機械学習モデルで心筋梗塞の診断能が向上

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/09/22

 

 心筋トロポニン値と臨床的特徴を組み込んだ機械学習モデルによって、心筋梗塞の診断能が改善されたという研究結果が、「Nature Medicine」に5月11日掲載された論文で明らかにされた。

 心筋梗塞の診断の目安として心筋トロポニンの閾値を設定するようにガイドラインで推奨しているが、心筋トロポニン値は、年齢、性別、併存疾患、発症時からの経過時間などの影響を受けやすい。そこで、英エジンバラ大学のDimitrios Doudesis氏らは、心筋梗塞の診断能の改善を目的として、初診時または定期的な検査時の心筋トロポニンI値と臨床的特徴を統合し、心筋梗塞発症の確率を予測するCoDE-ACSスコア(Collaboration for the Diagnosis and Evaluation of Acute Coronary Syndrome score、0~100点)を算出する機械学習モデルとしてCoDE-ACSモデルを開発した。

 CoDE-ACSモデルの訓練は、心筋梗塞の疑いで英スコットランドの2~3次病院を受診したコホート1万38例(年齢中央値70歳、女性48%)のデータを用いて実施した。このモデルの外部検証は、別のコホート研究の参加者で心筋梗塞の疑いがあるコホート1万286例(年齢中央値60歳、女性35%)のデータを用いて実施した。CoDE-ACSモデルによる心筋梗塞の診断能を、心筋トロポニンI閾値による診断能と比較した。

 外部検証の結果、CoDE-ACSモデルによる心筋梗塞の診断能は高く、初診時の曲線下面積は0.953〔95%信頼区間(CI)0.947~0.958〕、定期検査時の曲線下面積は0.966(同0.961~0.970)であり、年齢、性別、虚血性心疾患の有無などのサブグループ間で診断能に大きな差はなく、どのサブグループでも良好な診断能を示した。

 初診時において、心筋梗塞発症の確率が低いと判定された患者の割合は、CoDE-ACSモデル(CoDE-ACSスコア3点未満)の方が心筋トロポニンI閾値(5ng/L未満)と比べて高く(61%対27%)、陰性的中率はいずれも99.6%と高かった。同様に、初診時において心筋梗塞発症の確率が高いと判定された患者の割合は、CoDE-ACSモデル(同スコア61点以上)の方が心筋トロポニンI閾値(女性16ng/L、男性34ng/L)と比べて低く(10%対16%)、陽性的中率はCoDE-ACSモデルの方が高かった(75.5%対49.4%)。

 CoDE-ACSモデルで初診時に心筋梗塞発症の確率が低い(CoDE-ACSスコア3点未満)と判定された患者における心臓死の発生率は、中程度(同スコア3~60点)または高い(同スコア61点以上)と判定された患者と比べて有意に低かった〔30日後(0.1%対0.5%対1.8%)および1年後(0.3%対2.8%対4.2%)のいずれもP<0.001〕。

 著者らは、「CoDE-ACSモデルが医療現場で採用されれば、救急科での滞在時間の短縮、不必要な入院の防止、および心筋梗塞の早期治療の改善につながり、患者と医療提供者の双方にとって有益であると考えられる」と述べている。

 なお、数名の著者が、あるバイオ医薬品企業との利益相反(COI)に関する情報を明らかにしている。

[2023年6月1日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら