放射線療法を受けたがん患者、精神疾患があると生存率が有意に低下

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/10/02

 

 がん患者に対する放射線療法の実施方法が患者の精神疾患(PD)の有無に影響されることはないが、PDがある患者の全生存率は、PDがない患者に比べて有意に低いとする研究結果が、「Clinical and Translational Radiation Oncology」5月号に掲載された。

 ユトレヒト大学医療センター(オランダ)のMax Peters氏らは、matched-pair解析により、PDのあるがん患者とない患者での放射線療法のレジメンと全生存率の違いについて検討した。対象者は、電子患者データベース(EPD)より2015年から2019年の間に一カ所の三次医療機関で放射線療法を受けた患者の中から選出した、PDのあるがん患者88人(PD群)と、がんの種類とステージ、WHO-PS(World Health Organization Performance Status)またはKPS(Karnofsky Performance Status)で評価したパフォーマンスステータス、年齢、性別、放射線療法の前後に受けたがん治療を一致させたPDのない患者88人(対照群)。PD群には、統合失調症スペクトラム障害患者が44人、双極性障害患者が34人、境界性パーソナリティ障害患者が10人含まれていた。対象者の平均年齢(標準偏差)はPD群が61.0(10.6)歳、対照群が63.6(11.3)歳で、がん種は乳がん(27人、30.7%)、肺がん(16人、18.2%)、消化器がん(14人、15.9%)、頭頸部がん(10人、11.4%)、婦人科がん(6人、6.8%)、泌尿器がん(5人、5.7%)、脳腫瘍(4人、4.5%)、その他のがん(6人、6.8%)であった。

 主要評価項目を、分割照射の回数と、1回2Gyの照射として換算した場合の生物学的等価線量(EQD2)とし、Wilcoxonの符号順位検定により両群間での放射線療法のレジメンの類似性を評価した。副次評価項目はKaplan-Meier曲線により推定した全生存率とし、Cox比例ハザードモデルを用いて死亡のハザード比(HR)を計算した。

 放射線療法を終えてからの追跡期間中央値は、PD群で32.3〔四分位範囲(IQR)9.2〜53.8〕カ月、対照群で41.3(同12.7〜65.1)カ月であった。放射線分割の回数中央値はPD群で16(同3〜23)回、対照群で16(同3〜25)回であり、両群で有意な差は認められなかった(P=0.47)。EQD2についても両群間で有意差は認められず、晩期毒性に対するEQD2はともに48(同35〜63)Gy(P=0.18)、腫瘍のコントロール/急性毒性に対するEQD2はともに45(同24〜60)Gy(P=0.77)であった。

 全生存率については、PD群、対照群の順に、1年生存率が68%〔95%信頼区間(CI)59〜79%〕、77%(同69〜87%)、3年生存率が47%(同37〜58%)、61%(同52〜72%)、5年生存率が37%(27〜50%)、56%(46〜67%)であり、有意な差があった(P=0.03)。Coxモデルによる単変量解析での対照群と比べたPD群の死亡のHRは1.57(95%CI 1.05〜2.35、P=0.03)であった。死因については、大部分が原疾患の進行によるもので、両群間に明確な差は認められなかった。

 著者らは、「PDを有するがん患者は全生存率が有意に低かった。このような脆弱性を抱える患者に対して放射線治療を行う場合には、特に注意が必要であり、また、がんの治療を行っている間に改善できる要因がないかを探るため、さらなる研究が必要であろう」と述べている。

[2023年4月21日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら