡補正後、EPO製剤投与患者の死亡率は上昇との関連が示された。ヘモグロビン濃度140g/Lでの死亡率のハザード比は、EPO製剤投与患者2.8(95%信頼区間:1.0~7.9)、非投与患者は0.7(0.4~1.5)だった(ハザード比はいずれも125g/Lを1とした場合の値)。

ヘモグロビン濃度が147g/L以上になると、EPO製剤投与患者は非投与患者より有意に高い死亡率を示した(ハザード比3.0、1.0~9.4)。

Heinze氏は、「腎移植患者へのヘモグロビン濃度125g/L状態下でのEPO製剤投与は、死亡率を高めた。140g/L超の場合は有意に高まった」と結論している。